ノーマス

碧 春海

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四日

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「おはよう、よく眠れた」
 松原刑事がパジャマ姿の真由美に声を掛けた。
「お母さんありがとう。久しぶりの手料理を食べて落ち着いたら、気持ちも楽になってよく眠れたよ。お母さんの言うように、朝比奈さんのことは忘れることにします。歳も随分離れているし、旦那さんがアルバイトでは生活も出来ないだろうから。それに、電話を掛けても出てくれないし、朝比奈さんもそう思っているのだと思う。落ち込んでいたから、一瞬の迷いだったのかな。本当に、一晩寝たらさっぱりした。忘れられたわ」
 テーブルに置かれた味噌汁を手にとって言った。
「そっ、そうよ。初めてのことで真由美は舞い上がっていただけ。一晩ゆっくりと寝て冷静になれば分かる事なのよ」
 安心した表情で真由美の前に腰を降ろした。
「それで、アパートに行って着替えや勉強に必要な用具を持って来たいの。車で送ってくれないかな」
 目玉焼きに箸を進めながら尋ねた。
「いいわよ。買い物のついでに行こうか」
 嬉しそうに答えた。
「お父さんが自殺したって、納得出来ているの。私は事件の捜査については全くの素人だから、警察官でもあるお母さんの言葉を信じるしかなかった。信じるしか出来なかったけど、家族として、親娘として今でも納得してません。でも、朝比奈さんは他人なのに、警察でもない素人なのに納得出来ないことがあれば、とことん追求し命を投げ捨てて真実を見つけようとしている。そんな馬鹿といると息が詰まる。怖いくらい。だから本当にお母さんがいてくれてありがとう感謝しています。じゃ、準備してくるね」
 食べ終えた食器を片付けて部屋に向かい。その仕草をじっと見ていた。
「今日のお昼はどっかで食べようか。真由美の食べたいものなんでもいいよ」
 二人は車に乗り込むと先ずはアパートに向かった。
「牛丼でいいよ」
 通勤時間が過ぎていたけれど、次第に道が混み始めた。
「昔から好きだったからね」
 進路方向の交差点の信号が青から黄色、そして赤となり、交差点を前にして四、五台がブーレーキを掛けて止まり始め、松原が運転する車も完全に停止した時、真由美は突然シートベルトを外し扉を開けて外へ出ると『お母さんごめん』と言葉を残して走り出した。
「真由美、真由美・・・・・」
 大声を出したが、前後に車が止まっててはどうしようもなかった。
「すみません。朝比奈優作さんは今日は出勤されているのでしょうか」
 車を飛び出してから何度も朝比奈に電話を掛けても通じない。真由美は『もしか』の望みを託して、白犬ヤマタの事務所を訪ねてみることにした。
「ちょっとお待ち下さい。えっと、朝比奈は今週は予定が入っていたのですが、本人からしばらく休むとの連絡がありまして、今日も欠勤となっています」
 以前、真由美から『恋人』とだと聞かされていた受付の女性が対応して答えた。
「お願いがあるのですが、ちょっと喧嘩をしちゃったものですから、電話に出てくれないのです。こちらの会社から連絡してもらえませんか」
 真由美は疑われないように理由をつけて、顔の前で両手を合わせた。
「そうですか・・・・・・一度、連絡を取ってみますのでしばらくお待ち下さい」
 少し間を置いたが、同じ女性として真由美の気持ちを察して受話器を取った。時間としては短いものであったが、真由美にとってはとても長く感じ祈る気持ちでいっぱいで、彼女が『もしもし』と動けば、その受話器を掴み取るつもりで構えていた。
「残念ですが、留守電になっていて繋がりませんね」
 受話器を降ろして答えた。
「そっ、そうですか、ありがとうございました」
 真由美は頭を下げると、白犬ヤマタの事務所を後にした。朝比奈のことだからと、想像していたことではあったが、淋しい気持ちで胸が傷んだ。その間にも、母親から何度も連絡が入って来ていて、母の気持ちを察すると辛かった。
「優作、今どこで何をしてるの・・・・・・」
 愛しい気持ちと、連絡が取れなくて朝比奈の存在を心配する気持ちが交互に絡み合い、心がはち切れそうだった。
「あっ、そうだ、お姉さんが弁護士だったんだ」
 そう呟くと、スマホで検索して朝比奈麗子を突き止めて、藁にも縋る思いで事務所の連絡先をコールした。
