2 / 6
一日
しおりを挟む
十一月中旬の日曜日の夜、名古屋地下鉄東川線栄町駅を出て東方面に歩いたところにある、八階建て中規模の名古屋ビルディングの一階に『ゼア・イズ』というカフェレストランがある。通常は夜十時三十分までの営業なのだが、新型ウイルスの影響で愛知県内の飲食店は規制により夜八時までの自粛営業となっていた。
「先輩、奥に一人で座ってる若い女の子、昨日の夜も来てましたよね。さっきから、先輩のことじっと見たりして、ひょっとすると気があるんじゃないですか」
閉店の作業をする若い方の男性が朝比奈優作に声を掛けた。
「たまたまだよ。俺じゃなくお前に気があるんじゃないのか」
そう言いながらも奥の女性に目を移した。
「俺、平日は午後から閉店までの勤務なんですけど、先輩が来る土曜と日曜しか来てませんよ。だから、俺ではなく先輩で間違いありませんよ。今の若い子は、背が高くそこそこイケメンな男性に興味を持つのは理解出来ますけど、もし何かのきっかけで付き合うことになっちゃったりしたらびっくりするだろうな」
皿を棚に片付けながら言った。
「どうして、何に、びっくりするんだよ」
レジの伝票を整理しながら尋ねた。
「気づかないこと自体がおかしいんですよ。一言で言えば『変人』、先輩の常識は僕達の非常識、僕達の常識は先輩の非常識。まぁ、僕達は慣れましたけど、初めての人はきっと驚きますよ」
その言葉に朝比奈が首を傾げている時、奥に座っていた女性がレジに立つ朝比奈を確認してからゆっくりと立ち上がって朝比奈の前までやって来た。
「お願いします」
女性は持っていた伝票を朝比奈に差し出した。
「ありがとうございます」
伝票の金額を打ち込みお釣りを用意した。
「あの・・・・・」
お釣りを受け取ると女性が朝比奈に声を掛けた。
「あっ、はい」
朝比奈がその声に反応した。
「ピーベリー、とても、とても美味しかったです」
そう言うと後ろから来たお客を気にして、頭を下げ薄いコートを着て出口を後にした。
「あの女の子何処かで・・・・・あっ、すみません千二百円になります」
後のお客の清算を終えると、左の顳かみを叩いた。
「やっぱり、先輩のことが気になるみたいですよ。俺、そういうのには敏感ですからね」
若い男は右の肘で朝比奈の胸を叩いた。
「敏感だったら、彼女が出来ても不思議じゃないけどね」
最後の客も帰り、閉店作業も終えてマスターに挨拶をして店を出た。
「今日も、姉貴は遅いし、店で夕飯は済ましたから、今夜はどうしましょうかね」
いつもより店が早く終わり、遠回りをして東川公園へと向かうことにしたが、その途中の川沿いのベンチで一人腰掛けている女性の姿が目に入った。朝比奈は、近くの無料駐車場に車を止めて先程のベンチへ向かうと、女性が突然立ち上がりフラフラと橋まで歩き出す姿が小さく見えた。その女性は、手にした用紙をもう一度ゆっくり見詰めてから折り畳むと、溜息を吐いて用紙を持つ右手をゆっくりと垂らし、その用紙が手から離れた瞬間、橋の柵を乗り越えてその上に座わり直し、なにか決心したように目を閉じ前屈みになった。
「ふー、間に合ってよかった」
走り込んだ朝比奈が右腕で女性を抱え込んだ。
「死なせて下さい。もー、ノーマス、お願いです」
女性は首を左右に振って抵抗したが、朝比奈の右腕はビクともしなかった。
「僕を殺人者にするつもりですか」
耳元で呟くと、女性は驚き抵抗する力を弱めた。
「変な事件に巻き込まないで下さいよ」
一度柵に座り直させると、彼女が落とした用紙をポケットに突っ込み、彼女を両腕で抱え上げて先程のベンチにゆっくりと座らせた。
「えっ、」
電灯の明かりに照らされた朝比奈の顔を見で驚いた。
「先程店にいらした、お嬢さんですよね」
女性の顔を見て微笑んだ。
「あっ、はい・・・・・でも、何があったのかって、聞かないのですか」
視線を逸らし、下を向いて尋ねた。
「聞いて欲しいのですか。まぁ、人間生きていれば色々ありますからね。ただ、月並みですが、命は大切にして下さい。衝動的ではなく、もう一度考え直し冷静になって、それでも決断するのであれば、その時は僕を巻き込まないで下さい」
彼女の両手を握り、目を見て言った。
「はぁ、巻き込むですか」
意外な言葉に目を見開いて尋ねた。
「君、『暗数』って言葉知っていますか」
手を離して朝比奈が尋ねた。
「あんすう・・・ですか」
聞き慣れない言葉に戸惑った。
