天国の指名手配犯

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第一章 空の世界

第九話 新しい作戦

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「ただいま…」






母親のユリに続き、
父親のタケもぐったりしながら帰ってきた。




ユリとは職種が違うが、
タケも例の事件に関わる仕事をしていた。









「どうしたのお父さん」






「ああ…リナ…
例の事件がまた厄介でな、
今回お父さんはあの作戦に関わることになったんだが、
立候補者が一人もいないんだよ…」







年々減り続けていた立候補者、
今年はついに誰も来なくなってしまったらしい。




リナも、後ろで聞いていたリリも、
内心そうだろうなと思っていた、

いつかこういう日が来るだろうと。






「でもさ、仕方ないよ、
ずっと失敗してるんだもん、
誰だってやりたくないって思うよ、ねえリリ」


「そうだよ、時間とお金の無駄だしね」





作戦に立候補するには、それなりにお金がかかる、
作戦で人間界に降りてる間時が止まるわけでもなく、
空の世界では時間が過ぎていく、その間家にも友人にも会えない。








「実はな、今回の作戦、ちょっと変わったんだよ」




呆れた顔をしているリナとリリに、タケはそう言った。




「まだテレビや新聞では公表されてないけど、
今回は例の二人の実の子供としてスパイを送り込むことになったんだ、
今までは赤の他人だったから、人間界で二人に接触する方法を考えるところから始まるけど、
今回は最初から接触している状態から始められるんだ」




リナとリリはギョッとした、

そんなことができるなら、なんで最初からそうしなかったのか、

身内として送り込んだ方が、監視はしやすいに決まっている。




「実の子供⁉そんなの超簡単そうじゃん!
なんで立候補者いないの⁉そもそも、なんで最初からそうしなかったのよ!」



「立候補者がいないのは…前例が無くてみんな怖いからだろうな…、
今まで身内として送り込めなかったのは、作戦の参加者の安全を優先していたからなんだ、
指名手配の二人と親子の関係になって、深く接触することでどんなリスクがあるか分からない、
危害を加えられるかもしれないし、道連れにさせる可能性もあるんだ」






道連れ……



あの二人と一緒になって
自ら死を選んでしまう可能性がある、

そうなると、この世界では犯罪者になってしまう、



もしくは、二人と一緒に死を選び、
二人と一緒に無許可で行き来をする、共犯者にされてしまうかもしれない。





犯罪者になってしまうかもしれない危険な道を
自ら選ぶ人なんていないのは、当たり前なのかもしれない。











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