「はい、朝比奈法律事務所、糸川です」
 耳を当てたスマホからは聞きなれた声が聞こえた。
「あの、もしもし、どちら様でしょうか」
 その言葉を耳にした真由美は電話を切った。
「糸川先輩が、お姉さんの法律事務所で働いているなんて・・・・・・・そっか、そうだったんだ。私は優作にとって
だったんだろう」
 先程の言葉と声が耳に残って体から力が抜けた。
「優作は糸川先輩と付き合ってるんだ、だからお姉さんの事務所を紹介した。だから、抱いてくれなかったんだ。でも、幸せな二日間を過ごさせてくれたから」
 真由美はしばらく何を聞くともなく、何を見るともなくフラフラと歩き出して、気がつくと東鉄瀬戸線の東大川駅に着いていた。
「二人だけの思い出・・・・・」
 真由美は電車に乗って東鉄瀬戸駅で降りて東に向かい、二人でみそかつ定食を味わったレストサカエの準備中の札を左手に見ながら、銀座通りを抜けて末広通りの西側にあったギャラリーの扉を開けてゆっくりと入った。
「あっ、先日も来られた方ですよね。今日はお一人ですか」
 真由美のことを覚えていた女性が声を掛けて来た。
「今日は一人で来ました」
 小さく頷いて答えた。
「そのペンダントよくお似合いですよ。彼に買ってもらったのですね」
 真由美の胸元を右手の平で示して尋ねた。
「はい、隣の瀬戸蔵で買ってくれたみたいです」
 女性に見せながら微笑んだ。
「その緑色の輝く釉薬はそこにも表示されているように、作者が『希望』と名付けているそうです。彼も随分熱心にご覧になっていらしたから、あなたの希望が叶うようにと贈られたのですね。ちょと羨ましいですね」
 そう言うと、頭を下げて他のお客様の方へ歩いて行った。
「希望か、私には無くなってしまったのに」
 真由美はギャラリーを後にして、深川神社へと向かった。二人で並んで歩いた風景が続き、安藤金魚店、香ばしい匂いのする瀬戸焼きそばの店、炭火で焼かれたうなぎの独特の香りを通り抜け、転びそうになった石段を今度は登って、願うこともないのでお参りはしなかったが、馬という大きな字が書かれている絵馬は流石に気になって、一枚一枚裏返していった。
『世界で一番大好きな真由美ともう一度出会えますように優作』一枚の新しい絵馬に真由美の手が止まった。
「優作も・・・・・私がもう少し早く来ていれば会えた」
 後悔の気持ちと、細かくても絵馬から弾き出そうな懐かしい癖のある字を見詰め、真由美はしばらく動けなかったが、ふと何かに気づき以前訪れた時に朝比奈が止めた無料駐車場へと走りだし、順番に一台一台確認していくが、朝比奈の車は発見できない。『どこ、どこ、どこ』そう呟きながら仕方なく東鉄瀬戸駅へと向かった。
「優作が他に行く所は」
 真由美は朝比奈の真似をして左の顳かみを何度も叩いた。しかし、いくら叩いても、二日間の経験だけでは引き出すことは出来なかった。
「仕方ないよね。自分が悪いのだから。本当に最後まで運がないね。私には」
 真由美の心の中に自分の運のなさと、絶望感が心を被った。そして、あの時の行動を取れば朝比奈と出会いまた自分を助けてくれるのではないか、そんな神にも祈る気持ちと僅かな期待を持って『ゼア・イズ』に向かうことにした。そして、真由美が会いたいと望む朝比奈は、大島教授に紹介してもらった、大学病院などがんの専門家の取材をしていた。特に午前中は、瀬戸市の公立生陶病院の加藤先生に詳しく話を聞いた後、真由美の想像通り深川神社に寄って絵馬に願い事を記入して、他の病院へと取材をした後『ゼア・イズ』に寄っていた。しかし、ここでも真由美とは又もニアミス、会うことはなかった。そして、用事を済ませると東川公園へと車を走らせた。朝比奈は碧官房事務次官が亡くなった時刻にもう一度近くを聞き込んでみることにした。
「すみません、二週間程前ですがこの男性を見ませんでしたか」
 公園近くの店や歩いている人に声を掛け、スマホに映し出された碧官房事務次官の姿を見せて歩いた。そして、ベンチに座る一人の男性が目に止まり、近寄って先程の言葉を掛けた。
「あっ、見たよ。今の時刻はこのベンチでコンビニのおにぎりを食べてるから、ちょうど目の前を通ってあの橋に向かっていく姿をね。そして、あの橋の真ん中辺で何か首筋に当てられてから突き落とされたみたいだな」
 袋からおにぎりを取り出して答えた。
「どうして、警察に知らせなかったのですか」