「警察に事件としては扱われなかった、事故、自殺などのことです。勿論、公表はされていない『数』の一種ですが、もし、今あなたがあの橋から飛び降りて、亡くなっていたとすると、事故、自殺、或いは殺人事件ではないかと一応捜査することになります。家族は勿論、友人や勤め先などの情報を集めて判断するのですが、其々に迷惑を掛けて全く無いとは信じてはいますが、殺人犯と言う冤罪を生み出すことも有り得ます。死をただ単純に考えないで下さいね」
顔を上下に動かして自分の言葉に納得していた。
「そっ、そうですね」
女性は朝比奈の言葉に頷くしかなかった。
「先程あなたはノーマスと言われましたよね。それはきっとノーマス事件のことで『もうたくさん』を意味した言葉のことでしょう。僕の記憶が正しければ、千九百八十年六月にロベルト・デュランはアメリカスポーツ界の象徴的存在だったレナードを下して母国はおろか世界ボクシング界のヒーローになり、映画の『ロッキー』の題材としても使われましたが、そのチャンピオンになった五ヶ月後のリターンマッチでは、第八ラウンドの途中に突如として試合放棄してしまう。その時にロベルト・デュランが叫んだ言葉が『ノーマス』でした。なぜ彼が『ノーマス』と叫んだのかは、はっきりしていませんが、一般的にはチャンピオンになった翌日からロベルト・デュランが飲酒を初めて、マネージャーやコーチングスタッフは彼のその能力の衰えを感じ、早めにリターンマッチをセッティングしてお金を稼ごうとした。まぁ、そのことに対しての言葉だと言われている。まぁ、彼の気持ちになれば分からなくはないけど、君が叫ぶには似つかわしくないと思うけどね」
左の顳かみを叩きながら言った。
「そっ、それって、今話すことですか」
女性は『だからなんなの』っていう気持ちだった。
「少しは落ち着いたかな。家まで送るよ」
朝比奈は立ち上がると右手を差し出した。
「えっ、私をですか」
一瞬固まって手を握ろうとしなかった。
「帰る方向が一緒だから、ついでにね・・・・さぁ」
朝比奈は強引に手を握るとベンチから立たせて車まで連れて行った。
「あの、どうして知っているのですか」
助手席に腰を下ろして自分の住所も聞かないのに、住んでいる住所に向かって走らせる朝比奈に向かって尋ねた。
「昔から鼻と記憶力はいいのねって姉にはよく言われます。誰にも秘密ですけど、多分僕は『サバン症候群』だと思います」
赤信号で止まると二人だけなのに彼女の耳に近づいて小声で答えた。
「サバン症候群、聞き慣れない言葉ですね」
青信号を指差して言った。
「僕も知らなくて調べてみたのですが『絶対音感』などと一緒で脳が起こす特殊能力で、僕の場合は写真に撮ったように瞬時にして記憶に残せるというものなのです。確かあなたは碧真由美さん、東区にあるアパートの三階に住んでいるのですよね。碧さんの三つ奥にある部屋に小包を配達した帰りにぶつかったのを覚えています。それに、今日、店のレジで会った時に確信しました」
左の顳かみを叩いて答えた。
「本当にあの時、あの一瞬で名前まで覚えてしまったのですか」
驚きというよりも怖さを感じていた。
「勿論、全部が全部という訳ではありません。ずっと昔から、人の苗字に興味がありまして『碧』と言う少し変わった苗字に反応したのかも知れません。あっ、そうか、あの時のこと碧さんも覚えていたのですね。でも、それが『ゼア・イズ』に来られるようになった理由ではないのですよね。僕があの店に、それも土曜日と日曜日だけ勤めているってこと、よく調べましたよね。まさか、刑事さんですか」
二時間ドラマのシーンを想像して言った。
「いえ、大学生です」
下を向いて朝比奈の言葉に微笑みを見せた。
「初めて笑ってくれましたね。碧さんは『犬派』ですかそれとも『猫派』なんですか」
その笑顔を見て尋ねた。
「私はどちらかといえば『犬派』です」
突然、頓珍漢な質問を出されて戸惑った。
「えっ、よかった。僕も『犬派』なんです。今は飼っていませんが、子供の頃は『ラッキー』と言うコリー犬と過ごし、その犬が亡くなってからは『ゴロー』と言う白い牡の大きな雑種犬を飼うようになり一緒に成長しました。子供の頃から兄弟みたいに育ったのですが、犬の寿命は短いですから高校三年生の時に別れる事になってしまいました。その悲しみもあって、それからは飼っていませんけど・・・・・・・あっ、そうだ、雑種といえば、東京上野公園の西郷隆盛が連れている犬は何犬か知ってますか」
死の悲しみについて話すのはまずいと思い、話を変えて尋ねた。
