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* 93 もうすぐ年末 *
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「屋台営業を始めるのは、11月の終わり頃だろ? だったら、年末年始の営業についても早めに決めておいたほうがよくないか?」
マートルからそう言われたのは十月の半ばの話である。
「あぁ、そっか。もうそろそろ、年末年始の営業予定を決めとかないといけないのか。なんか、あっという間の一年だったなあ」
今年は大きな変化があったから、余計にそう思うのかもしれない。
「それで、こっちの年末年始ってどんな感じ? 12月24日が降誕祭だってことは聞いたんだけど」
クリスマスみたいなものだとは聞いたが、詳しいことは知らない。
「24日は前夜祭で、25日が降誕祭。この世界に神々が降り立ったことをお祝いする日だね。どこの宗派もこの2日間は祭日に指定してるよ」
こっちは多神教なので、信仰している神様ごとに祭日が違っているのが普通らしい。なので、町どころか、国全体がお祝いムードに包まれる降誕祭は、特別な日なんだそうだ。
「ナティヴィニーヨっていう、葉っぱがついた木の枝とかを丸めた飾りを壁にかけたり、最近だとリースのかわりにマノホを飾ったりする家もあるみたい」
俺が首を傾げたので、マートルが「アリスほど上手く描けねえが」って言いながら、絵に描いてくれた。ナティヴィニーヨは、クリスマスリースにそっくりだったし、マノホはブーケガルニを壁飾り用として整えたような感じの物だった。なんか、こんなの日本にもあったよなあ、って思う。名前は知らんけど。
アリアンの神殿では、お祝い菓子としてレイエスを配るのだそうだ。
「それって何?」
「顔くらいの大きさがある、リング型のお菓子だよ。ドライフルーツを入れたり、ナッツやクリームを入れたりしているところもあるね。その中に、王冠っぽい形のリングを入れて焼くんだよ」
「あぁ、食べるときに切り分けて、そのリングが当たった人はその日、王様みたいな?」
「王様じゃなくて、その年は幸運に恵まれるって話。ニホンじゃ、王様だったのか?」
「日本じゃないよ。別の国。どこの国かは忘れたけど、そんな風習があるって、絵本で見た記憶がある。ただ、入ってたのは、リングじゃなくて人形だったと思うけど」
どっちにしろ、うろ覚えだ。
「オリーは、今年もレイエスを作って寄付するのか?」
「もちろん。スバルはどうする?」
「じゃあ、俺も作ってみようかな。ところで、マートルはどうなの?」
「俺か? マルトーラはそういうのねえんだよ。ただ、ケチケチすんな、金使えって感じ」
「何、それ」
マートルが信仰しているマルトーラは、戦いの神なんだそうだ。そして、面白いなと思ったのは、商売の神様でもあるらしい。なので、傭兵の神様として知られているらしい。
「つまり、お金を使って経済を回せってことか。宵越しの金は持たない主義って感じだな」
それも傭兵っぽいといえば、傭兵っぽい気もする。
話はだいぶそれたが、降誕祭は、24日は午前中で仕事を切り上げ、午後からは休みにするところが多いそうだ。パブもこの日ばかりは、20時頃で閉店するらしい。25日はどこも休みで、26日は時短営業をするところもあれば、休むところもあるとのこと。
「このへんは、店によって違うし、その年によっても変わるな。それから、27日から30日までは普通に営業して、31日は午前か昼過ぎまで営業。1日は休んで、2日から通常に戻る、っていう感じだな。ウチはどうする?」
ちなみに、タリーの台所では24日は午前中で営業を終わり、25日と26日は休み。27日から30日が通常営業で、31日は午前中で営業終了。1日が休みで、2日から通常営業スタートだったそう。確かヨーロッパがそんな感じだったような気がするけども、
「……29日から3日まで休んじゃダメなのか?」
まじめな顔でオルレアとマートルに聞く。
「ダメってことはないと思うけど……」
「なんでだ?」
「日本人には、降誕祭よりも正月、1月1日のほうが大事なんだよ」
曜日周りにもよるが、遅くても28日には仕事納めをして、4日~6日が仕事始めだ。
「降誕祭は?」
「休まないよ? 子供がいる家はパーティーをすることもあるけど」
俺の答えに、オルレアとマートルは信じられない、という顔をした。
「ってことは、アリアンポートは降誕祭休暇はなし?」
「いやいや。それだと反発が起きそうだから、24日の午後から26日までは休みにするよ」
「あぁ、よかった。ほっとした。あ、そうだ。24日は職場で降誕祭のお祝いをするところもあるんだよ。従業員の家族を招いて、パーティーをやるんだ」