 朝比奈は横に座って尋ねた。
「電話を持ってないし、この辺りに公衆電話もない。それに、公園で野宿をしてるから色々聞かれても困るからな。それに、お前さんのように聞いてくる人もなかったからね」
 鮭のおにぎりを口にして答えた。
「やはり、捜査はされていなかった・・・・・・」
 朝比奈は呟くと礼を言って橋へと向かったが、その少し前、真由美は『ゼア・イズ』の扉を開けて店に入ったが朝比奈の姿はなく、足を引き摺るようにしてあの時と同じ一番奥の席に腰を降ろした。
「あの、ピーベリーをお願いします」
 真由美はオーダーを取りに来たマスターに告げた。そして、しばらくするとマスターがピーベリーを持って現れ伝票と一緒にテーブルに置くと、その横に三通の封筒を並べて置いた。
「朝比奈がどれか一通だけを選んでもらうようにと言ってたよ」
 真由美の『えっ、一通だけ』の表情に、マスターが頷き、厚さの違う封筒に手を当てて、最初は一番厚い封筒を手にしたが、一度戻して最も薄い封筒を取り上げて、中から一枚の書類を取り出すと、目を閉じ大きく息を吸い込んでゆっくりと吐き出してから上下に伸ばして開いた。
『クーリング・オフ』と大きく書かれてその下には懐かしい文字が書き込まれていた。『この書類を開いた時点で恋人の契約を解除します。三日間ありがとうございました。この経験が少しは役に立てばと思っています。そして、笑顔の見せられる恋人が現れるように心から願っています。さようなら。朝比奈優作』
 真由美はその文字を一つ一つ噛み締めるように目に焼き付けると、マスターは他の二通をテーブルから取り上げて立ち去ろうとしたが
「最近、物覚えが悪くて」
 振り返って他の二通をテーブルに戻し、戻って行った。しかし、一通目の文章を読み終えた真由美には、他の二通の封筒を開けて読む勇気がなかった。
「どんな結果になったとしても、それを受け止める勇気が必要。朝比奈のことを信じているのなら。今日は俺のおごりだ」
 戻って来たマスターは伝票を取りあげて言った。
「優作・・・・・」
 笑顔を思い出して二通目の封筒から取り出した文章を読み終えると『読まなければよかった』と後悔したが、マスターの言葉通り最後まで受け止めようと三通目の文章を読むことにした。そして、その文章を読み終え、ピーベリーを手に取り口に近づけた時に、涙が零れてカップの中で小さく跳ねた。
「ありがとうございました」
 そう告げた真由美にマスターは頷いた。
「私、どうしたらいいんだろう。何が出来るんだろう」
 そう呟く足は自然と東川公園へと向かっていた。
「えっ、まさか・・・・・」
 懐かしい男性の姿が目に入り真由美は突然走り出した。そして、橋の中央に立っていた男性に抱きついた。
「真由美さん、恥ずかしいじゃないですか」
 朝比奈は驚きと嬉しさを押し殺して言った。
「しばらくこうしていたい」
 耳元で言った。
「一番厚い封筒を選んだのですね」
 納得して答えた。
「いいえ、全部読みました、二通には本当落ち込ませて頂きました」
 抱きついたまま離れないで答えた。
「マスター、約束を守ってくれなかったのですね」
 真由美の体を離して正面を向いて尋ねた。
「いえ、最近物覚えが悪くなったって」
 三通の封筒を見せる真由美は先程とは別人のようでその笑顔はとても眩しく光って見えた。
「でも、伝言は伝えたよね。一通だけだって」
 マスターの顔を思い浮かべて尋ねた。
「その約束を守っていたらこうして会えなかった。ピーベリーもおごってもらったし感謝しなきゃね」
 真由美はもう一度朝比奈に抱きついた。
「そうだね」
 朝比奈は笑顔で頷いた。
「私にとっては三度目の正直。それに、優作が書いた願い事は叶ってよかったね」
 朝比奈の横につき腕を組んだ真由美が言った。
「願いって・・・・・真由美さんも深川神社に行ったのですか」
 驚いて横を向き真由美は頷いた。
「それから、真由美さんはないでしょ。私は契約を解除するつもりはありません。いつまでも、優作に嫌われてもずっと横にいます。ずっとね」
 朝比奈の左手を両手で強く握った瞬間、二人の目の前に上下黒づくめの男が現れて銃口を向けた。
「危ない」
 そう叫ぶと真由美が朝比奈を右へと押し出すと、引金が引かれてその銃弾は真由美の肩をかすめた。
「真由美」