「西郷隆盛・・・・・そう言えば、右手で綱を持っている像がありましたね。秋田犬だと思っていたのですが・・・・・日本犬ってありましたか」
頭を捻って考えながら答えた。
「銅像だから、うご犬・ある犬・な犬の雑種です。分からなかったでしょう」
自分では受けると思ったけれど、車内に寒い風が吹いていた。
「朝比奈さんて、本当に変なおじさんなんですね」
それでも、微笑みで返した。
「えっ、あっ、そうか、店で働いている時のネームプレートを見たのですか。あんなちっちゃいプレートによく気づきましたね。それしても、おじさんは酷いな。せめてお兄さんにしてくれませんか」
突然名前を呼ばれて驚いていた。
「いえ、前から知っていました。アパートでぶつかった時に伝票を落としたでしょ」
真由美はあの時のことを思い出していた。
「あっ、そうでしたね。でも、名前は分かっても、僕が『ゼア・イズ』に勤めていることまでは・・・・・・」
どうして調べたのだろうともう一度左の顳かみを叩いて考えていた。
「白犬ヤマタの宅急便」
真由美がテンポよく口ずさんだ。
「えっ、まさか本当に会社まで訪ねて行ったのですか」
流石に驚いていた。
「丁度、母に送るものがあったので、係りの女性の方に尋ねてみました。初めは個人情報だからと教えてもらえませんでしたが、最後の最後には粘り勝ち、恋人だって言ったら土・日曜日はあの店で働いているって聞き出しました」
右手を握って小さくガッツポーズを見せた。
「こ、恋人ですか、碧さん随分大胆な行動をとるのですね。僕も他人には話さないように気を付けることにします」
そう言うと、目的地である真由美のアパートに着いた。
「部屋まで送ってくれないのですか」
『では』と言う朝比奈の言葉に反応して答えた。
「あっ、そうですね。分かりました」
朝比奈は車を降りて真由美と一緒に部屋へと向かった。
「それではここで、おやすみなさい」
鍵を挿し込み解除して扉を開けた真由美に声を掛けた。
「寝るにはまだ早いから『ゼア・イズ』のピーベリーには敵わないけれど、お礼の気持ちを込めて一生懸命コーヒーを煎れるので飲んでいって下さい」
真由美は真剣な表情で話すと頭を下げて願った。
「えっ、そうですか・・・・・分かりました、頂くことにします」
真由美の後に続いて部屋の中に入って行った。
「準備しますので、そちらで待っていて下さい」
ソファに朝比奈を勧めて、自分は奥の部屋に入って行った。綺麗に片付いた部屋は反対に言えば生活感が殆んど感じられず、むしろ殺風景に思えた。朝比奈は、先程真由美が手にしていた用紙のことがふと気になってポケットの中から取り出して開いて見てしまった。
「碧真由美・・・・・・・・」
じっと用紙を見ていたが、暫くして部屋に近づいてくる足音が聞こえ、慌ててポケットに戻した。
「すっ、すいません」
真由美はコーヒーを手にはしていなくて、バスタオル一枚だけの姿だった。そして、朝比奈に近づきそのバスタオルも足元に落ちた。
「お願いです。抱いて下さい」
真由美は朝比奈に抱きついて言った。その姿に驚く朝比奈の目にケーキの箱を持った別の女性の姿が映し出され、その女性は大きな目を一段と見開き、手にしていたケーキの箱が手からゆっくりと床に落ちて弾んだ。
「まっ、まさか、そんな・・・・・・」
その女性は、口に右手を当てて玄関へと向かい、朝比奈は慌てて女性を追う体制を見せた。
「行かないで」
真由美は大きな声を出すと朝比奈の腕を掴んだ。
「行かないで、一人にしないで」
今度は小さな声で、朝比奈を濡れる懇願の目で見た。
「ふー、分かりました」
朝比奈は大きく息を吐くと、真由美を身体から剥がし、床に落ちたバスタオルで被った。
「ノーマスですか・・・・・何があったのか分かりませんが、自暴自棄になってこんなことしては行けません。僕は、そんな状態の碧さんを抱く気にはなれません。先ずは、眠るまで話をじっくり聞かせて下さい」
それでも、朝比奈は寝室へと真由美を連れて行き、シングルベットに座らせた。
「せっ、先月の下旬頃に、単身赴任先の東京にいる父から母へ手紙が届いて、中には離婚届が入っていました」
少し冷静になって朝比奈といる今の状況に恥ずかしさが急に襲って来て、両腕で身体を抱きしめていた。
「離婚となる原因は、そしてその予兆はあったのですか」
両肩を支えながら朝比奈が尋ねた。
「離れていたし、しばらく会っていなかったので、私には・・・・・いえ、母にも全く分からなかった。本当に突然だったようなのです」
その時の状況を思い出して答えた。