「マジか。だったら、うちもぜひやりたいけど、問題は会場だな」
オルレアとマートルが、忘れてた、という顔をしたのは言うまでもないだろう。
マートルからそう言われたのは十月の半ばの話である。
「あぁ、そっか。もうそろそろ、年末年始の営業予定を決めとかないといけないのか。なんか、あっという間の一年だったなあ」
今年は大きな変化があったから、余計にそう思うのかもしれない。
「それで、こっちの年末年始ってどんな感じ? 12月24日が降誕祭だってことは聞いたんだけど」
クリスマスみたいなものだとは聞いたが、詳しいことは知らない。
「24日は前夜祭で、25日が降誕祭。この世界に神々が降り立ったことをお祝いする日だね。どこの宗派もこの2日間は祭日に指定してるよ」
こっちは多神教なので、信仰している神様ごとに祭日が違っているのが普通らしい。なので、町どころか、国全体がお祝いムードに包まれる降誕祭は、特別な日なんだそうだ。
「ナティヴィニーヨっていう、葉っぱがついた木の枝とかを丸めた飾りを壁にかけたり、最近だとリースのかわりにマノホを飾ったりする家もあるみたい」
俺が首を傾げたので、マートルが「アリスほど上手く描けねえが」って言いながら、絵に描いてくれた。ナティヴィニーヨは、クリスマスリースにそっくりだったし、マノホはブーケガルニを壁飾り用として整えたような感じの物だった。なんか、こんなの日本にもあったよなあ、って思う。名前は知らんけど。
アリアンの神殿では、お祝い菓子としてレイエスを配るのだそうだ。
「それって何?」
「顔くらいの大きさがある、リング型のお菓子だよ。ドライフルーツを入れたり、ナッツやクリームを入れたりしているところもあるね。その中に、王冠っぽい形のリングを入れて焼くんだよ」
「あぁ、食べるときに切り分けて、そのリングが当たった人はその日、王様みたいな?」
「王様じゃなくて、その年は幸運に恵まれるって話。ニホンじゃ、王様だったのか?」
「日本じゃないよ。別の国。どこの国かは忘れたけど、そんな風習があるって、絵本で見た記憶がある。ただ、入ってたのは、リングじゃなくて人形だったと思うけど」
どっちにしろ、うろ覚えだ。
「オリーは、今年もレイエスを作って寄付するのか?」
「もちろん。スバルはどうする?」
「じゃあ、俺も作ってみようかな。ところで、マートルはどうなの?」
「俺か? マルトーラはそういうのねえんだよ。ただ、ケチケチすんな、金使えって感じ」
「何、それ」
マートルが信仰しているマルトーラは、戦いの神なんだそうだ。そして、面白いなと思ったのは、商売の神様でもあるらしい。なので、傭兵の神様として知られているらしい。
「つまり、お金を使って経済を回せってことか。宵越しの金は持たない主義って感じだな」
それも傭兵っぽいといえば、傭兵っぽい気もする。
話はだいぶそれたが、降誕祭は、24日は午前中で仕事を切り上げ、午後からは休みにするところが多いそうだ。パブもこの日ばかりは、20時頃で閉店するらしい。25日はどこも休みで、26日は時短営業をするところもあれば、休むところもあるとのこと。
「このへんは、店によって違うし、その年によっても変わるな。それから、27日から30日までは普通に営業して、31日は午前か昼過ぎまで営業。1日は休んで、2日から通常に戻る、っていう感じだな。ウチはどうする?」
ちなみに、タリーの台所では24日は午前中で営業を終わり、25日と26日は休み。27日から30日が通常営業で、31日は午前中で営業終了。1日が休みで、2日から通常営業スタートだったそう。確かヨーロッパがそんな感じだったような気がするけども、
「……29日から3日まで休んじゃダメなのか?」
まじめな顔でオルレアとマートルに聞く。
「ダメってことはないと思うけど……」
「なんでだ?」
「日本人には、降誕祭よりも正月、1月1日のほうが大事なんだよ」
曜日周りにもよるが、遅くても28日には仕事納めをして、4日~6日が仕事始めだ。
「降誕祭は?」
「休まないよ? 子供がいる家はパーティーをすることもあるけど」
俺の答えに、オルレアとマートルは信じられない、という顔をした。
「ってことは、アリアンポートは降誕祭休暇はなし?」
「いやいや。それだと反発が起きそうだから、24日の午後から26日までは休みにするよ」
「あぁ、よかった。ほっとした。あ、そうだ。24日は職場で降誕祭のお祝いをするところもあるんだよ。従業員の家族を招いて、パーティーをやるんだ」
「マジか。だったら、うちもぜひやりたいけど、問題は会場だな」
オルレアとマートルが、忘れてた、という顔をしたのは言うまでもないだろう。
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