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第四章 王都観光
第十七話 ニナ、謁見のことを考える
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「まさか剣神と神級魔法師だとは思わなかったぜ……」
落ち着きを取り戻したドルトンはそう呟いた。
「錬金術師も付与もレベルを上げる作業を延々とやり続けただけで、知識経験はそこまで豊富ではないんだ。神級魔法師として持っている高い魔力操作の技量が、あのレベルの錬金術と付与を可能にしてるんだよ」
スキルレベルが10であることをやんわりと隠しつつ、錬金術と付与が上手く使える理由を俺は良い感じにドルトンに説明した。
「確かに、神級称号はそれに該当するスキルのレベルよりも、知識や経験が求められるからな。スキルレベルが高くても、ちゃんと使えなきゃ意味がねぇってことだ」
その言葉、何か俺にグサグサと刺さるな。
まともにレベル上げたものも多いが、一部RTA方式でレベル上げしたものもある。
でもまあ……仕方ないんだよ。
レベル10が並ぶ中で、レベル10でないものがあったら、凄い気になっちゃうんだよ。
因みに、今は全てのスキル、魔法をレベルMAXにしようか検討している。だが、そこまで一気に上げるのは流石の俺でもキツいということで、まずは有用なものを1、2つレベルMAXにしようかと思っている。
「で、え~と……随分話が逸れちまったな。じゃ、話を戻すか。俺は、これkらお前さんの剣の鍛冶作業に入る。素材が素材だから、多分夜までかかる。それまで、お前さんはこの紙に書いてある6種類の合金を生成してくれ」
「ああ。分かった」
紙を受け取った俺は頷くと、魔導銃を無限収納の中に入れた。
「よし。頑張るか~」
俺は気合を入れると、紙に書かれた組み合わせを頼りに、合金を作り始めた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ニナ視点
直ぐに終わらせられそうな魔物の討伐依頼を受け、サクッと達成してきた私はのんびりと商業区でデザートを食べていた。
これは昔、勇者の1人が広めたアイスクリームというもので、冷たくて甘いのが特徴なの。
私はカップに入った丸いアイスクリームを小さな木のスプーンですくうと、口に入れた。
「ん~美味しい」
冷たくて甘い感じが癖になる。いくらでも食べられそう。
だけど、あんまり食べ過ぎると太っちゃうから、1カップで我慢しないと。
「……レインはこれ食べたことなさそうだからね。今度デー……じゃなくて、散歩の時に紹介してあげようかしら?」
レインは前にフルーツサンドを美味しそうに食べていたから、きっと甘いものが好きだわ。少なくとも、嫌いという訳ではないはず。なら、きっとアイスクリームも気に入ってくれる。
「レインは今頃何してるのかな~」
ドルトンさんの手伝いをしていることを知っているのに、無意識にそう言ってしまった。
「は~あ。今の完全に恋に落ちた女子の言葉よね~」
確かに私はレインのことを好きだとは思っている。けど、レインは私のことを一切意識してくれない。でも、それは仕方のないこと。だって、レインとは会ってまだ1か月も経っていないんだから。
レインのような長命種は恋もゆっくりだと聞いたことがある。だから、無理してレインを私のペースに巻き込んではいけない。
そう自分に言い聞かせてみたけど、レインの場合はゆったりとかの次元じゃない気がする。何と言うか……恋ってものを感じれないんじゃないかな?