「突然ですか・・・・・その離婚届以外に何か手紙などは入っていなかったのですか」
朝比奈は真由美の背中をゆっくりと摩りながら尋ねた。
「兎に角、月末までに届けを出して欲しい。それと、何故か、母だけは旧姓に戻って、他の署に移ってほしいと、それは最後の願いだからと必死な文面でした。私たち二人にもすまない、すまないと最後に綴られていました」
その文面を思い出し涙が溢れて来た。
「おそらく、伝えたいのはそれだけではないですね。お父さんは今どこにいらっしゃいますか」
涙の理由を察して朝比奈が尋ねた。
「今月の始めに先程の橋から川に飛び込んで自殺しました」
『えっ』という驚きの表情で真由美が答えた。
「あー、そうだったのですか。辛いことを尋ねますが、お父さんの死亡原因はなんだったのでしょう。あの橋の中央部から飛び降りたとすると、岩などもないはずですから頭から落ちたとしても、失神はするかも知れませんが、川の水がクッションとなって打撃というよりは、川の水を吸い込んでの呼吸困難によるものだと思いますが、どうだったんでしょうね」
左の顳かみを叩きながら尋ねた。
「そうです、警察からは、溺死と聞きました」
目を瞑りその時の記憶を呼び戻して答えた。
「やはり溺死ですか・・・・・・現場に何か残されていませんでしたか」
事件現場を想像しながら尋ねた。
「いえ、何も残されていませんでした」
よく考えてから顔を左右に振った。
「名古屋に戻られて、何か不審な点はなかったということですか」
東京でなく名古屋で亡くなったということが気になって尋ねた。
「母も私も初めは父が自殺するとは考えられなくって、詳しく調べて欲しいとお願いしたのですが、父からの手紙などから判断され自殺で処理されたと聞いています」
悲しそうに下を向いた。
「そうですか、詳しく調べないで自殺と判断ですか・・・・・亡くなる前にお父さんとは会っていますか」
朝比奈の悪い癖、色々疑問が浮かび上がって来た。
「いえ、連絡もなかったし、会ってもいません」
自分にも確かめるように顔を左右に動かして答えた。
「ちなみに、お父さんはどんな仕事をなさっていたのですか」
事件に興味が沸いて来た。
「内閣府の官房事務次官と聞いていました。総理大臣が急に代わって大臣や各部署の人事など大変だとは聞いていましたから、それなどのストレスも原因ではないかと、警察から説明を受けた記憶があります」
二人組の男性刑事の話を思い出していた。
「そうですか・・・・・・調べてみる必要はありますね」
左の顳かみを叩きながら真由美からの情報を整理していた。
「あの」
真由美が真剣な眼差しで朝比奈を見た。
「あっ、これですか。癖というか、脳の記憶を司る海馬を刺激しているのです。βエンドルフンを分泌させて、長期の記憶能力を増強し空間学習能力を高めるのです」
同じ動作を続けて見せた。
「そうではなくて・・・・・・」
バスタオル一枚の女性に向けての言葉とは思えない、頓珍漢な答えに溜息を吐いた。
「あっ、気づきませんでした。遅くなりましたので、横になって下さい」
そう言うと、朝比奈は真由美に背を向けた。
「私ではだめですか」
朝比奈の背に抱きついて尋ねた。
「命を助けてもらったお礼なんて考えているなら、僕はちっとも嬉しくないですね」
朝比奈は正面を向き真剣な眼差しで返した。
「そんな理由ではありません。朝比奈さんを好きになってはいけませんか。私にはそんな資格はないのでしょうか」
残念そうに眼差しを落として尋ねた。
「あっ、そうだ、それなら三日間の恋人のお試し期間というのはどうでしょう。一晩寝て、冷静になっても、気持ちが変わらなければ『恋人』と言うことで契約しましょう。そして、この人ではダメだと思ったら、クーリングオフで理由なく解約出来ることにしましょう。その時の手数料は勿論無料です。どうでしょう、新しい経験でいいんじゃないですか」
自分で感心しながら尋ねた。
「恋人の契約ですか・・・・・」
途方もない申し入れに何と答えていいのか分からなかった。
「今日はゆっくり寝て下さい。利用前の無料サービスとして、特別に真由美さんが眠るまで付き添います」
ベットに寝るように勧めると、自分は背を向けた。
「分かりました、よろしくお願いします」
「先輩、奥に一人で座ってる若い女の子、昨日の夜も来てましたよね。さっきから、先輩のことじっと見たりして、ひょっとすると気があるんじゃないですか」
閉店の作業をする若い方の男性が朝比奈優作に声を掛けた。
