地球人のふり

はに

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第8章 明けない夜

38話

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「…ここから飛び降りる気ですか?」









汗だくで息を切らす依人、




式場から去っていくキヨを見て
追い掛けてきてくれたんだな、

キヨは思った。









「…依人君…あ…あの…」





依人は、キヨの腕を掴み
自分の方へ引き寄せた。





「飛び降りたって何にも解決しませんよ、
せっかく罪が1つ軽くなったのに、
あなたはまた自分で罪を増やそうとしてるんですよ」






……罪?



罪がなんだって…?



キヨは依人が言っていることが全く理解できなかった。





ポカンと依人を見つめるキヨ、




依人は暫く考えてため息をついた。








「俺の事も思い出せてないのか…、
思ったより記憶が戻ってないみたいですね」







"記憶"






この言葉を聞いて、
キヨはピンときた。






…もしかして…

もしかすると…、







依人はキヨの仲間なのではないか…?






同じくサンコ星からやって来た、





サンコ星人なのではないか…?








確証はなかったが、
キヨはそう思えて仕方がなかった。










「…あなたは誰……?
私の知ってる人なの…?」






「………俺は……
使用人の、ヨルです、
忘れてしまいましたか?」











ヨル……………








…使用人…………ヨル………









そうだ……


私の家には使用人が何人かいて…


ヨルとはよく一緒に能力獲得の訓練をして…、







旅立つその日も一緒にいて…
でも直前で………



…そうだ…突然消えて……。









「……あの時…どこへ行ってたの…?
私が旅立つ時……どこへ行ってたの…?
私…1人で…心細くて……」




「………すみません……
でも、やっと思い出してくれたんですね、
これなら他の記憶もすぐ戻るでしょう、
お嬢様、これをどうぞ」





ヨルはキヨの腕から手を離し、
鞄の中からスケッチブックを取り出して

キヨに渡した。







「俺はね、絵が得意なんです、
昔に見た景色も、頭の中で鮮明に思い出せて、それをまた鮮明に描き出す事ができます、
そのスケッチブックには、サンコ星の絵がかかれています、
記憶を全て取り戻すきっかけになるかは分かりませんが……」








キヨは、スケッチブックを開いた。







見覚えのある景色が、たくさん描かれている、




人物の絵もたくさんあった、




キヨの両親、兄弟、友達、使用人の人達…、





ページをめくるごとに

キヨの記憶は鮮明になっていく。







そうだ……





そうだ私は…






自分の力を探しに来たんだ……!











「……思い出した……
私は…罪を2つ犯して…地球へ送られて…
自分の力を見つけたら帰れるって……
…あ…あれ…?でもさっきなんか…
罪が1つ軽くなった…とか……」

「…その事について、謝らなければならないことがあります…」






そう言ってヨルは
その場から一歩下がり、


突然キヨの目の前で土下座をした。







「申し訳ありません、俺が余計な事をしたせいで、あなたに濡れ衣を着せることになってしまいました。隠蔽罪に関しては、
あなたは何も悪くない、
罪を犯したのは自分です。
あなたに力がない事をどうにか誤魔化そうと、隠そうとしたせいで
手紙の提出が遅れてしまった、
あなたは何も悪くない、申し訳ありません」



ヨルは頭を下げたまま、

キヨに全てを話した。





「…お嬢様が旅立つ直前に、
俺は急いで自首しに行きました、
お嬢様の罪が1つ軽くなれば、地球行きは
免れるかと思って……
でも間に合わなかった……」







キヨはここまで聞いても
不思議と怒りの感情は抱かなかった。








恐らく隠蔽罪が無くても


キヨの地球行きは変わらなかっただろうし、



ヨルは自分のために
なんとか誤魔化そうとしてくれていた、



それに、
罪が1つ軽くなったということは

なにか今の状況が良い方向に変わるかもしれない、

キヨの人生がゲームだとして、
今が鬼レベルだとしたら


普通レベル位に下がるかもしれない。




そういう期待があったからだ。










「……じゃあ私は…
私はどうなるの…?
罪が1つ軽くなって、何か変わるの?
人生がちょっと簡単になるとか?
罰のレベルが軽くなるとか?」

「…残念ながら、罰のレベルはもう変えられません、
ただ、取締局からの謝罪の気持ちとして、
あなたにはお助けアイテムの様な物が送られます」

「お助けアイテム?」






罪のレベルは変わらない、と聞いて
一瞬キヨは肩を落としたが、
お助けアイテム、と聞いて
少し目を輝かせた。






「お助けアイテムって、何!?
どんな物なの?」




「俺です」




「…………え?」






「俺がお助けアイテムです、
お嬢様が地球へ旅立った後、
俺はサポート役としてあなたを追いかけました、
あなたのサポートをするために地球に送られたのが俺への罰で、
あなたを再びサンコ星へ送り届ければ、
俺の罪も許されます」







お助けアイテムが……



ヨル……?









せっかく追い掛けてきてくれたヨルには
非常に申し訳ないが、

キヨは心底ガッカリした、





ヨルもサンコ星人ならば、

地球の色々な文化に疲れて混乱しているはず、





混乱しているキヨの元へ
混乱しているヨルを送ったところで

何も変わらないと思えた。























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