一緒に過ごしていて、そう思った。
まあ、俗に言う女の勘ってやつだから、あてになるかは自分でもよく分からないけど。
因みに、さっさと告白アタック!……をするつもりはない。今やったら気まずくなるのは分かりきってるし、別にこの距離間でも悪くないから……。
「あ~これ以上は考えない。これ以上は考えない……ぱくっ」
私は頭をぶんぶんと振って思考をかき消すと、さっきよりも多めにアイスクリームをすくい、口に入れた。
……うん。美味しい。
「で、明後日は国王の謁見かぁ……やっぱり気が進まないなぁ」
国王に会うとか、考えただけで平民の私には胃が痛くなる。
そして、それと同時に仕官の誘いがたくさん来るだろうが、別にそれは前にAランク冒険者になった時にも来たから、ちょっと鬱陶しいと思うだけで、特に問題はない。仕官を断ったぐらいで怒るのは、自身の器が小さいと自ら言うようなものだから、大抵の貴族はやらない。
だけど、レインは違う。
レインはあの戦いで私以上の戦果を出しながら、汗1つかいていない。つまり、あれでもまだ余裕があったということだ。そして、そのことは報告書を通して国にも伝わっているはず。
冒険者ギルドが1度に500万セル以上の報酬を支払う時は、それを払うに至った経緯をその国の本部長と宰相に報告する決まりになっているから。
レインほどの強さなら、国益になるという理由で、より多くの王侯貴族が引き込もうとしてきてもおかしくない。Sランク冒険者ほどではないだろうが、相当しつこくくるだろう。私の時とは違い、1度断っても、雇用条件を良くして再び来るはずだ。
一応断り続ければ、しつこい勧誘が理由で国を出ていかれない為にも手を引くだろうが、レインはそこまで我慢出来るのだろうか。
(レインって前に貴族を脅迫したらしいからなぁ……)
詳細は分からないが、何故かあの日からウェルドの領主が善良になった。
ついさっき王都に来た冒険者によると、税収を今までの半分にし、孤児院に寄付金を送り、スラムで炊き出しをするといった行為を僅か1日の内にやったそうだ。
あの時、レインは話をしただけと言っていたが、それだけでどうにかなるはずがない。絶対脅迫した。それも相当な――
(流石にそれをここでやるのは止めないと。だけど、私に止められるかなぁ……)
王都でそんなことをやったら、レインと言えども絶対バレる。そうなったら、レインは犯罪者となり、国から追われることになるだろう。私は、レインにそうなって欲しくない。
(うん。念の為、本部長にレインはしつこい勧誘がとてつもなく嫌いだってことを国に言うようお願いしましょ)
効果があるかは分からないけど、言わないよりはマシだと思う。
「よし。そうと決まれば早速行きましょ」
国王の謁見に関することと言えば、優先的に会ってくれるはず。
そう思った私はアイスクリームをパクパクッと食べると、冒険者ギルドへと向かった。
落ち着きを取り戻したドルトンはそう呟いた。
「錬金術師も付与もレベルを上げる作業を延々とやり続けただけで、知識経験はそこまで豊富ではないんだ。神級魔法師として持っている高い魔力操作の技量が、あのレベルの錬金術と付与を可能にしてるんだよ」
スキルレベルが10であることをやんわりと隠しつつ、錬金術と付与が上手く使える理由を俺は良い感じにドルトンに説明した。
「確かに、神級称号はそれに該当するスキルのレベルよりも、知識や経験が求められるからな。スキルレベルが高くても、ちゃんと使えなきゃ意味がねぇってことだ」
その言葉、何か俺にグサグサと刺さるな。
まともにレベル上げたものも多いが、一部RTA方式でレベル上げしたものもある。
でもまあ……仕方ないんだよ。
レベル10が並ぶ中で、レベル10でないものがあったら、凄い気になっちゃうんだよ。
因みに、今は全てのスキル、魔法をレベルMAXにしようか検討している。だが、そこまで一気に上げるのは流石の俺でもキツいということで、まずは有用なものを1、2つレベルMAXにしようかと思っている。
「で、え~と……随分話が逸れちまったな。じゃ、話を戻すか。俺は、これkらお前さんの剣の鍛冶作業に入る。素材が素材だから、多分夜までかかる。それまで、お前さんはこの紙に書いてある6種類の合金を生成してくれ」
「ああ。分かった」
紙を受け取った俺は頷くと、魔導銃を無限収納の中に入れた。
「よし。頑張るか~」
俺は気合を入れると、紙に書かれた組み合わせを頼りに、合金を作り始めた。
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ニナ視点
直ぐに終わらせられそうな魔物の討伐依頼を受け、サクッと達成してきた私はのんびりと商業区でデザートを食べていた。
これは昔、勇者の1人が広めたアイスクリームというもので、冷たくて甘いのが特徴なの。
私はカップに入った丸いアイスクリームを小さな木のスプーンですくうと、口に入れた。
「ん~美味しい」
冷たくて甘い感じが癖になる。いくらでも食べられそう。
だけど、あんまり食べ過ぎると太っちゃうから、1カップで我慢しないと。
「……レインはこれ食べたことなさそうだからね。今度デー……じゃなくて、散歩の時に紹介してあげようかしら?」
レインは前にフルーツサンドを美味しそうに食べていたから、きっと甘いものが好きだわ。少なくとも、嫌いという訳ではないはず。なら、きっとアイスクリームも気に入ってくれる。
「レインは今頃何してるのかな~」
ドルトンさんの手伝いをしていることを知っているのに、無意識にそう言ってしまった。
「は~あ。今の完全に恋に落ちた女子の言葉よね~」
確かに私はレインのことを好きだとは思っている。けど、レインは私のことを一切意識してくれない。でも、それは仕方のないこと。だって、レインとは会ってまだ1か月も経っていないんだから。
レインのような長命種は恋もゆっくりだと聞いたことがある。だから、無理してレインを私のペースに巻き込んではいけない。
そう自分に言い聞かせてみたけど、レインの場合はゆったりとかの次元じゃない気がする。何と言うか……恋ってものを感じれないんじゃないかな?