 倒れ込んだ真由美に声を掛けると、男を睨み返したが朝比奈に向けて二発目を撃とうとしたその時、川瀬刑事が拳銃を蹴り上げて二人の方へ飛んで来た。もう一人朝比奈達に駆け寄った松原刑事に真由美を預けると、朝比奈はその拳銃を拾い上げ川瀬刑事に押さえつけられた男の頭に当てた。
「朝比奈さん」
 拳銃自体が震えその引き金に当てた右の人差し指がに力が入らないように願って言い放った。
「撃たないで」
 朝比奈は真由美の叫ぶ言葉を受けて暫くして右手を下ろした。その時に、救急車のサイレンが近づいて来るのが感じ取れた。
「状態はどうでしょう」
 真由美が運び込まれた病院で母親の松原刑事が説明を求めていた。
「銃弾は左腕を掠めただけですので、大きな怪我ではないのですが」
 書類を差し出して答えそれを見た松原刑事は固まってしまった。
「気がついた。どう、痛いところはない」
 夜が明けて、病室で目覚めた真由美に朝比奈が声を掛けた。
「うん、ありがとう。ずっと見ててくれたんだ」
 朝比奈が握ってくれている右手を見て答えた。
「まだ契約が解除されていない。恋人ですから当然です。しかし、本当に無茶なことするよな。また命の恩人が一人増えちゃったよ。それに、もし真由美が叫んでくれなかったら、本当に引き金を引いていたかも。犯罪者にもならなくて済んだよ」
 真由美のおでこに手を当てた。
「私が叫ばなくても、優作は人を殺すことは出来ないよ。でも、こんな危険なことが起こると思って、私を遠ざけたのでしょ。特に二通目は酷かった、本当に私のことを忘れようとしていると思ってしまったでしょう。もし、最初にその文章を読んでいたら、病院に運ばれることもなかったけどね。でも、優作が怪我をしなかったのだから後悔なんてしてないよ。優作の本当の気持ちを知らずにあのまま別れていたらもっと後悔していただろうから」
 笑顔で答えた。
「自分で書いても酷いと思った。真由美と過ごした時間は短かったけれど、書き終えてどちらを渡そうかと、本当に悩んだからね」
 左の顳かみを叩きながら答えた。
「どちらかって・・・・・私が最初に見た一枚きりの書類は」
 驚いて聞き返した。
「その中間の意味で最後に書いたものだよ」
 一人納得して答えた。
「文面からして、悩んだのは理解できるけど、最後には私に選ばせたのでしょ。優作ずるい」
 頬を膨らませた。
「無事でよかった。本当に良かった。真由美、ありがとう。もしものことがあったら・・・・・」
 真面目な表情に戻って言った。
「優作、一つ聞いてもいい」
 真由美の問い掛けに何を聞かれるのかを察してゆっくり頷いた。
「病院に運ばれてるんだから、きっと私の病気のことも先生から聞いてねよね。でも、鋭い優作のことだから、もっと前から気づいていたんだよね。いつから知っていたの」
 真剣な表情で朝比奈の目を見詰めた。
「HTLV-1ヒトT細胞性白血病。それもステージ4、通常は進行性の遅いがんで、症状が出にくいと言われていて、症状が現れた時には既に手遅れ。このがんにかかるのは四十歳後半から六十歳が殆んどだけど、希に輸血などで感染することがある。真由美は高校生の時に交通事故で病院に運ばれて輸血を受けているよね。恐らくその時に感染してしまったのだろう。その上、真由美は若い為に進行性が早いからステージ4と診断された時点は余命は殆んど無い。真由美が自殺しようとした時、落とした診断表で分かったよ。僕も、あれから色々調べてみた、昨日一日掛けてね。でも、今の医療技術では、完治は不可能という答えしかなかった。本当に辛かったのに、いつも笑顔でいてくれて本当にありがとう」
 握りしめている手に力を入れた。
「そうか、優作は診断書を見たから恋人になってくれたのね・・・・・・あっ、そうか、私ががんになっていなければ恋人にはなれなかったんだから、感謝しなきゃね」
 握り返して答えた。
「まぁ、それはあったかもね。でも、前にも真由美に話したことあっただろ。僕がサバン症候群だってこと。気になることは、一瞬でも写真に撮ったように記憶出来るけど、そうでなければ全然覚えていないってこと。つまり、真由美のことを覚えていたってことは・・・・・・」
 真由美のおでこに親指を当てた。
「えー、優作は本当に私のことが気になっていたってこと・・・・・うれしいな、でもそれならどうして・・・・・・・」
 初めての夜のことを思い出していた。
「あれは、まだ恋人ではなかったからね。でも真由美の大胆な行為、本当戸惑ったよ。それに、あれは辛かったな。よく我慢したって、僕の努力を認めて欲しいね」
