マスクドアセッサー

碧 春海

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四章

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 翌日、愛知県警の特別捜査班では3人の刑事による捜査会議が開かれていた。
「まず、事件現場のゲソ痕は採取されていませんでした。それと、凶器となった鉄パイプを科捜研で再検定してもらったところ、血痕の付着していた付近から被告人以外の指紋が僅かに検出されたことから、血痕部以外を1度拭き取ってから改めて付け直したことになります」
 資料を手に川瀬刑事が語り始めた。
「身代わりでの犯行の線が高いということか」
 証拠が朝比奈の推理を証明している。大神は頭を掻いた。
「班長、一応白井良二の携帯番号の通信記録を調べてみましたが、確かに午後9時37分に119番通報と、3分後の午後9時40分に110番への通話が記録されていました。しかし、午後8時51分に吉田鋼鉄弁護士の携帯からの着信があるのです。まぁ、帝王グループの顧問弁護士ですので、何かの連絡があっても不思議ではないでしょうが、事件の起こる約30分前に連絡を取っているのは、どんな話をしたのでしょうね」
 高橋刑事が首を傾げた。
「それと関係があるかもしれませんが、再度、死亡推定時刻を確認したところ、午後7時から午後9時に間違いないとのことでした。もし、最も遅い午後9時だったとしても、通報時刻までの約30分間何をしていたのでしょう。それともう1点、朝比奈さんが気にしていた被害者の両手には異常はなく、被告人が一方的に殴られたというのも無理がありますね。全てウソだった可能性が高いですね」
 川瀬刑事が司法診断書のコピーを2人に配った。
「嘘といえば、嘆願書について調べましたが、署名した殆どの人間は被告人と同じ名西大学商学部の4年生でしたが、ほとんど被告人のことは知らず友達の依頼で書いたとのこと。しかし、誰が依頼したのかは限定できませんでした」
 高橋刑事が積み上げられた嘆願書のコピーを指差した。
「後は、事件当時の白井良二の行動ですが、栄町にある居酒屋の『五郎丸』の栄店で午後6時20分頃に仲間4人と入店し、白井を除く3人は閉店時間まで飲んでいたそうですが、白井は9時前に店を出ているようです。着信記録から考えれば、吉田弁護士に呼び出されたのだと思われます」
 川瀬刑事がノートを取り出して答えた。
「良くそこまで細かく分かったな」
 大神が感心して尋ねた。
「店長に聞いたのですが、4人とも良く来るメンバーでいつも他の客に迷惑が掛かる程、大声で盛り上がるそうです。ただ、いつも白井がおごっている飲み会のようで、彼が抜けた途端に周りを気にして、静かに白井へのグチをつまみにして飲んでいたそうです」
 ノートをめくって続けた。
「大会社のお坊ちゃんを取り巻く連中という訳だ。2人の捜査報告を整理すると、午後7時から9時の間に、誰かが被害者の石川由幸を鉄パイプで殴り死亡させた。恐らく、その人物は事後処理の為に、吉田弁護士に連絡を取った。それで慌てた吉田弁護士は、すぐさま白井良二に連絡を取り事件現場に急ぎ、吉田弁護士の指示通り身代わりを演じたということだな」
 憎たらしい朝比奈の顔が浮かんだ。
「吉田弁護士が必ず正当防衛を勝ち取ると言いくるめたとは思いますが、一応殺人ですから余程のメリットがなければ、こんな短時間に引き受けるとは思えません」
 川瀬刑事が不思議に思って大神に尋ねた。
「吉田鋼鉄弁護士には、正当防衛にする自信があったんだろうな。検察庁の鬼検事と呼ばれ、弁護士になった今でも法曹界には相当顔が効く。実際、裁判長は同期の佐藤正、検事は教え子とも言える沢田優子。余程のことがなければ、正当防衛で決心していただろう」
「余程のこと。今回は裁判員に朝比奈さんが選ばれてしまった。吉田弁護士にとってはこの上もない災難だった訳ですね」
 川瀬の頭に朝比奈の顔が大きく映し出された。
「そう、吉田弁護士に誤算が生じた。このままでは、正当防衛ではなく無罪として釈放され、新たに犯人探しが始まる。それは、当然白井良二に近い人間と言うことになる。そして、その手掛かりは、亡くなった石川由幸さんにある。朝比奈が調べた防犯カメラには、亡くなる直前の石川さんはベージュ色のショルダーバックをしていたのに、現場にはそのカバンは残されていなかった。殺害の動機はそのバックにあったと考えるのが自然です。その行方を追う事と、石川由幸について徹底的に調べ上げる事。白井良二は勿論だけど、帝王グループとの関係も調べる必要があるけど、総帥白井健吾は政財界に幅広く影響を及ぼしている人物だから、絶対に知られないように慎重に捜査する必要があるな」