「たまたまだよ。俺じゃなくお前に気があるんじゃないのか」
そう言いながらも奥の女性に目を移した。
「俺、平日は午後から閉店までの勤務なんですけど、先輩が来る土曜と日曜しか来てませんよ。だから、俺ではなく先輩で間違いありませんよ。今の若い子は、背が高くそこそこイケメンな男性に興味を持つのは理解出来ますけど、もし何かのきっかけで付き合うことになっちゃったりしたらびっくりするだろうな」
皿を棚に片付けながら言った。
「どうして、何に、びっくりするんだよ」
レジの伝票を整理しながら尋ねた。
「気づかないこと自体がおかしいんですよ。一言で言えば『変人』、先輩の常識は僕達の非常識、僕達の常識は先輩の非常識。まぁ、僕達は慣れましたけど、初めての人はきっと驚きますよ」
その言葉に朝比奈が首を傾げている時、奥に座っていた女性がレジに立つ朝比奈を確認してからゆっくりと立ち上がって朝比奈の前までやって来た。
「お願いします」
女性は持っていた伝票を朝比奈に差し出した。
「ありがとうございます」
伝票の金額を打ち込みお釣りを用意した。
「あの・・・・・」
お釣りを受け取ると女性が朝比奈に声を掛けた。
「あっ、はい」
朝比奈がその声に反応した。
「ピーベリー、とても、とても美味しかったです」
そう言うと後ろから来たお客を気にして、頭を下げ薄いコートを着て出口を後にした。
「あの女の子何処かで・・・・・あっ、すみません千二百円になります」
後のお客の清算を終えると、左の顳かみを叩いた。
「やっぱり、先輩のことが気になるみたいですよ。俺、そういうのには敏感ですからね」
若い男は右の肘で朝比奈の胸を叩いた。
「敏感だったら、彼女が出来ても不思議じゃないけどね」
最後の客も帰り、閉店作業も終えてマスターに挨拶をして店を出た。
「今日も、姉貴は遅いし、店で夕飯は済ましたから、今夜はどうしましょうかね」
いつもより店が早く終わり、遠回りをして東川公園へと向かうことにしたが、その途中の川沿いのベンチで一人腰掛けている女性の姿が目に入った。朝比奈は、近くの無料駐車場に車を止めて先程のベンチへ向かうと、女性が突然立ち上がりフラフラと橋まで歩き出す姿が小さく見えた。その女性は、手にした用紙をもう一度ゆっくり見詰めてから折り畳むと、溜息を吐いて用紙を持つ右手をゆっくりと垂らし、その用紙が手から離れた瞬間、橋の柵を乗り越えてその上に座わり直し、なにか決心したように目を閉じ前屈みになった。
「ふー、間に合ってよかった」
走り込んだ朝比奈が右腕で女性を抱え込んだ。
「死なせて下さい。もー、ノーマス、お願いです」
女性は首を左右に振って抵抗したが、朝比奈の右腕はビクともしなかった。
「僕を殺人者にするつもりですか」
耳元で呟くと、女性は驚き抵抗する力を弱めた。
「変な事件に巻き込まないで下さいよ」
一度柵に座り直させると、彼女が落とした用紙をポケットに突っ込み、彼女を両腕で抱え上げて先程のベンチにゆっくりと座らせた。
「えっ、」
電灯の明かりに照らされた朝比奈の顔を見で驚いた。
「先程店にいらした、お嬢さんですよね」
女性の顔を見て微笑んだ。
「あっ、はい・・・・・でも、何があったのかって、聞かないのですか」
視線を逸らし、下を向いて尋ねた。
「聞いて欲しいのですか。まぁ、人間生きていれば色々ありますからね。ただ、月並みですが、命は大切にして下さい。衝動的ではなく、もう一度考え直し冷静になって、それでも決断するのであれば、その時は僕を巻き込まないで下さい」
彼女の両手を握り、目を見て言った。
「はぁ、巻き込むですか」
意外な言葉に目を見開いて尋ねた。
「君、『暗数』って言葉知っていますか」
手を離して朝比奈が尋ねた。
「あんすう・・・ですか」
聞き慣れない言葉に戸惑った。
「警察に事件としては扱われなかった、事故、自殺などのことです。勿論、公表はされていない『数』の一種ですが、もし、今あなたがあの橋から飛び降りて、亡くなっていたとすると、事故、自殺、或いは殺人事件ではないかと一応捜査することになります。家族は勿論、友人や勤め先などの情報を集めて判断するのですが、其々に迷惑を掛けて全く無いとは信じてはいますが、殺人犯と言う冤罪を生み出すことも有り得ます。死をただ単純に考えないで下さいね」
顔を上下に動かして自分の言葉に納得していた。
「そっ、そうですね」
女性は朝比奈の言葉に頷くしかなかった。
