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第三章 エルフの里
第二十一話 シャオニンは結構凄い人だった
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「……は!?」
ウォルフさんは目を見開き、口を半開きにして驚愕した。こんな表情のウォルフさんを見るのは初めてだ。
「ああ、昨日結婚したんだ。因みにノアは娘だ」
俺はウォルフさんの表情が面白くて、更なる追い打ちをかけてみた。
「な……お、おい……はあぁ!? なあぁ!?」
ウォルフさんは混乱の極みみたいな表情になっていた。
流石にやりすぎたかなと反省すると、俺はウォルフさんを正気に戻す為に、ウォルフさんの頬を軽く叩いた。
「ぶふぁ……うん。なるほどな。分かった……まあ、おめでとう!」
正気に戻ったウォルフさんは、俺の肩を叩きながら、祝福してくれた。
「はい。ありがとうございます」
俺はニコッと笑うと、お礼を言った。
「てかさ、式はいつやったんだ?」
「いえ、エルフの慣習に倣って、式はやりませんでした。昨日、みんなと食事会をしたんですよ」
俺がそう言うと、ウォルフさんは悲し気な表情になった。
「おい……何で俺を招待してくれねぇんだよ……俺とお前との仲じゃないか……」
何だろう。今すっごい申し訳ない気分になった。確かにウォルフさんなら誘ってもよかったな……ウォルフさんを誘った方がにぎやかになった気がするし。
「ま、まあ。結婚の報告をしたのはウォルフさんが一番最初ですよ」
「お、そうなのか。俺が一番なのか……じゃあいいか」
ウォルフさんは腕を組むと、嬉しそうに頷いた。
「で、俺達が来た本当の目的は、神の涙についてです」
俺がそう言うと、ウォルフさんの表情が一気に強張った。
「何かあったのか?」
「はい。実は昨日、エルフの里が奴らに襲われました」
「何だと! それは本当か?」
ウォルフさんは机をバンと叩いた。
「はい。ただ、今回の狙いはエルフではなく、俺でした。まず、里の外でエルフを攫い、彼らを俺が助けに行っている隙にエルフの里に侵入して、ノア――俺の娘を攫いました。俺がエルフの里にいることを知っていたのは、ティリアンの衛兵の中に神の涙の間諜が居たからでしょう」
「まじかよ……お前ひとりを狙ってここまで動くものなのか……」
ウォルフさんは顎に手を当てると、考え込んだ。
「奴らはただの意地で俺を殺そうとしてきましたからね。で、俺はノアを連れ去られたことでマジギレして、奴らの隠れ家に殴り込みに行きました。そこには幹部が二人いましたが、二人ともさきチンピラにやったやつを百回やってから殺しました。あ、片方には逃げられましたね」
俺は何があったのかを詳しく説明した。
「そうか……分かった。それにしても幹部か……名前は分かるか?」
「はい。ディンとシャオニンってやつでしたね。シャオニンが命を犠牲に身体強化してきたせいで少し時間をかけてしまい、ディンに逃げられました」
俺がそう言った瞬間、ウォルフさんは目を見開いた。そして、固まった。その後、十秒程経ってから、頭を抱え、ため息をついた。
「おい。それ二人とも最高幹部だ。二人しかいない最高幹部だぞ!」
「え、そうなんですか!?」
幹部とは聞いていたが、まさかトップだったとは……逃がしてしまったことが悔やまれる。
「あ、取りあえずシャオニンの死体を出しときますね」
俺は軽い口調でそう言うと、テーブルの横にシャオニンの死体を置いた。
「お……まじでシャオニンだ……俺でも勝てるかと聞かれたら首を全力で振りたくなるようなやつだ。身体能力なら俺の方が上だと思うが、技量に差がありすぎる。この国の騎士団長を上回る剣技を見せた奴なんだぞ……」
ウォルフさんは信じられないものを見るかのような目で、シャオニンの死体を見つめていた。
「ていうか、剣技を見せたってことは、こいつってこの国の騎士団長と戦ったことがあるのか?」
「ああ。こいつは隣国、ディーン帝国で騎士団長をやっていた男だ。模擬戦で、この国の騎士団長と戦ったんだが、軽くあしらわれたらしい。そして、地面に倒れたこの国の騎士団長にこう言ったんだ。『ステータス頼りのごみじゃん。技術が低レベルすぎるんだけど。お前、本当に騎士団長か? 影武者なんじゃねーの?』て」
「うわぁ……この国の騎士団長のメンタル大丈夫でしたか?」
シャオニンによって、誇りとプライドを粉々に砕かれた騎士団長はどうなったのだろうか……
「いや、大丈夫じゃなかった。あの後奥さんに一杯抱きしめてもらったお陰で復活したけどな。あいつ超が付くほどの、愛妻家だから」
「ああ……なるほど」
確かに妻に抱きしめられたらメンタルは一気に回復するだろう。まあ、俺がやったら恥辱心がMAXになると思うが……
