未来で処刑さけれるはずだった令嬢は、氷の王子を選びました~ 巻き戻り令嬢の婚約から始まる逆転人生〜

あんこ

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閑話② リヒトside

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……妙だ。

報告を受けた時、最初に浮かんだ感想はそれだった。
誘拐事件。相手は反第一王子派閥。対象は六歳のーー俺の婚約者。

にもかかわらず被害なし。
護衛の到着前にすでに制圧完了。

「……制圧?」

思わず低く聞き返した。

ノアが静かに頷く。

「はい。敵は全員生存。拘束状態で発見されました」
「誰がやった」
「リズ様です」

一瞬、思考が止まる。
魔力暴走でも奇跡でもない。話を聞く限り、手順は極めて冷静で合理的だった。

・わざと捕まる
・相手の目的を聞き出す
・拘束が甘いと判断
・最小限の魔法で制圧
・証拠と人員を確保
・連絡を入れて待機

……軍の作戦か?

いや違う。これは「戦わない者」のやり方だ。

「派手な魔法は?」
「使っていません」
「怪我人は」
「いません」

ノアは一拍置いて付け加えた。
「……恐らく、最初からそのつもりだったかと」

リヒトは椅子に深く背を預け、目を閉じた。

魔力量ではない。才能でもない。これは判断力だ。
自分が六歳の頃、ここまで「自分を駒として使う覚悟」を持てただろうか。

答えは、否。

「……なるほど」

唇の端がわずかに緩む。

「彼女は、強いな」

剣を振るわず、敵を壊さず、それでも主導権を手放さない。それは、王の隣に立つ者に必要な資質だ。

「ノア」
「はい」
「今後、彼女の判断を最優先で尊重しろ」
「……よろしいのですか」
「ああ」

むしろ守る側だと思っていたことをこちらが改めるべきだ。

――本当に、面白い婚約者を選んでしまった。



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