「先程あなたはノーマスと言われましたよね。それはきっとノーマス事件のことで『もうたくさん』を意味した言葉のことでしょう。僕の記憶が正しければ、千九百八十年六月にロベルト・デュランはアメリカスポーツ界の象徴的存在だったレナードを下して母国はおろか世界ボクシング界のヒーローになり、映画の『ロッキー』の題材としても使われましたが、そのチャンピオンになった五ヶ月後のリターンマッチでは、第八ラウンドの途中に突如として試合放棄してしまう。その時にロベルト・デュランが叫んだ言葉が『ノーマス』でした。なぜ彼が『ノーマス』と叫んだのかは、はっきりしていませんが、一般的にはチャンピオンになった翌日からロベルト・デュランが飲酒を初めて、マネージャーやコーチングスタッフは彼のその能力の衰えを感じ、早めにリターンマッチをセッティングしてお金を稼ごうとした。まぁ、そのことに対しての言葉だと言われている。まぁ、彼の気持ちになれば分からなくはないけど、君が叫ぶには似つかわしくないと思うけどね」
左の顳かみを叩きながら言った。
「そっ、それって、今話すことですか」
女性は『だからなんなの』っていう気持ちだった。
「少しは落ち着いたかな。家まで送るよ」
朝比奈は立ち上がると右手を差し出した。
「えっ、私をですか」
一瞬固まって手を握ろうとしなかった。
「帰る方向が一緒だから、ついでにね・・・・さぁ」
朝比奈は強引に手を握るとベンチから立たせて車まで連れて行った。
「あの、どうして知っているのですか」
助手席に腰を下ろして自分の住所も聞かないのに、住んでいる住所に向かって走らせる朝比奈に向かって尋ねた。
「昔から鼻と記憶力はいいのねって姉にはよく言われます。誰にも秘密ですけど、多分僕は『サバン症候群』だと思います」
赤信号で止まると二人だけなのに彼女の耳に近づいて小声で答えた。
「サバン症候群、聞き慣れない言葉ですね」
青信号を指差して言った。
「僕も知らなくて調べてみたのですが『絶対音感』などと一緒で脳が起こす特殊能力で、僕の場合は写真に撮ったように瞬時にして記憶に残せるというものなのです。確かあなたは碧真由美さん、東区にあるアパートの三階に住んでいるのですよね。碧さんの三つ奥にある部屋に小包を配達した帰りにぶつかったのを覚えています。それに、今日、店のレジで会った時に確信しました」
左の顳かみを叩いて答えた。
「本当にあの時、あの一瞬で名前まで覚えてしまったのですか」
驚きというよりも怖さを感じていた。
「勿論、全部が全部という訳ではありません。ずっと昔から、人の苗字に興味がありまして『碧』と言う少し変わった苗字に反応したのかも知れません。あっ、そうか、あの時のこと碧さんも覚えていたのですね。でも、それが『ゼア・イズ』に来られるようになった理由ではないのですよね。僕があの店に、それも土曜日と日曜日だけ勤めているってこと、よく調べましたよね。まさか、刑事さんですか」
二時間ドラマのシーンを想像して言った。
「いえ、大学生です」
下を向いて朝比奈の言葉に微笑みを見せた。
「初めて笑ってくれましたね。碧さんは『犬派』ですかそれとも『猫派』なんですか」
その笑顔を見て尋ねた。
「私はどちらかといえば『犬派』です」
突然、頓珍漢な質問を出されて戸惑った。
「えっ、よかった。僕も『犬派』なんです。今は飼っていませんが、子供の頃は『ラッキー』と言うコリー犬と過ごし、その犬が亡くなってからは『ゴロー』と言う白い牡の大きな雑種犬を飼うようになり一緒に成長しました。子供の頃から兄弟みたいに育ったのですが、犬の寿命は短いですから高校三年生の時に別れる事になってしまいました。その悲しみもあって、それからは飼っていませんけど・・・・・・・あっ、そうだ、雑種といえば、東京上野公園の西郷隆盛が連れている犬は何犬か知ってますか」
死の悲しみについて話すのはまずいと思い、話を変えて尋ねた。
「西郷隆盛・・・・・そう言えば、右手で綱を持っている像がありましたね。秋田犬だと思っていたのですが・・・・・日本犬ってありましたか」
頭を捻って考えながら答えた。
「銅像だから、うご犬・ある犬・な犬の雑種です。分からなかったでしょう」
自分では受けると思ったけれど、車内に寒い風が吹いていた。
「朝比奈さんて、本当に変なおじさんなんですね」
それでも、微笑みで返した。
「えっ、あっ、そうか、店で働いている時のネームプレートを見たのですか。あんなちっちゃいプレートによく気づきましたね。それしても、おじさんは酷いな。せめてお兄さんにしてくれませんか」
