天国の指名手配犯

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第二章 人間界

第二十一話 逃げる決意

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状況は何も変わらぬまま、
里菜は高校3年生になった、



菊江と蓮司が必死に働いても
収入は少ないままで、

里菜は大学進学を諦めることになった。








里菜は勉強が好きだった、

大学へ進んで勉強したいとずっと思ってた、


でももうその夢も叶わない、

そんな事をしている場合ではなくなった、


人間を楽しんでいる余裕はない、
里菜は空の世界からのスパイとして、
自分の仕事をこなさなければならない。







「まさかこんなことになるなんて………」





少しでも節約しようと、
破けたソックスを縫いながら里菜は呟いた、




あんなに平和で順調な毎日だったのに

この数年間でガラッと変わってしまった…


これからどうなるのだろう、
自分にあの二人を止めることができるだろうか…、



これからの事を考えると不安に押し潰されそうになる、



なんかもう…やだな…、

疲れてきちゃった。








「…!?…いたっ……!」






その時、首筋に鋭い痛みが走った事に気がついた、


ぼんやりとしていた意識が一気に引き戻された、




更に里菜は衝撃を受けた。





全く自分で考えて動いていない、
全くの無意識、




里菜は鋭い糸切りハサミを、
自分で自分の首に突き刺していた。





傷は浅く、血は少ししか出なかった。




私は何をしているのだろう、
刺して何をしようとした?
死のうとした?
そんなまさか。



信じられない、

でも刃先についてる血が全てを物語っている。







"道連れにさせる可能性もある"






里菜はタケの言葉を思い出した、


このままでは、
自分も二人と一緒に死を選んでしまう、




二人から何か特別な力でも放たれているのだろうか、


二人と一緒にいると、

どんどん頭が死へと死へと引っ張っていく、




踏み切りの真ん中で無意識に立ち止まってしまうこともあった、





このままではまずい、






里菜は高校卒業後、

就職と共に家を出て、

一人暮らしをすることに決めた。





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