 警察関係者に知られずに本当にできるのだろうか自身はなかったが、朝比奈の『諦めるんだ』と言い放つ朝比奈の憎たらしい表情が浮かんだが、それを振り払うように顔を左右に振った。
「そうですね。息子の事件も県警の上層部にも圧力を掛けて揉み消した経緯を考えれば、何をしでかしてくるか分かりませんからね」
 高橋刑事も捜査の難しさを感じていた。
「悪霊に取り憑かれ、乗りかかった船。しっぽを巻いて逃げ出す訳にはいかないだろう」
 二人の刑事は間違いなく朝比奈のことを指していると感じていた頃、背が高く黒縁眼鏡を掛け、ビシッと背広を着こなした男性が、芸能プロダクション『オメガシールド』の応接室で、人事課の飯島部長とテーブルを挟んで腰を下ろしていた。
「東名テレビの早瀬営業部長からの紹介ということで来ていただいたのですが、履歴書を拝見すると大学卒業後の職歴が全く記入されていませんね。どこにもお勤めになっていらっしゃらなかったのでしょうか」
 厄介者を押し付けられたものだという感情が表情にも現れていた。
「大学を卒業後は、国立新薬研究所の糸川教授の助手をずっとしていましたが、それを職業として書いていいものかと悩みまして、一応記入は控えさせていただきました。子供の頃から国家資格などの免許や資格に興味があり、高校生になった頃から色々チャレンジしてきました。先生の助手は、意外と自由な時間が取れて僕にも都合が良かったのです。ですから、順調に免許や資格が習得できました」
 その言葉に反応して飯島は履歴書の資格欄に目を移した。
「普通自動車第一種運転免許、第二種運転免許、大型自動二輪、普通自動二輪、大型自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、運転免許だけでもこれだけ。国家公務員の一般職、司法書士、行政書士、文書情報管理士、救急救命士、教員免許、秘書検定、漢字検定、ビジネス実務マナー検定、マーケティング検定、電子ファイリング検定、通販エキスパート検定、ビジネス数学検定、漢字検定、公文書管理検定、社会人常識マナー検定、接客サービス検定などですか」
 枠外にも書き込まれた文字を口にした。
「書く欄が足りませんでした。他にも調理師とか調香師などがありますが、僕自身把握していない資格もありますので、必要でしたら調べます」
 眼鏡の中央部を右手の人差し指で押さえた。
「そっ、そうですか。これだけの資格があれば他に務めるところがあると思うのですが」
 履歴書をテーブルに置いて男性を見た。
「そこには書いていませんが、人間観察エキスパート検定に挑戦していまして、昔から芸能界にも興味がありましたし、サンプルを得るにはもってこいの職業だと思いまして応募させていただきました」
「サッ、サンプルですか。まぁ、早瀬部長の紹介でもありますので、取り敢えず3か月の仮採用とさせていただき、その後本採用を検討することでよろしいでしょうか」
 どんな仕事をするのか少し興味が湧いて来た。
「あっ、いえ、すぐに働きたいですから、採用していただけるのでしたら、最初はアルバイトでいいですよ。仮採用と言っても、社員になるには色々手続きが必要ですから。できれば、今日から働けないでしょうか」
「今日からですか・・・・・分かりました。なんとか手配しましょう」
 飯島は席を立つと内線電話の受話器を取り上げ、アルバイト社員の話をして会社内を案内するように女性職員に指示した。
「ありがとうございました。よろしくお願いします」
 男性は頭を下げると、黒ハイネックトップスとベージュワイドパンツ姿の背の高い女性が現れ、社内の各部署を案内がてら回ることとなり、部署の責任者に挨拶することになった。そして、最後に小会議室へと戻って来た。
「紹介が遅れましたが、事務兼マネージャの千賀百合子です。部長の指示により、今日から私のサポートをしていただきますのでよろしくお願いします」
 千賀はケースから名刺を取り出して男性の前に差し出した。
「色々ありがとうございます。千賀さんは僕よりもお若いようですが、この会社は長いんですか」
 名刺を見ながら尋ねた。