「でな、だからこそ聞きたい。あの剣術最強の男が、禁忌の魔道具を使って身体能力を上げたのにも関わらず、何故お前に敗れたのかを」
ウォルフさんは目を見開き、口を半開きにして驚愕した。こんな表情のウォルフさんを見るのは初めてだ。
「ああ、昨日結婚したんだ。因みにノアは娘だ」
俺はウォルフさんの表情が面白くて、更なる追い打ちをかけてみた。
「な……お、おい……はあぁ!? なあぁ!?」
ウォルフさんは混乱の極みみたいな表情になっていた。
流石にやりすぎたかなと反省すると、俺はウォルフさんを正気に戻す為に、ウォルフさんの頬を軽く叩いた。
「ぶふぁ……うん。なるほどな。分かった……まあ、おめでとう!」
正気に戻ったウォルフさんは、俺の肩を叩きながら、祝福してくれた。
「はい。ありがとうございます」
俺はニコッと笑うと、お礼を言った。
「てかさ、式はいつやったんだ?」
「いえ、エルフの慣習に倣って、式はやりませんでした。昨日、みんなと食事会をしたんですよ」
俺がそう言うと、ウォルフさんは悲し気な表情になった。
「おい……何で俺を招待してくれねぇんだよ……俺とお前との仲じゃないか……」
何だろう。今すっごい申し訳ない気分になった。確かにウォルフさんなら誘ってもよかったな……ウォルフさんを誘った方がにぎやかになった気がするし。
「ま、まあ。結婚の報告をしたのはウォルフさんが一番最初ですよ」
「お、そうなのか。俺が一番なのか……じゃあいいか」
ウォルフさんは腕を組むと、嬉しそうに頷いた。
「で、俺達が来た本当の目的は、神の涙についてです」
俺がそう言うと、ウォルフさんの表情が一気に強張った。
「何かあったのか?」
「はい。実は昨日、エルフの里が奴らに襲われました」
「何だと! それは本当か?」
ウォルフさんは机をバンと叩いた。
「はい。ただ、今回の狙いはエルフではなく、俺でした。まず、里の外でエルフを攫い、彼らを俺が助けに行っている隙にエルフの里に侵入して、ノア――俺の娘を攫いました。俺がエルフの里にいることを知っていたのは、ティリアンの衛兵の中に神の涙の間諜が居たからでしょう」
「まじかよ……お前ひとりを狙ってここまで動くものなのか……」
ウォルフさんは顎に手を当てると、考え込んだ。
「奴らはただの意地で俺を殺そうとしてきましたからね。で、俺はノアを連れ去られたことでマジギレして、奴らの隠れ家に殴り込みに行きました。そこには幹部が二人いましたが、二人ともさきチンピラにやったやつを百回やってから殺しました。あ、片方には逃げられましたね」
俺は何があったのかを詳しく説明した。
「そうか……分かった。それにしても幹部か……名前は分かるか?」
「はい。ディンとシャオニンってやつでしたね。シャオニンが命を犠牲に身体強化してきたせいで少し時間をかけてしまい、ディンに逃げられました」
俺がそう言った瞬間、ウォルフさんは目を見開いた。そして、固まった。その後、十秒程経ってから、頭を抱え、ため息をついた。
「おい。それ二人とも最高幹部だ。二人しかいない最高幹部だぞ!」
「え、そうなんですか!?」
幹部とは聞いていたが、まさかトップだったとは……逃がしてしまったことが悔やまれる。
「あ、取りあえずシャオニンの死体を出しときますね」
俺は軽い口調でそう言うと、テーブルの横にシャオニンの死体を置いた。
「お……まじでシャオニンだ……俺でも勝てるかと聞かれたら首を全力で振りたくなるようなやつだ。身体能力なら俺の方が上だと思うが、技量に差がありすぎる。この国の騎士団長を上回る剣技を見せた奴なんだぞ……」
ウォルフさんは信じられないものを見るかのような目で、シャオニンの死体を見つめていた。
「ていうか、剣技を見せたってことは、こいつってこの国の騎士団長と戦ったことがあるのか?」
「ああ。こいつは隣国、ディーン帝国で騎士団長をやっていた男だ。模擬戦で、この国の騎士団長と戦ったんだが、軽くあしらわれたらしい。そして、地面に倒れたこの国の騎士団長にこう言ったんだ。『ステータス頼りのごみじゃん。技術が低レベルすぎるんだけど。お前、本当に騎士団長か? 影武者なんじゃねーの?』て」
「うわぁ……この国の騎士団長のメンタル大丈夫でしたか?」
シャオニンによって、誇りとプライドを粉々に砕かれた騎士団長はどうなったのだろうか……
「いや、大丈夫じゃなかった。あの後奥さんに一杯抱きしめてもらったお陰で復活したけどな。あいつ超が付くほどの、愛妻家だから」
「ああ……なるほど」
確かに妻に抱きしめられたらメンタルは一気に回復するだろう。まあ、俺がやったら恥辱心がMAXになると思うが……
「でな、だからこそ聞きたい。あの剣術最強の男が、禁忌の魔道具を使って身体能力を上げたのにも関わらず、何故お前に敗れたのかを」
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