突然名前を呼ばれて驚いていた。
「いえ、前から知っていました。アパートでぶつかった時に伝票を落としたでしょ」
真由美はあの時のことを思い出していた。
「あっ、そうでしたね。でも、名前は分かっても、僕が『ゼア・イズ』に勤めていることまでは・・・・・・」
どうして調べたのだろうともう一度左の顳かみを叩いて考えていた。
「白犬ヤマタの宅急便」
真由美がテンポよく口ずさんだ。
「えっ、まさか本当に会社まで訪ねて行ったのですか」
流石に驚いていた。
「丁度、母に送るものがあったので、係りの女性の方に尋ねてみました。初めは個人情報だからと教えてもらえませんでしたが、最後の最後には粘り勝ち、恋人だって言ったら土・日曜日はあの店で働いているって聞き出しました」
右手を握って小さくガッツポーズを見せた。
「こ、恋人ですか、碧さん随分大胆な行動をとるのですね。僕も他人には話さないように気を付けることにします」
そう言うと、目的地である真由美のアパートに着いた。
「部屋まで送ってくれないのですか」
『では』と言う朝比奈の言葉に反応して答えた。
「あっ、そうですね。分かりました」
朝比奈は車を降りて真由美と一緒に部屋へと向かった。
「それではここで、おやすみなさい」
鍵を挿し込み解除して扉を開けた真由美に声を掛けた。
「寝るにはまだ早いから『ゼア・イズ』のピーベリーには敵わないけれど、お礼の気持ちを込めて一生懸命コーヒーを煎れるので飲んでいって下さい」
真由美は真剣な表情で話すと頭を下げて願った。
「えっ、そうですか・・・・・分かりました、頂くことにします」
真由美の後に続いて部屋の中に入って行った。
「準備しますので、そちらで待っていて下さい」
ソファに朝比奈を勧めて、自分は奥の部屋に入って行った。綺麗に片付いた部屋は反対に言えば生活感が殆んど感じられず、むしろ殺風景に思えた。朝比奈は、先程真由美が手にしていた用紙のことがふと気になってポケットの中から取り出して開いて見てしまった。
「碧真由美・・・・・・・・」
じっと用紙を見ていたが、暫くして部屋に近づいてくる足音が聞こえ、慌ててポケットに戻した。
「すっ、すいません」
真由美はコーヒーを手にはしていなくて、バスタオル一枚だけの姿だった。そして、朝比奈に近づきそのバスタオルも足元に落ちた。
「お願いです。抱いて下さい」
真由美は朝比奈に抱きついて言った。その姿に驚く朝比奈の目にケーキの箱を持った別の女性の姿が映し出され、その女性は大きな目を一段と見開き、手にしていたケーキの箱が手からゆっくりと床に落ちて弾んだ。
「まっ、まさか、そんな・・・・・・」
その女性は、口に右手を当てて玄関へと向かい、朝比奈は慌てて女性を追う体制を見せた。
「行かないで」
真由美は大きな声を出すと朝比奈の腕を掴んだ。
「行かないで、一人にしないで」
今度は小さな声で、朝比奈を濡れる懇願の目で見た。
「ふー、分かりました」
朝比奈は大きく息を吐くと、真由美を身体から剥がし、床に落ちたバスタオルで被った。
「ノーマスですか・・・・・何があったのか分かりませんが、自暴自棄になってこんなことしては行けません。僕は、そんな状態の碧さんを抱く気にはなれません。先ずは、眠るまで話をじっくり聞かせて下さい」
それでも、朝比奈は寝室へと真由美を連れて行き、シングルベットに座らせた。
「せっ、先月の下旬頃に、単身赴任先の東京にいる父から母へ手紙が届いて、中には離婚届が入っていました」
少し冷静になって朝比奈といる今の状況に恥ずかしさが急に襲って来て、両腕で身体を抱きしめていた。
「離婚となる原因は、そしてその予兆はあったのですか」
両肩を支えながら朝比奈が尋ねた。
「離れていたし、しばらく会っていなかったので、私には・・・・・いえ、母にも全く分からなかった。本当に突然だったようなのです」
その時の状況を思い出して答えた。
「突然ですか・・・・・その離婚届以外に何か手紙などは入っていなかったのですか」
朝比奈は真由美の背中をゆっくりと摩りながら尋ねた。
「兎に角、月末までに届けを出して欲しい。それと、何故か、母だけは旧姓に戻って、他の署に移ってほしいと、それは最後の願いだからと必死な文面でした。私たち二人にもすまない、すまないと最後に綴られていました」
その文面を思い出し涙が溢れて来た。
「おそらく、伝えたいのはそれだけではないですね。お父さんは今どこにいらっしゃいますか」
涙の理由を察して朝比奈が尋ねた。