「今年で4年目になります」
「4年目でチーフマネージャーを任されるなんて、余程仕事ができるのですね」
 名刺をなぞった。
「その名刺は社外用で、殆どのマネージャーにはチーフという肩書きがついています」
「つまり、見栄を張っているということですね」
「この仕事をしていれば分かると思うけど、相手に舐められないように少しでも自分を大きく見せることが重要なのですよ」
「どこの世界も大変なんですね」
 小さく頷いた。
「それでは早速仕事について説明させて頂きます。マネージャーの仕事ですが、大きく分けると2つあります。1つは、タレントのスケジュールを管理し現場に同行するもの。もう1つは、タレントの仕事を取ってきたり、ギャラの交渉をしたりという営業的な仕事です。これには、より多くの人に知ってもらう為の戦略を考え、可能性のある分野を見極める必要があります」
 千賀の言葉を男は小さなノートに次々と書き込んだ。
「もう少し詳しくお願いします」
「まずスケジュール管理ですが、売れているタレントは1日にいくつもの仕事が入ります。タレントが多忙であればある程、高い調整力が求められます。次の現場への移動時間、移動方法などを考えて入り時間や現場に滞在できるリミット時間を調整します。勿論、現場までの送迎をマネージャー自身が行うこともありますが、直接現場での集合であっても、ちゃんと起きているのか、間に合うように家を出ているかなど、メールや携帯電話で連絡を取り、スケジュールどおりに動けているか確認もします」
「そこまで管理するんですか、大変な仕事ですね」
「それだけでなく、決められた仕事を間違いなく速やかにこなせるように、担当タレントの体調管理にも気を遣い、薬などは勿論、冬であればカイロをカバンを忍ばせて、必要な時にはサッと渡せる心遣いをするマネージャーもいます。それに、1日のスケジュール管理だけでなく、一ヶ月、一年先も考え、長期的なスケジュールを組み立てるのもマネージャーの仕事。タレントのその後を左右する重大な責任を担っている訳ですから」
「家族のような絆で結ばれているものなのですね」
 感心しながらノートに書き込んだ。
「ある意味親子姉妹以上かもしれません。タレントは、世の中のイメージがとても大切で、そのタレントが持っているイメージやブランドを崩さないように気を付けます。例えば、イメージに合わないテレビ番組には出演しないという選択をしたり、出演シーンを指定したりする為、タレント本人と意見が合わず喧嘩沙汰になることも有ります。まるで、親子ゲンカのようです」
「それは互いを思いやるからなんですよね」
「そう思ってくれればいいのですが、なかなか難しいです。最近は、担当タレントが発信するSNSや動画などにも目を光らせておく必要もありますし、未成年のタレントを担当する場合には、決してあってはならないことですが、飲酒や喫煙といった法に触れることには特に厳しく指導しているつもりです。イメージが崩れることで、全く仕事のオファーがなくなることも珍しくはないですからね」
 自分が担当していたタレントが事件を起こし、そのまま芸能界から姿を消していったという後悔の念を感じていた。
「マネージャーはどういう点で評価されるのでしょう」
「所属するタレントが継続的に仕事をして稼ぎ、事務所自体が利益を得なくてはマネージャー自身の給料を生み出すことはできません。営業先は、テレビ局、ラジオ局、新聞社、出版社、広告代理店、イベント会社など様々ですので、プロフィール資料や、歌手であればCDを各方面の関係者に渡したり、新人であれば受かりそうなオーディションに積極的に参加させたり、何とか使ってもらえないか必死にお願いすることになります。また、タレントの人気が出て『出てください』とお願いされる側になれば、タレントに合った仕事をチョイスし、効率よく仕事をさせる能力の高い人間が求められるのです」
「お話を伺って、本当に仕事の大変さがよく分かってきました。そんなマネージャーの仕事を長年続けるとストレスもたまりますよね」
「仕事に就いて最初の頃は、タレントのせいで遅刻しても『自分が時間を間違えてしまって』などと自分が謝ることも多く本当に辞めたいと何度も思いました。でも最近は慣れたこともありますが、冷静な目で見ることができるようになりました。私たちマネージャーは社員としてまだ会社には守られていますが、タレントは個の「人」ですから、1つ間違えればそれでおしまいの世界に生きているのです。表舞台では完璧な笑顔を見せていたとしても、関係者に気を遣っていたり、世の中のイメージ通りのキャラクターを演じたりして、私たちよりも何倍もストレスを感じて仕事をしているのです。その「人」を育て支えになることの充実感や自分の成長を楽しむことができるようになりました」
