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第四章 王都観光

第十八話 作業厨、フェリスとまた会う

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「……よし! お前さん。終わったぞ!」

 暫くの間黙々と作業をしていると、突然近くからドルトンの大声が聞こえてきた。

「ん? ああ。終わりました?」

 俺は手を止めると、ドルトンにそう問いかけた。

「ああ。無事、お前さんの剣を強化することが出来た。こいつにも、仕上げに付与をしてくれ」

「ああ。分かった」

 俺はドルトンからダークを受け取ると、左手をかざした。

「付与 耐久力上昇、物理攻撃耐性上昇、魔法攻撃耐性上昇、攻撃力上昇、耐汚
 、魔力伝導性上昇」

 魔法陣を左手に展開すると、俺はさっきと同じようにして6つの効果をダークに付与した。

「よし。完成だな。これで、その剣は上位の国宝クラスになった。いや~久々にオリハルコンをいじることが出来て、俺は満足だ」

 めちゃくちゃ貴重な金属であるオリハルコンを扱えたことに、ドルトンは嬉しそうな笑みを浮かべた。
 オリハルコンは、あれだけ採掘とダンジョン探索をした俺でも5キログラムほどしか持っていない。だからこそ、俺はドルトンの喜びようがよく分かる。

「……ん? そう言えば、今は何時だ?」

 あれから食事もせずにぶっ通しで作業し続けたせいで、時間の感覚が少し狂ってしまった俺はドルトンにそう問いかけた。

「今は……夜の11時30分だな。思ってたより早く終わったな」

「あ、マジか。じゃあさっさと帰らないと」

 ドルトンは早いと言うが、俺からしてみればこの時間に終わるのは遅いと思う。
 早く帰らないとニナとリックが心配するだろうから、早急に帰るとしよう。

「分かった。じゃ、また明日! 8時ぐらいに来いよ!」

「分かった。またな」

 俺は足早にドルトン工房を出ると、人目のつかない所で長距離転移ロングワープを使って、ニナとリックの家の前に転移した。

「ただいま~……」

 俺は家のドアを開けると、少し控えめな声でそう言った。

「……もう寝ちゃってるか。まあ、仕方ないか」

 気配で既に2人が寝ていることを知った俺はドアの鍵を閉めると、そのまま借りている部屋に転移した。

「よっと。あ、シュガー、ソルト。ただいま。……まあ、もう寝てるか」

 ベッドの上で身を寄せ合って寝ているシュガーとソルトを見て、俺はそう呟いた。

「じゃ、行くか。世界門ゲート

 俺は世界門ゲートを開くと、俺の世界……じゃなくて、俺の神界に移動した。俺が創った世界は神界だってこの世界ティリオスの管理神ことフェリスが言ってたからね。

「ふぅ。それじゃ、食べよっと」

 俺の神界に転移した俺は家に入ると、リビングの椅子に座った。そして、テーブルの上に木の皿を置き、その上にオークの焼肉を乗せた。

念動ねんどう次元斬じげんざん

 俺は、手を使わずに物を動かすことがでいる無属性魔法、念動ねんどうでオークの焼肉を宙に浮かせると、空間を切る時空属性魔法、次元斬じげんざんで一口サイズに切り分けた。そして、切り分けられたオークの焼肉をそのまま念動ねんどうを使って口元に運ぶと、一切れずつ口に入れた。
 ラクに食べられ、魔法の練習にもなる。一石二鳥だ。

「もう。また変な食べ方しているの? そんな食べ方をする人や神は1000人ぐらいしか見たことありませんよ」

 耳元から優し気な女性の声が聞こえてきた。吐息が耳の中に微かに入る。
 口をもぐもぐさせながら振り返ると、そこには若干呆れたような顔をしたフェリスがいた。

「意外といますね。1000人って」

 俺はゴクリと飲み込むと、そう言った。

「多くの人、神を見てきた私にとっては、1000人なんですよ」

「流石神様ですね。それで、本日はどのようなご用件で?」

 1000人を少ないと言う女神を誉めつつ、俺は用件を聞いた。

「用件って……。暇だから来ただけよ」

 フェリスはまた呆れたような顔をすると、そう言った。

「ああ。そういう感じですか。でも、俺って会話はあまり得意じゃないので、こっちから話を振ることは出来ませんよ? あと、料理も下手なので、今俺が食べているような原始的な食事しか出せませんよ?」

「それ、言ってて虚しくなりません?」

「……ならないな。もう、それが俺みたいになっていて、むしろそれが出来るようになっちゃったら俺じゃないって感じになる」

 コミュ力が高いとか、料理が得意とかは俺の柄ではない。戦闘やモノづくりの方が性に合っている。まあ、モノづくりは真面目にやり始めてまだ2日なんだけどね。

「何開き直ってるんですか……。まあ、いいです。その辺に関しては気にしていません。ほいっと」

 フェリスはおもむろに右手を掲げた。すると、左手に茶の入ったティーカップ2つと洋菓子2人分が乗った丸盆が出現した。

「おお。前も見たけど、それって収納の類いじゃないですよね?」

 魔法陣は見えないが、魔力の流れ方がかなり違うのを感じた俺は思わずフェリスにそう問いかけた。

「創造魔法を使っただけよ。世界を創造する要領で、これを創ったの」

「何かさらりと凄ぇこと言ってんな」

 世界を創ることと、茶会セットを作ることが同じだって?
 流石の俺でも耳を疑うよ。だけど、言ってる相手がフェリスなので、信じるほかない。実際に目の前で見せられたしね。
 ていうか、危うくスルーしかけたけど、創造魔法ってなんだ?

「あ、そう言えばあなたはまだ創造魔法が使えないんでしたね。これは、基本8属性全てをしっかりと使いこなせるようになった者のみが習得できます。繊細な魔力操作と具体的なイメージ力が求められるので、慣れるまでは結構難しいんですよ」

 マジかよ。そんな凄ぇ魔法があるのか。
 それなら今すぐにでも全属性をレベルMAXにしないと!

「……とは思ったものの、流石にそれを今からやる気力は流石にねぇな。レベル10からレベルMAXにするのには1000年ぐらいかかるし、こればっかりは気長にやるか」

 一刻も早く使ってみたいと思う気持ちがあるが、急いで手に入れなければならないという訳ではない。だったら、気が向いた時にやればいいだろう。

「うんうん。そうね。最近思ってたけど、あなたは生き急ぎ過ぎよ。もっとゆっくりのんびりと生きて欲しいわ」

 フェリスは子を諭す母親のように言った。なんだか抱擁感がある。これが女神パワーってやつなのかな?

「……まあ、そうだな」

 人間の一生の短さを人間と会うことで思い出したせいで、知らず知らずの内に無理をし過ぎていた気がする。俺は既に世界最強なんだから、ここから更に無理して、急ぎ足で強くなる必要はない。

「さてと。のんびりお茶でもしましょう」

 フェリスはテーブルの上にティーカップと洋菓子を置くと、丸盆を消し、椅子に座った。

「そうだな」

 俺はふっと笑うと、ティーカップを手に取った。
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