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第3章:妖狐の嫁
38.和解
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「みんなが正しいって言ってることを否定するのって、物凄く勇気のいることですよね。俺には出来なかった」
間違ってる。分かってても何も言えなかった。ハブられるのが怖くて。だから、俺は逃げた。御手洗を見捨てて逃げたんだ。
だけど、そんな俺にも守るべきものが出来た。逃げるなんて選択肢はもうない。守るために頑張る。ただそれだけだ。
「俺にも何か手伝わせてください」
「…………」
「今の俺には妖力を分けることしか出来ません。けど、少しずつでも出来ることを増やして、必ずお役に立ってみせます。だから、もう一度……平和を目指して、頑張っていただけませんでしょうか?」
「必ず役に立つ、か」
「はっ、はい!」
「その覚悟、口先だけではないな?」
「もちろんです!」
「ならば転生しろ。僕らと同じ妖狐にな」
「えっ!? そっ、そんなことが?」
「可能だ。兄上ならば、な」
「無理だよ――」
「無駄な足掻きは止してください。僕はもう貴方のすべてを知っているのですから」
「……っ」
俺が妖狐に? だとしたら俺は――。
「みんなとずっと一緒にいられるってことですか!?」
視界がぱーっと開けていくのを感じた。どうしよう。すっげえ嬉しい!!
「「「優太!!!」」」
「やったー!! ずっと一緒ニャ♪」
「待って」
止めに入ったのはリカさんだった。リカさんの顔色は、治療の甲斐あってか大分良くなりつつある。でも、その表情は柄にもなく神妙で。
「想像してみて。本来であれば100年足らずで終えられていたはずの生涯を、1000年、5000年と続けていくことになるんだよ?」
「それは、まぁ……」
「私の方が先に逝く、なんてこともあるかもしれない」
「えっ?」
「妖狐は不死身じゃない。病、怪我、呪術、毒なんかでも命を落とす」
「それでも、人間のままでいるよりは長く一緒にいられるかもしれない」
「優太……」
「へへっ、不純ですかね?」
今にも泣き出しそうな顔。ああ、もう。リカさんは優し過ぎるんですよ。肝心な時にはいっつも自制して。
「っ! 常盤様、まだ起き上がられては」
「大丈夫ですよ。もう済みましたから」
「そっ、そうか。流石だ――」
「優太!!」
飛びついてきた。それと同時に俺の肩のあたりが濡れていく。泣いてるんだ。
「大丈夫ですよ。時間が許す限りずっと傍にいますから」
「うん。うんっ、……ありがとう」
俺はそっとリカさんを抱き締めた。胸の奥がきゅ~~っとする。愛おしい。心からそう思った。
「人間」
「はっ、はい!」
薫さんだ。返事をすると、すっと体が軽くなった。リカさんがハグを解いたんだ(意外)。
「兄上の手綱をしっかりと握っておけ。それが当面の間のお前の役割だ」
「しょっ、承知しました! あっ! じゃあ、その……平和のために頑張っていただけるってことでいいんですかね?」
「ああ」
っ!!! やった!!!!
「うおお! 椿も何か手伝うニャ!」
「きゅきゅきゅっ!」
「畑仕事なら俺等に任せな!!!」
協力の声が続々と。やる気も満ち満ちている。薫さんはそんなみんなを見て、ふっと表情を和らげた。嬉しいんだろうな、きっと。
「私は独りだった。だから、失敗したんだね」
「貴方の場合、計画性がなさ過ぎるんですよ」
「う゛!」
「ぐっ……!」
思わず吹き出しそうになった。流石は弟君。リカさんのことをよ~く理解していらっしゃる。
「まず前提から間違っている。まともでない奴らに正攻法で挑むなど」
「頑張れば伝わるかなって」
「話になりませんね」
「すみませ――」
「これからは僕が導きます。ですから、素直に従ってください」
たぶん一番言いたかったのはこれだな。
「薫……! あっ、ありがとう」
「今度こそきちんと最後まで、お役目を全ういただきますからね」
「うっ、うん!」
手を組んだんだ。リカさんと薫さんが。雨司を、ひいてはこの世界をより良い方向に導くために。
「ん~? じゃあ、何かい? 六花様が王太子様になって、ゆくゆくは王様になるのかしらん?」
「こんな短慮な力だけの妖狐に、王が務まるわけがないだろう」
「ヒェッ! きっついの~」
「いくらなんでも言い過ぎニャ」
「兄上には僕の補佐 兼 相談役を務めていただきます」
「っ! へへっ、相談役か~♪」
「……意味、ちゃんと分かってますか?」
同感だ。リカさんからはイマイチ緊張感が伝わってこない。大丈夫かな? いや、仮にも元王太子だし問題ないか?