「それがあなたの評価にも現れているのでしょうね。何か、僕に務まるのか自信がなくなってきました」
「誰も、最初からうまくはいきませんよ。少しずつ勉強していってください」
 飯島部長と同じように職歴欄に記入がないのが気になった。
「あの、1つ質問があるのですが、よくスキャンダルが記事になったりすると、事務所はタレントの私生活までは管理していませんなんて報道陣に答えることが多いのですが、プライベートについてはどこまでタッチしているのでしょう」
 千賀の言葉を癖のある文字で書き終えて男性が尋ねた。
「既婚者やある程度の年齢に達しているタレントについては、事務所も最低限の常識はあり自覚を持って行動していただけると判断して、仕事以外の時間においては本人に任せていますが、未成年者は勿論のこと未婚のタレントに対しては、定時に連絡を取ったりスマホの位置情報で管理しています。タレントにとって、ほんの小さなスキャンダルでも命取りになることが多いですからね」
 芸能界の舞台から消えていったタレントの顔が頭に浮かんだ。
「あっ、それからもう1つ、この事務所に所属している倉石かおるのマネージャーは誰ですか」
「えっ、まさか、あなたは倉石かおるに近づく目的で、この事務所に入ったんじゃないわよね」
 疑わしい眼差しで男性を見た。
「少し興味がありまして、確か倉石かおるは2年前の大河ドラマの出演から急に売れ出して、映画にテレビドラマの主演など今は飛ぶ鳥を落とす勢いですよね。ただ、噂では、本当はその大河ドラマの出演は、別のタレント山咲夏海に決まっていた。でも、あのスキャンダルの為にその役を降ろされてしまった」
 左の顳かみを叩いた。
「よく知っていますね。倉石かおるはデビュー当時から社長が特に目を掛けていた子で、大河ドラマも社長自ら後押ししてたんだけど、最終的には山咲夏海に決定したみたい」
「だけど、あのスキャンダルが雑誌に取り上げられ、風向きが変わり素質的にはさがなくても、タレントとしては天と地の差がついてしまったんですね」
「1度悪いイメージがついてしまうと、そのレッテルを剥がすのは大変だからね」
「確か、山咲夏海の不倫相手はこの事務所のタレントでしたよね」
「よく覚えているわね。中堅のお笑いタレントで以前からそういうキャラクターで売っていたから、ダメージも少なく反対に泊がついて名前も売れたんじゃないかな」
「でも、その不倫って事実だったのでしょうか」
「その頃、私はまだ駆け出しだったから詳しくは分からないですが、後から先輩から聞いた話では大河ドラマの出演を得る為の、事務所が仕組んだスキャンダルだったんだと」
「出る杭は打たれる。やはり、芸能界は恐ろしいところですね」
 大袈裟に体を震わせた。
「山咲夏海が自殺未遂を起こしたという噂もあったくらいだからね」
「あっ、1つだけ良い情報が有ります。この事務所は、結構不倫騒動でのトラブルが多いですよね。ある論文によると同じ種類のネズミを調べたところ、一夫一妻型のプレーリーハタネズミにはバソブレシン受容体と言うホルモン多く存在し、乱交型のアメリカハタネズミは少なかった。それで、このアメリカハリネズミにバソブレシン受容体を投与してみると、一夫一婦型に変わったとの報告があります。これは、人間にも当てはまると考えられ、このホルモンが少ない人は浮気しやすいと考えられます。1度、全員検査したらどうでしょう」
左の顳かみを叩いた。
「でも、そのホルモンが少なかったからといって、簡単に増やすことができるのですか」
 ちょっと興味が湧いて来た。
「陣痛抑制剤にも使われているオキシトシンで増やすことができるようです。外国では簡単に入手でき、鼻からシュッと吹きつけるだけ」
「そ、それは、日本では買えないんですか?」
 必要性を切実に感じていた。
「僕には必要がありませんので、そこまでは調べてありません。しかし、それも仕事と言われれば、取り扱い店や輸入業者など調べますよ」
 涼しい顔で言い返した。
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