 頭を掻いて照れながら答えた。
「糸川先輩に渡して下さい。許してもらえないと思うけど、意地悪をしちゃったから」
 その言葉を聞いて真由美は手を離すと、首に着けていたペンダントを外して朝比奈に差し出した。
「これは真由美にプレゼントしたもの、それに真由美と過ごした時間は二人だけのもの、あの楽しかった思い出はね」
 朝比奈は真由美の胸に付け直した。
「そう、不思議なんだ。優作と過ごしている時は、生きていたい、ずっと優作の隣に居たい。死にたくない、死にたくないと・・・・・・でも、優作は最後に幸せな時間を沢山くれた。もし、あの橋から身を投じていたら、寂しく、辛く、惨めな思いだけを持って死んでいた。今は、私が優作の命を救うことが出来たし、それを誇りに思い格好良く死を受け止められる。優作、本当に、本当にありがとう」
 右手で朝比奈の手を握った。
「あっ、そうだ、真由美のお父さんは自殺ではなかった。お父さんを橋から突き落とした現場を見ていた証人を見つけたんだ。警察は自殺として処理する必要があった。いや、警察に圧力を掛けて自殺として処理させた人物がいるってことだ。この事件は絶対に事実を証明してみせるよ」
 朝比奈は真由美の言葉を聞いて話を変えると、何故か上を向いた。
「優作、ありがとう。私のがんについても、お父さんの事件についても調べてくれて。でも、もう一つだけお願いしてもいい、真由美の最後のお願い。キッスして下さい」
 そんな姿を見て祈りを込めて願い事を言葉にし、朝比奈は真由美の顔に近づいてそっと唇を合わせると、頬に涙が落ちた。
「私の、ファーストキッスが、最後のキッスになるなんて・・・・・」
 それでも嬉しそうに微笑んだ。
「御免、僕はファーストキッスじゃないんだ」
 目を瞑って頭を下げた。
「いいよ・・・・・そうだよね。いくら『変人』の優作でも、三十歳だものね」
 ゆっくりと顔を左右に振った。
「僕はセカンドキッスかな。真由美もね」
 今度は朝比奈が顔を振った。
「えっ、どういう事」
 何を言っているのか理解出来なかった。
「初めての夜、真由美の寝顔が余にも可愛くて、つい・・・・・」
 照れながら頭を掻いた。
「えっ、ずるい。一人だけイイ思いしたんだ。まだその時は恋人の契約を結んではなかったからなんて言うんでしょ。だったら、今度は先に行って待っているから、その時は抱いてくれるよね」
 優しい目で朝比奈を見た。
「真由美の気持ちを知った、今の僕なら喜んで。でも、本当に待っててくれるかな」
 目を大きく開いて言った。
「私が好きになった男性は『変人』の優作だけ、それ以外は目に入らないよ。あっ、そうだ、私のバックあるかな」
 辺を見渡して尋ねた。
「はい、これだろ、初めてのデートで使ってたバックだよね」
 小さなテーブルに置かれたバックを手渡した。
「これ、後で聞いて、私の気持ち。それと、優作が悩んで書いてくれたメッセージだから、お礼を込めて持っていたいの」
 真由美はCDを朝比奈に、一番厚い封筒を手にした。
「ありがとう、話長くなってしまって、ゆっくり体を休めてね」
 もう一度頭に手を当てると、真由美は頷きその仕草を見てから部屋を出た。
「すみませんでした。よろしくお願いします」
 部屋の外にいた松原刑事に頭を下げ、部屋を後にした朝比奈は車に乗り込むと、助手席の扉を開けて大神が乗り込んで来た。
「おいおい、二度あることは三度ある。今回は彼女のお蔭で助かったけれど、少しは落ち着いていてくれませんか」
 そう釘を刺しても言う事を聞くような朝比奈ではないことは分かっていたが、本当に心配して敢えて言葉にした。
「そのお蔭で、目撃者の証言が取れたよ。東川公園で野宿をしている砂川というおじさんだ。碧官房事務次官の死は自殺ではなく、これも青龍会の組員によって殺害されたのだろうな。殺害されたと思われる時刻の聞き込みをしたのだが、警察は殆んど捜査していなかったよ」
 砂川の声が入ったICレコーダを差し出した。
「上からの圧力が掛かったって事だな。この証拠があれば、一課も動かざるを得ないな」
 レコーダを受け取りポケットに入れた。
「そちらは任せるよ。しかし、俺を狙ってくるということは、反対に言えばデータを完全に回収していないということだよな。碧さんは何処かにバックアップデータを隠していると相手も考えていて、それを阻止すべく行動に出たということだ。碧さんが最後に泊まったホテルにはそれらしいものはなかった。ちょっと待てよ、なぜ碧さんは二人の家族にも会わないで、瀬戸まで行ったのだろう」