「何はともあれ、あの兄弟和解したみたいじゃの~」
「案外、その気はなかったんじゃねーか?」
「滅亡云々は茶番だったって言うのかい?」
「いいや。本気だった」
「「「えっ?」」」
「兄上やお前達の出方によっては、滅亡で手を打つつもりでいた」
さらっと答えた。何でもないことみたいに。一方のみんなは顔面蒼白だ。そりゃそうだよな。自分達の選択1つで、国が1つ滅んでいたかもしれないんだから。
「本当に……どっちでも良かったんだ」
薫さんはそう言って自嘲気味に嗤った。
大五郎さんは言っていた。薫さんは復讐に囚われても仕方のないような境遇にあったんだって。一体どれだけの苦しみや悲しみを乗り越えてきたんだろう。想像するだけで胸が痛んだ。
「よくぞ御決断くださいました」
そんな中、大五郎さんが深々と頭を下げた。髭まみれの顔に満面の笑みを浮かべてる。よく見ると、目尻に薄っすらと涙を浮かべていた(雷オヤジの目にも涙)。
「…………」
薫さんの表情は俺の方からは見て取れない。どんな顔をしてるんだろ。やっぱ照れてるのかな。薫さんにとって大五郎さんは数少ない『理解者』で。たぶん、お兄ちゃんとか、お父さんとか、それぐらいの立ち位置の人なんだろうから(妄想)。
「貴様には引き続き、兄上の側近ならびに目付け役の任を命じる」
「はっ!」
「ちょっ――あだっ!?」
薫さんがリカさんのデコを叩いた。それこそ歌留多を取るような鮮やかな手つきで。
「んん゛!」
寸でのところで耐えた。薫さんの容赦のなさが、リカさんのクソ雑魚ぶりが俺にはツボみたいだ。
「わ゛がぁ~~っ!!!」
「「「!!?」」」
不意に定道さんが泣き出した。まさにギャン泣き。おまけに鼻水まで垂らして。『主演俳優級の美貌』が台無しだ。ん? つーか、何で???
「お定殿は案じておられたのですよ。大五郎殿に側近の座を脅かされるのではないかと」
おまけに地雷も踏まれて殺意爆発と。噂に聞いた血の気の多い国民性は、ガチなのかもしれない。……気を付けよ。
「薫のばーか」
「何の話です、か……!」
不意に薫さんの体が輝き出した。あまりの眩しさに堪らず目を瞑る。何だ? 腕に何かが当たった。あったかくて、もふもふで。
「ふぉ?」
俺は反射的に手を開いて、そのもふもふを握った。
間違ってる。分かってても何も言えなかった。ハブられるのが怖くて。だから、俺は逃げた。御手洗を見捨てて逃げたんだ。
だけど、そんな俺にも守るべきものが出来た。逃げるなんて選択肢はもうない。守るために頑張る。ただそれだけだ。
「俺にも何か手伝わせてください」
「…………」
「今の俺には妖力を分けることしか出来ません。けど、少しずつでも出来ることを増やして、必ずお役に立ってみせます。だから、もう一度……平和を目指して、頑張っていただけませんでしょうか?」
「必ず役に立つ、か」
「はっ、はい!」
「その覚悟、口先だけではないな?」
「もちろんです!」
「ならば転生しろ。僕らと同じ妖狐にな」
「えっ!? そっ、そんなことが?」
「可能だ。兄上ならば、な」
「無理だよ――」
「無駄な足掻きは止してください。僕はもう貴方のすべてを知っているのですから」
「……っ」
俺が妖狐に? だとしたら俺は――。
「みんなとずっと一緒にいられるってことですか!?」
視界がぱーっと開けていくのを感じた。どうしよう。すっげえ嬉しい!!
「「「優太!!!」」」
「やったー!! ずっと一緒ニャ♪」
「待って」
止めに入ったのはリカさんだった。リカさんの顔色は、治療の甲斐あってか大分良くなりつつある。でも、その表情は柄にもなく神妙で。
「想像してみて。本来であれば100年足らずで終えられていたはずの生涯を、1000年、5000年と続けていくことになるんだよ?」
「それは、まぁ……」
「私の方が先に逝く、なんてこともあるかもしれない」
「えっ?」
「妖狐は不死身じゃない。病、怪我、呪術、毒なんかでも命を落とす」
「それでも、人間のままでいるよりは長く一緒にいられるかもしれない」
「優太……」
「へへっ、不純ですかね?」
今にも泣き出しそうな顔。ああ、もう。リカさんは優し過ぎるんですよ。肝心な時にはいっつも自制して。
「っ! 常盤様、まだ起き上がられては」
「大丈夫ですよ。もう済みましたから」
「そっ、そうか。流石だ――」
「優太!!」
飛びついてきた。それと同時に俺の肩のあたりが濡れていく。泣いてるんだ。
「大丈夫ですよ。時間が許す限りずっと傍にいますから」
「うん。うんっ、……ありがとう」
俺はそっとリカさんを抱き締めた。胸の奥がきゅ~~っとする。愛おしい。心からそう思った。
「人間」
「はっ、はい!」
薫さんだ。返事をすると、すっと体が軽くなった。リカさんがハグを解いたんだ(意外)。
「兄上の手綱をしっかりと握っておけ。それが当面の間のお前の役割だ」
「しょっ、承知しました! あっ! じゃあ、その……平和のために頑張っていただけるってことでいいんですかね?」
「ああ」
っ!!! やった!!!!
