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第三章 エルフの里

第二十話 死んでいない(たぶん)

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「ふぅ、久々だな」

 冒険者ギルドに入った俺は、中を見回しながら、そう呟いた。
 ……だがそれにしても注目されるな……まあ、子供を連れて冒険者ギルドに入る人は普通居ないので、仕方のないことだ。なので、特に気にしていない。
 ただ、それでもこういう連中は厄介だと思ってしまう。

「おい! ここはガキの遊び場じゃねーんだよ。目障りだから失せろ」

「お、横にいる女めっちゃ美人じゃん。お前なんかにはもったいないからよこせ」

 もう誰かに絡まれるのにも慣れてきた。まあ、俺自身が舐められやすいのにも関わらず、注目を浴びるような行動をしていることが原因でもあるんだけどな。
 まあ、こいつらは手を出していない。だから、俺はこの二人に最終警告をすることにした。

「俺たちに手を出すのなら、容赦しないよ」

 俺は表情一つ変えずに、警告をした。まあ、こいつらが言葉程度でどうにかなる相手ではないことはよく分かっているが、念の為だ。

「へっ 舐めた口をきくな!}

「本当だぜ。よし、俺はこいつを教育しとくから、お前はその女と、ついでにガキもお持ち帰りしてやれ」

 二人は俺達に敵対した。
 そして、一人が俺に殴りかかってきた。周囲の人が止めようとしたが、間に合いそうにない。
 まあ、安心しろ。俺がこんな奴らに負けるわけがない。さっさと処理するとしよう。

「一生働けない身体にしてやるよ」

 俺はそう言うと、跳んできた拳を掴み、握りつぶした。
 その後、すかさず天下の宝刀腹パン(再生バージョン)を超高速で三十回ほどやって、精神を粉々に砕いた。そして、とどめに〈重力操作グラビティ―〉で全身の骨を死なない程度に砕いた。

「が……あ……」

「が……」

 二人は意識はあるが、目は完全に死んでいた。まあ、俺の大切な人に手を出そうとしたのだ。命を取らなかっただけ、運が良かったと思うがいい。
 そして、その様子を見ていた周りの人たちは、意識はあるが、死んでいる二人を見て、体を震わせていた。まあ、新人冒険者に見える(と言うか、実際そう)俺が、二人のチンピラ系冒険者の心と体をバッキバキに折ったのだから、無理もないだろう。

 そう思っていると、階段を駆け下りてきたウォルフさんが近づいてきた。

「うわぁ……生きてはいるが、目が死んでるな……て、ユートじゃないか! 元気だったか?」

 ウォルフさんはそう言うと、俺の肩をバシバシと叩いた。

「はい。久しぶりです」

 俺はニコッと笑うと、挨拶をした」

「ああ。随分強くなったようだな。俺と互角ってレティウス様から通信石で聞いてたけど、どうやらもう俺より強いようだな」

 ウォルフさんがそう言った瞬間、冒険者ギルド内に衝撃が走った。
 みんな驚愕の視線を俺に向けてくる。下で生きる屍となっている二人でさえも、「相手を間違えた……」と虚ろな表情で呟いていた。

「まあ、それなら恐らくこいつらがお前に絡んできたんだろ? お前全然強そうに見えないからな」

「まあ、俺の姿は舐められやすいですからね」

「ま、取りあえず、俺の部屋に行くぞ。お前の今後のことについて、話があるからな」

 今後とは、恐らく勇者パーティーの件であろう。それにしても、ティリアンからグランに帰ってくる時間が短すぎることに疑問を持ってないよな? あの説明は面倒くさいんだよな……
 俺はそのことに気づかないように祈った。
 その後、衛兵によって運び出された二人を尻目に、俺達は支部長室に向かった。

 支部長室に入った俺たちは、いつものソファに座った。因みにノアは、クリスの膝の上でおとなしくしていた。
 俺の膝の上じゃないのは珍しいなと思っていたら、クリスが「さっきユートが潰した奴らの状態が悲惨すぎて、ノアちゃんが怯えているよ」と小声で言った。まあ、確かにあれはノアの前でやるべきではなかったな。せめて、ノアの目と耳をクリスに塞がせてからやるべきだったと後悔した。
 だが、後悔していても仕方がない。取りあえずウォルフさん話を聞くとしよう。
 そう思った俺は、ウォルフさんと目を合わせた。

「じゃ、話をするぞ。ユートの勇者パーティー推薦は、公爵家が出したこともあり、無事承認された。それで、最終試験は十五日後に王都にある王城で行われる。ほれ、これが試験許可証だ。絶対になくすんじゃねぇぞ」

 ウォルフさんは懐から一枚の封筒を取り出すと、俺に手渡した。
 俺はそれを受け取ると、直ぐに〈アイテムボックス〉にしまった。

「これで話さなければならないことは終わった。それで、聞いたぞ。向こうでは随分と活躍したみたいじゃないか。それで、横にいるのはその時に助けた人だな。こうして見ると、まるで若夫婦みたいだな」

 ウォルフさんはからかうように言った。

「いや、まじの夫婦だぞ」

 からかうように言われたので、俺はウォルフさんを驚かせる為、バシッと言ってやった。
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