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風薫る 5
しおりを挟む「美和。……。みーわー!」
目の前に香織の整った顔が出てきた。
「うわっ…!って、香織…?」
美和はいつもより早く予備校に到着していた。
あの道場に長居するより、講義室の方がよっぽど良い。
「お疲れ?」
「まあね…。今日もノーモアメンヘラ…。」
香織が気の毒そうに苦笑いをする。
「ほんとすごいよね。」
「何がよ。メンヘラのパワー?」
「ううん、この状況にして部活辞めない美和サンが。」
「あいつらに私の人生左右されたくないもん。」
「気持ちはわかるけど。ただ疲れるよね?」
「疲れるよ。でもあと少しだし。」
「やっと引退か。ゴールは近いぞ美和。」
部活は大変だった。
講義はいつも通り。
ラーメンは今日も美味しい。
「終わり良ければ全て良しってね…。」
香織と別れ、いつもの地下鉄のホーム。
人はまばらで、つい声に出してしまっていた…。
「矢崎さん?」
聞き慣れた低音。
「一ノ瀬君!ちょ、真後ろ…。気配を感じなかったよ?」
「うん、狙った。」
いたずらが成功した小学生男子のような笑顔だ。
「狙ったって。違う人だったらどうすんのよ?」
抗議しつつも美和はつい笑ってしまう。
「俺、自信あったから。」
「何そのドヤ顔。」
時間はすぐに過ぎてしまう。
今日もまた、駅のホームに地下鉄が滑り込んできた。
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