「うおお! 椿も何か手伝うニャ!」
「きゅきゅきゅっ!」
「畑仕事なら俺等に任せな!!!」
協力の声が続々と。やる気も満ち満ちている。薫さんはそんなみんなを見て、ふっと表情を和らげた。嬉しいんだろうな、きっと。
「私は独りだった。だから、失敗したんだね」
「貴方の場合、計画性がなさ過ぎるんですよ」
「う゛!」
「ぐっ……!」
思わず吹き出しそうになった。流石は弟君。リカさんのことをよ~く理解していらっしゃる。
「まず前提から間違っている。まともでない奴らに正攻法で挑むなど」
「頑張れば伝わるかなって」
「話になりませんね」
「すみませ――」
「これからは僕が導きます。ですから、素直に従ってください」
たぶん一番言いたかったのはこれだな。
「薫……! あっ、ありがとう」
「今度こそきちんと最後まで、お役目を全ういただきますからね」
「うっ、うん!」
手を組んだんだ。リカさんと薫さんが。雨司を、ひいてはこの世界をより良い方向に導くために。
「ん~? じゃあ、何かい? 六花様が王太子様になって、ゆくゆくは王様になるのかしらん?」
「こんな短慮な力だけの妖狐に、王が務まるわけがないだろう」
「ヒェッ! きっついの~」
「いくらなんでも言い過ぎニャ」
「兄上には僕の補佐 兼 相談役を務めていただきます」
「っ! へへっ、相談役か~♪」
「……意味、ちゃんと分かってますか?」
同感だ。リカさんからはイマイチ緊張感が伝わってこない。大丈夫かな? いや、仮にも元王太子だし問題ないか?
「何はともあれ、あの兄弟和解したみたいじゃの~」
「案外、その気はなかったんじゃねーか?」
「滅亡云々は茶番だったって言うのかい?」
「いいや。本気だった」
「「「えっ?」」」
「兄上やお前達の出方によっては、滅亡で手を打つつもりでいた」
さらっと答えた。何でもないことみたいに。一方のみんなは顔面蒼白だ。そりゃそうだよな。自分達の選択1つで、国が1つ滅んでいたかもしれないんだから。
「本当に……どっちでも良かったんだ」
薫さんはそう言って自嘲気味に嗤った。
大五郎さんは言っていた。薫さんは復讐に囚われても仕方のないような境遇にあったんだって。一体どれだけの苦しみや悲しみを乗り越えてきたんだろう。想像するだけで胸が痛んだ。
「よくぞ御決断くださいました」
そんな中、大五郎さんが深々と頭を下げた。髭まみれの顔に満面の笑みを浮かべてる。よく見ると、目尻に薄っすらと涙を浮かべていた(雷オヤジの目にも涙)。
「…………」
薫さんの表情は俺の方からは見て取れない。どんな顔をしてるんだろ。やっぱ照れてるのかな。薫さんにとって大五郎さんは数少ない『理解者』で。たぶん、お兄ちゃんとか、お父さんとか、それぐらいの立ち位置の人なんだろうから(妄想)。
「貴様には引き続き、兄上の側近ならびに目付け役の任を命じる」
「はっ!」
「ちょっ――あだっ!?」
薫さんがリカさんのデコを叩いた。それこそ歌留多を取るような鮮やかな手つきで。
「んん゛!」
寸でのところで耐えた。薫さんの容赦のなさが、リカさんのクソ雑魚ぶりが俺にはツボみたいだ。
「わ゛がぁ~~っ!!!」
「「「!!?」」」
不意に定道さんが泣き出した。まさにギャン泣き。おまけに鼻水まで垂らして。『主演俳優級の美貌』が台無しだ。ん? つーか、何で???
「お定殿は案じておられたのですよ。大五郎殿に側近の座を脅かされるのではないかと」
おまけに地雷も踏まれて殺意爆発と。噂に聞いた血の気の多い国民性は、ガチなのかもしれない。……気を付けよ。
「薫のばーか」
「何の話です、か……!」
不意に薫さんの体が輝き出した。あまりの眩しさに堪らず目を瞑る。何だ? 腕に何かが当たった。あったかくて、もふもふで。
「ふぉ?」
俺は反射的に手を開いて、そのもふもふを握った。
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