一緒に過ごしていて、そう思った。
まあ、俗に言う女の勘ってやつだから、あてになるかは自分でもよく分からないけど。
因みに、さっさと告白アタック!……をするつもりはない。今やったら気まずくなるのは分かりきってるし、別にこの距離間でも悪くないから……。
「あ~これ以上は考えない。これ以上は考えない……ぱくっ」
私は頭をぶんぶんと振って思考をかき消すと、さっきよりも多めにアイスクリームをすくい、口に入れた。
……うん。美味しい。
「で、明後日は国王の謁見かぁ……やっぱり気が進まないなぁ」
国王に会うとか、考えただけで平民の私には胃が痛くなる。
そして、それと同時に仕官の誘いがたくさん来るだろうが、別にそれは前にAランク冒険者になった時にも来たから、ちょっと鬱陶しいと思うだけで、特に問題はない。仕官を断ったぐらいで怒るのは、自身の器が小さいと自ら言うようなものだから、大抵の貴族はやらない。
だけど、レインは違う。
レインはあの戦いで私以上の戦果を出しながら、汗1つかいていない。つまり、あれでもまだ余裕があったということだ。そして、そのことは報告書を通して国にも伝わっているはず。
冒険者ギルドが1度に500万セル以上の報酬を支払う時は、それを払うに至った経緯をその国の本部長と宰相に報告する決まりになっているから。
レインほどの強さなら、国益になるという理由で、より多くの王侯貴族が引き込もうとしてきてもおかしくない。Sランク冒険者ほどではないだろうが、相当しつこくくるだろう。私の時とは違い、1度断っても、雇用条件を良くして再び来るはずだ。
一応断り続ければ、しつこい勧誘が理由で国を出ていかれない為にも手を引くだろうが、レインはそこまで我慢出来るのだろうか。
(レインって前に貴族を脅迫したらしいからなぁ……)
詳細は分からないが、何故かあの日からウェルドの領主が善良になった。
ついさっき王都に来た冒険者によると、税収を今までの半分にし、孤児院に寄付金を送り、スラムで炊き出しをするといった行為を僅か1日の内にやったそうだ。
あの時、レインは話をしただけと言っていたが、それだけでどうにかなるはずがない。絶対脅迫した。それも相当な――
(流石にそれをここでやるのは止めないと。だけど、私に止められるかなぁ……)
王都でそんなことをやったら、レインと言えども絶対バレる。そうなったら、レインは犯罪者となり、国から追われることになるだろう。私は、レインにそうなって欲しくない。
(うん。念の為、本部長にレインはしつこい勧誘がとてつもなく嫌いだってことを国に言うようお願いしましょ)
効果があるかは分からないけど、言わないよりはマシだと思う。
「よし。そうと決まれば早速行きましょ」
国王の謁見に関することと言えば、優先的に会ってくれるはず。
そう思った私はアイスクリームをパクパクッと食べると、冒険者ギルドへと向かった。
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