 左の顳かみを叩いた後、エンジンを掛けると瀬戸市に向かってアクセルを踏んだ。その途中真由美からもらったCDのことを思い出して、ショルダーバックから取り出して聴いてみることにした。そして、
『この恋が実りますように、少しだけ、少しだけそう思わせて。今私恋をしている、裸の心抱えて。バイバイ愛しの思い出と私の夢見がちな憧れ。優しくなれたよ少しね。強くもなれたみたい。どんな未来も受け止めてきたの。今まで沢山夜を超えてそして今も、この恋の行先なんて分からない、分からない。ただ想いを今私伝えに行くから、裸の心・・・・』
「裸違いだな・・・・・」
 最初の曲を聴き終えて微笑んだ。
「あっ、そう言えば、昨夜糸川美紀さんから電話が来てな、今お前のが何処にいるのか聞かれたから本当のことを話したぞ。組員に襲われたこと、恋人の碧真由美さんがお前を庇って撃たれたこともな。見舞いに行くって言ってたから、今頃会っているんじゃないのかな」
 横目で景色を眺めながら言った。
「えっ、ちょっとそれは不味いなぁ」
 色々想像して答えた。
「そりゃ、不味いよな。ちょっと調べたんだけど、二股掛けた相手は糸川さんの友達だったんだからな。お前も随分大胆なことをするなあ。それにしても、こんな『変人』を好きになる方も変わっているけどね。それも二人も」
 顔を左右に振って笑いながら言った。
「大神、お前に言われたくないな。それに色々事情があるんだよ」
 アルバムの曲を全て聴き終えた頃、瀬戸市の深川神社の駐車場に車を止めた。
「こんなところに何があるんだ」
 朝比奈の後を付いていきながら尋ねた。
「碧さんが亡くなった日、そう二週間前の水曜日に瀬戸市に来ているんだ。レスト・サカエでみそかつ定食は食べているんだけど。その為だけに瀬戸に来たとは思えない。二回も来てるのに、何で気づかなかったんだろう。ここまで来るのなら、深川神社に寄っているはずなんだ」
 大神にそう言うと、沢山吊るされている絵馬を一つ一つ裏返していったが、朝比奈と真由美が書いた絵馬は見つかったが、期待していた碧が書いたと思われる絵馬は見当たらなかった。
「あの、二週間前の水曜日ですが、この男性を見ませんでしたか」
 朝比奈は社務所に向かい、先日とは違う売り子さんにスマホの画面を見せながら声を掛けた。
「確かこの人は、スーツを着てらした方ですよね。私の担当していた日、そう水曜日でした」
 頷きながら答えた。
「覚えていらっしゃるということは、御札とか絵馬を買われたということでしょうか」
 スマホを内ポケットに戻して尋ねた。
「あっ、いえ、その方は、平日では殆んど買われる方がいらっしゃらない『お願い狛犬』を購入していたので、とくに印象に残っていたのです」
 朝比奈に寄り添う大神を気にしながら答えた。
「確か「お願い狛犬』は、陶祖である藤四郎が陶器焼成に成功した感謝の印として奉献した狛犬にちなみ制作したもの。願い事を『お願い用箋』に書き狛犬の底より封をして、一つを神社に納め、もう一つを自身のそばに置くのですよね。つまり、一対になっているのですね」
 左の顳かみを叩きながら朝比奈が尋ねた。
「そうです。一つをお預かりして奉納します」
 奥にある本殿を示して答えた。
「申し訳ないのですが、奉納された狛犬を見せて頂けませんか」
 指差し、本殿を見ながら尋ねた。
「いえ、それは無理です。願い事は狛犬の底に入れて封をしています。一応奥から順番に納めて頂きますが二週間も経っているので、その人が奉納された狛犬がどれなのか分からないと思います。それに、書かれている文章は一応個人情報ですので、神社として一般の方にはお見せすることは出来ません」
 どうして奉納された狛犬が見たいのか理解に苦しんだ。
「申し訳ありませんが、責任者の方を呼んで頂けませんか」
 大神が警察手帳を見せて言った。
「わっ、分かりました」
 立ち上がって部屋の奥へと向かい、その話の内容から大神はスマホを取り出して川瀬刑事に確認を取った。
「碧さんのポケットに狛犬が残っていたようだ」
 大神が朝比奈に告げた。
「こちらへどうぞ」
 暫くして社務所の奥から男性が現れて、二人を本殿の狛犬が沢山奉納されている場所まで案内した。