「今月の始めに先程の橋から川に飛び込んで自殺しました」
『えっ』という驚きの表情で真由美が答えた。
「あー、そうだったのですか。辛いことを尋ねますが、お父さんの死亡原因はなんだったのでしょう。あの橋の中央部から飛び降りたとすると、岩などもないはずですから頭から落ちたとしても、失神はするかも知れませんが、川の水がクッションとなって打撃というよりは、川の水を吸い込んでの呼吸困難によるものだと思いますが、どうだったんでしょうね」
左の顳かみを叩きながら尋ねた。
「そうです、警察からは、溺死と聞きました」
目を瞑りその時の記憶を呼び戻して答えた。
「やはり溺死ですか・・・・・・現場に何か残されていませんでしたか」
事件現場を想像しながら尋ねた。
「いえ、何も残されていませんでした」
よく考えてから顔を左右に振った。
「名古屋に戻られて、何か不審な点はなかったということですか」
東京でなく名古屋で亡くなったということが気になって尋ねた。
「母も私も初めは父が自殺するとは考えられなくって、詳しく調べて欲しいとお願いしたのですが、父からの手紙などから判断され自殺で処理されたと聞いています」
悲しそうに下を向いた。
「そうですか、詳しく調べないで自殺と判断ですか・・・・・亡くなる前にお父さんとは会っていますか」
朝比奈の悪い癖、色々疑問が浮かび上がって来た。
「いえ、連絡もなかったし、会ってもいません」
自分にも確かめるように顔を左右に動かして答えた。
「ちなみに、お父さんはどんな仕事をなさっていたのですか」
事件に興味が沸いて来た。
「内閣府の官房事務次官と聞いていました。総理大臣が急に代わって大臣や各部署の人事など大変だとは聞いていましたから、それなどのストレスも原因ではないかと、警察から説明を受けた記憶があります」
二人組の男性刑事の話を思い出していた。
「そうですか・・・・・・調べてみる必要はありますね」
左の顳かみを叩きながら真由美からの情報を整理していた。
「あの」
真由美が真剣な眼差しで朝比奈を見た。
「あっ、これですか。癖というか、脳の記憶を司る海馬を刺激しているのです。βエンドルフンを分泌させて、長期の記憶能力を増強し空間学習能力を高めるのです」
同じ動作を続けて見せた。
「そうではなくて・・・・・・」
バスタオル一枚の女性に向けての言葉とは思えない、頓珍漢な答えに溜息を吐いた。
「あっ、気づきませんでした。遅くなりましたので、横になって下さい」
そう言うと、朝比奈は真由美に背を向けた。
「私ではだめですか」
朝比奈の背に抱きついて尋ねた。
「命を助けてもらったお礼なんて考えているなら、僕はちっとも嬉しくないですね」
朝比奈は正面を向き真剣な眼差しで返した。
「そんな理由ではありません。朝比奈さんを好きになってはいけませんか。私にはそんな資格はないのでしょうか」
残念そうに眼差しを落として尋ねた。
「あっ、そうだ、それなら三日間の恋人のお試し期間というのはどうでしょう。一晩寝て、冷静になっても、気持ちが変わらなければ『恋人』と言うことで契約しましょう。そして、この人ではダメだと思ったら、クーリングオフで理由なく解約出来ることにしましょう。その時の手数料は勿論無料です。どうでしょう、新しい経験でいいんじゃないですか」
自分で感心しながら尋ねた。
「恋人の契約ですか・・・・・」
途方もない申し入れに何と答えていいのか分からなかった。
「今日はゆっくり寝て下さい。利用前の無料サービスとして、特別に真由美さんが眠るまで付き添います」
ベットに寝るように勧めると、自分は背を向けた。
「分かりました、よろしくお願いします」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
【純愛百合】檸檬色に染まる泉【純愛GL】
里見 亮和
キャラ文芸
”世界で一番美しいと思ってしまった憧れの女性”
女子高生の私が、生まれてはじめて我を忘れて好きになったひと。
雑誌で見つけた、たった一枚の写真しか手掛かりがないその女性が……
手なんか届くはずがなかった憧れの女性が……
いま……私の目の前にいる。
奇跡みたいな出会いは、優しいだけじゃ終わらない。
近づくほど切なくて、触れるほど苦しくて、それでも離れられない。
憧れの先にある“本当の答え”に辿り着くまでの、静かな純愛GL。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる