二兎に追われる者、一兎に絞るのは難しい。

イカタコ

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ツンデレクラスメイトを駅までお迎え

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 「今日、アンタの家に泊めてよ」  
 モテない男子が、女子から突然の電話。
 突然こんなこと言われたら、驚くに決まってる。
 なんなら、いろんな展開を浮かべる。
 がしかし、俺は電話の相手である女子とは、仲が良いわけではない。
 「なら何故こんな電話をしてきたのか」と聞かれたら、分かるわけがない。
 「急にどうした?」
 まずは理由を聞く。それしかない。
 「話はあとで。とりあえず、水戶駅まで迎え来てよ」
 「それ、俺んち泊まる前提じゃね?」
 「いいから。迎え来い」
 なぜ命令されてるのだろうか不思議でならないが、どうせ暇だし面白そうなので、駅まで迎えに行くことにした。

    ◇    ◇    ◇

 駅に着くと、改札口で見覚えのある女子が気怠そうにスマホをいじっているのが目に入った。
 肩出しのTシャツに短いスカートなんか履いちゃって...不良か不審者にでも絡まれそうな恰好してるな...。
 それに加えてバッチリ化粧していることによって、ナンパされるのを待ってるかのような容姿だった。
 「今見、来たぞ」
 そんな女子に近づき声をかけると、明らかに不機嫌そうな表情を向けられた。
 「どれだけ待ったと思ってるわけ?」

 そう言って彼女は、俺にカバンをぶつけてきた。
 「えぇ...突然"泊めてくれ"とか電話してきておいてそりゃないだろ...」
 むしろ、迎えに来た俺を褒めてくれ...。
 「女の子を夜遅くに外で待たせるとか、男としてありえないでしょ!」
 まさかの、俺が悪くなってる...。
 しかし、逆ギレされながらも、彼女が無事でよかったと安心する。
 「はいはい、俺が悪かったですよー」
 なにも悪くないはずなのだが、俺は詫びを入れた。何も悪くないのに。
 「で、石口の家ってどこなの?」
 「いまから案内するよ」
 正直なところ、この子に合わせて歩いて帰る気はないので、自転車で帰りたい。
 「後ろ、乗ってく?」
 俺は自転車に跨り、冗談交じりに言ってみた。
 「はあ? 付き合ってもないのに二人乗りなんてするわけないじゃん。でも、疲れたから今日は特別ね」
 そう言うと、彼女は前カゴにカバンを投げ込み、荷台に跨った。
 「え? マジで?」
 自分から言い出しておいて、思わず彼女の言動に驚いた。
 「そっちが言い出したんじゃん」
 「まあ、そうですけども...」
 そうですけども、まさか女子とニケツする日が来るとはね!
 こうして人生初、女子を後ろに乗せて自転車を走らせ始めた。

 てなわけで、女子を後ろに乗せて走り始めたものの...人生初のニケツは難しくて、上手くバランスがとれなかった。
 「ちょっと、自転車こぐのヘタすぎ」
 やっぱり、後ろに乗る女子からクレームが来るわけで...。
 「仕方ないだろ! ニケツなんかやったことないんだから...そんなことより、危ないからちゃんと掴まっておけよー」
 彼女は、振り落とされないように荷台を掴んでいた。
 「なんでアンタなんかに掴まらなきゃいけないのよ、まったく…」
 なにやらブツブツ言いながら、彼女は俺の腰に手を回し、ギュッとしがみついた。
 「俺に掴まれ」とはひとことも言ってないのだが、都合よく勘違いしてくれたので訂正しないでおこう!
 それにしても、女子とニケツとか、リア充みたいなことしてるなあ。
 腰に回された手や、背中に感じる女子の胸の感触にドキドキしながら、無事に家に到着した。

 「ほれ、着いたぞ」
 こうしてなんとか、後ろに乗せた女子を振り落とすことなく、無事にアパートまで帰ってきた。
 「今更だけど...石口って一人暮らしだよね?」
 彼女は荷台から降りると、心配そうに聞いてきた。
 家に着いてから確認するのは遅くね?
 「そうだけど。ていうか、知ってたから俺んちに泊まろうとしたんじゃないの?」
 「それはそうだけど。もし勘違いしてて実家暮らしだったら、どうしようかと思っちゃった」
 「親と住んでたら、彼女でもない女子泊めたりしないよ」
 「まあ、アンタの彼女だと思われたくないけどね」
 「それ言わなくていいから!」
 なぜ俺は、もしもの話で傷つけられているのだろうか...つら。
 「てか、今更だけど他に泊まるとこなかったの? 今日一緒に遊んでた友達とか」
 「友達の家に泊まるなんて迷惑じゃん。それに、石口が住んでるとこ水戶駅から近いって聞いたことあったから、明日帰るときに楽だなって思って」
 俺んちを金のかからないビジネスホテル程度にしか考えてないな、こいつは…。
 「いやいや、俺に対して迷惑だと思わなかったのかよ…」
 「べつに、アンタは一人暮らしだし、彼女いないから問題ないでしょ?」
 「勝手に決めつけてもらっては困る」
 「えっ...? じゃあ、いるの?」
 彼女は驚いた様子で聞いてきた。
 「いないけど...」
 分かりきっていることを聞かないでくれ…答えるこっちが悲しくなる。
 「だったら問題ないじゃん!」
 俺の返答を聞くなり、コロッと表情を変えて笑顔を向けてきた。
 とことん俺に対して失礼だな!
 「はやく部屋に案内してよー。疲れてんだからー」
 「わかったわかった」
 それにしても...彼女でもない女子を泊めるとか、かなりレベル高いことしてんな。
 彼女いたこともないのに。
 はたして、これからは俺たちはどうなってしまうのやら...つづく。
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