「沢山あるし、狛犬を割ることは出来ないよな」
 一応ハンカチで狛犬を一つ取り上げて観察して朝比奈に言った。
「しかし、お前の推理が正しければ、願い事の他に何かが収められていることになるよな。仕方ないな、本部の鑑識を動員して碧さんが奉納した狛犬を見つけ出し、中身を見てみることにするよ。こちらは俺に任せて、お前は修羅場になるだろう病院に向かってくれ。誤解ならスッキリと晴らさなきゃな」
 顔を傾けて言った。
「分かった、決着を付けて来るよ」
 朝比奈が大神に頭を下げて車に戻ろうとした頃、糸川美紀が真由美の病室のドアをノックしていた。
「どうぞお入り下さい」
 付き添う松原刑事が声を掛けた。
「友人の糸川美紀です。真由美さんのお見舞いに来ました」
 美紀は松原刑事に頭を下げて真由美に近寄った。
「お母さん、ちょっと二人だけにしてくれる」
 真由美の言葉に松原刑事は頷いて部屋を出た。
「まゆ、身体の方は大丈夫」
 松原刑事が座っていた椅子に腰を下ろして声を掛けた。
「掠った程度ですから大丈夫です。それより、糸川先輩ごめんなさい」
 美紀の目をじっと見詰めながら言った。
「えっ、何のことかな。私最近物覚えが悪くて・・・・・・それより、優作さんのことを救ってくれてありがとう。彼は自分の命を何とも思っていないからね。本当『変人』だからね」
 美紀の視線を避けて答えた。
「でも、そんな『変人』を二人共好きになったのですよね。糸川先輩には話しますけど、私急性白血病なのです。それも、つい最近知ったことで、現在の医療では完治不可能のステージ4でした。それを知って、私自殺しようとしたのですが、それを偶然助けてくれたのが優作さんだったのです。そして、アパートまで送ってもらい、私が強引に部屋まで招き入れて、あんな状態のところを糸川先輩に見られたって訳です。死んで行く最後に、糸川先輩の自慢していた優作さんに抱いてもらおうと思ったのです」
 目を瞑って頭を下げた。
「そうだったんだ。優作さんは何も言ってくれないから・・・・・・・」
 ふと安心するもう一人の自分がいた。
「あの時点で優作さんは、私の病気のことを知っていたそうです。だから、余命短い私を気づかって恋人になってくれたのだと思います。そうでなければ糸川先輩がいるのに、私を恋人になんてしてくれませんよ。素敵な思い出くれて、本当に感謝しています」
 朝比奈と過ごした時間が思い浮かんで涙が零れそうになった。
「何か勘違いしてない。確かに、好意を持っていて、まゆに変なおじさんがいるって話はしたけど、それは友人としての優作さんであって、恋人なんかじゃないよ。まゆのように恋人だなんて一度も言われたことは残念ながらありませんから、優作さんの恋人はまゆだけですよ」
 自分にの心にも納得させるように答えた。
「ありがとうございます・・・・先輩、お願いがあります。私の分まで優作さんを喜ばせて下さい。いつも笑顔で、幸せな気分にさせて下さい。お願いします。絶対にですよ・・・・・・」
 言葉の途中で、全身に脱力感と今まで感じたことのない痛みが襲い、息をすることさえも辛くなって来た。
「あっ、すみません」
 真由美の状態の変化を見て、扉に向かって美紀の叫びに反応して部屋の外にいた松原刑事が対応し医者が駆けつけ、慌てて人工呼吸器の手配をした。
「真由美、しっかりして・・・・・」
 手を握って松原刑事が涙を滲ませて励ました。その言葉に反応して真由美が目を開けると、朝比奈の顔があった。
「真由美、あ・い・し・て・る・よ」
 声は聞こえなかったが、そう唇が動くのを確認してゆっくり頷き目を閉じると深い眠りに就いた。
「僕の代わりに娘さんを死なせてしまいました。本当に申し訳ありませんでした」
 朝比奈はその姿をしばらく見届け、頭に焼き付けた後、松原刑事に向かって深く頭を下げた。
「朝比奈さん、あなたの責任ではありません。死の原因になったのは腕に受けた傷ではなく、急性白血病それもステージ4、先生にも色々聞きました。朝比奈さんは、がんの専門家の人に聞いて回って、真由美の治療法についても相談してくれていたのですね。それに、あんな安らかな表情、朝比奈さんのお陰です。ありがとうございました」
 今度は松原刑事が頭を下げた。
「申し訳ありませんが、貴方たちご家族の為に決着をつけなければならないことがありますので、失礼させて頂きます」
 そう言い残して一人部屋を後にした朝比奈は、溢れ出そうになる涙をジッと堪え、西区にある青龍会の事務所へと向かった。朝比奈は、駐車場にベンツが止まっているのを確認して、事務所の扉を勢いよく開けて、組員たちの鋭い視線を浴びながらゆっくりと歩いて行った。
「なんだてめぇ」
 一人の組員が近寄って凄んだ。
「すいませんが『てめえ』と言う名前ではありません。それに、あなたに名乗るつもりもないし、まぁ、名乗らなくても皆さんご存知だとは思いますけど」
 その言葉に組員が朝比奈の胸元を掴んだ。
「おゃ、危害を加えれば、罪が増えますけど、奥にいらっしゃる人はどうお考えでしょうね」
 そのままの状態で奥の部屋を見た。
「騒がしいですね。どうしたんだ」
 奥の部屋から川井組長がゆっくりと姿を現した。
「こんな状態です。一般人に暴力はいけませんね」
 組員の腕を示して答えた。
「ああ、朝比奈さんでしたか。今日はまたどんな御用でいらしたのですか」
 手を離すように指図しながら言った。
「ここの組員に何度もお世話になりまして、忙しい最中組長さんにお礼を申し上げようと、遠路はるばるやってまいりました。銃刀法違反、殺人未遂、暴行など御土産を色々ありがとうございました。でも、三度もミスっちゃ不味いですよね」
 右指を三本立てて言い放った。
「余程あなたに恨みを持っていたのでしょう。こちらも困っているところです」
 ソファに腰を降ろして答えた。
「所詮、トカゲの尻尾切り、知らぬ存ぜぬで済みますかね。三井組長には凄い人がバックにいるから大丈夫なんて思っていらっしゃるでしょうね。でもね、人の凄さは肩書きでは測れないもの、あなたが頼ろうとしている人物も多分肩書きを外せば只の爺。くそったれです」
 静かに語ってはいたが、怒りが目に現れていた。
「言いたいことはよく分かりました。ご忠告も善意として受け取っておくことにしますが、今後は、家にじっとしていらしてなるべく外には出られない方がいいと思います。特に夜道は気お付けて下さい」
 睨み返して言い放った。
「あっ、そうだ。お友達からは聞かされていないと思いますが、僕の友人にも警視庁のエリート警部がいましてね。それと、父親は最高検察庁次席検事でして、二人共売られた喧嘩は喜んで買う方で、特に『悪』に対しては最後まできっちりと始末をつけなければ済まない人間ですので、そちらこそ気を付けた方がいいと思いますよ」
 負けない眼力を持って言い返した。
「朝比奈さん、あなたは知っていそうで、肝心なことはご存知ないですね。そんな小さな力ではどうしようも出来ない権力もあるということをね」
 そう言って薄笑いを浮かべた。
「そうでしょうか。東京・大阪・名古屋の検察庁には特別捜査部いわゆる特捜部が存在しているんですよ。以前でも総理大臣が逮捕されたし、最近では法務大臣などの国会議員が逮捕されていますよ。両議院の国会議員は法律の定める場合を除いては、国会の会期中においては逮捕されないという『不逮捕特権』はありますが、それは国会が開かれている期間のみです。残念ながら今は臨時国会も開かれていませんので適用外、それに解散総選挙でもなれば選挙になります、悪事が表沙汰になればいくら政治に無関心な国民であっても、逮捕者を選ぶことはないですよ。まぁ、逮捕されれば立候補も出来ませんけどね。そちらこそトカゲの尻尾切りにならないように気をつけて下さい。今は就職難ですからね、そちらこそ気を付けて下さい」
 朝比奈は部屋にいた他の組員全員にガンを飛ばして事務所を出ると、スマホを手に取り大神へ連絡を取った。
「班長、狛犬の中からマイクロSDカード64GBを発見出来ました」
 素焼きの狛犬とデータを示して駆け寄った。
「朝比奈、お前の想像が当たった。後はこちらに任せてくれるか。では、予定通りに頼むよ」
 大神は川瀬刑事に頷いた。
『さよなら、さよなら、さよなら、もうすぐ外は白い冬、愛したのは確かに君だけ、そのままの君だけ・・・・・・』
 車の中で流れて来た曲の歌詞を噛み締めながら聞くと『真由美』そう呟き、スマホを手にして宝くじにアクセスしてロトの当選番号を確認した。
「二・三・八・十一・・・・えっ、まさか・・・・最後は二十・・・・・真由美の年齢にしとけばよかったのか・・・・・でもボーナスナンバーは二十八。真由美ありがとう」
 スマホを持つ手が震えた。
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