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3話
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ある日曜日、僕の携帯電話に、倉山先輩から電話がかかってきた。
休日だが山田はモデルの仕事があったので、僕は自宅でのんびりと、本棚の文庫本を並び替えて遊んでいたところだった。
しかし、本棚を一般文芸とライトノベルに分類わけしようとしたことはいいが、「そもそもライトノベルの定義とは何だ」という疑問に、ぶち当たってしまっていたのである。
「あ、倉山先輩ちょうどいいところに電話して来ましたね。今、僕が好きな作家のシリーズものが、ライトノベルかどうか悩んでいるんですよ。あの、『戯れ言だけどね』って寒い台詞が口癖のやつです。先輩はどっちだと思いますか」
『「ライトに人が死ぬ」という意味で、ライトノベルだよな。面白いけど』
倉山先輩の答えは投げやりなような、的を射ているようなものだった。
『それより矢藤、今暇か?』
「『ミステリーに萌えが必要かどうか』という考察を、日記にまとめるくらいには暇ですね」
『つまり、山田ちゃん以外の女性とデートするくらいには、暇ってことだな』
「倉山先輩をエスコートする自信なんて、僕にはないです。無理です」
『なんで俺が矢藤とデートせにゃあかんのだ。ぶっちゃけるが、お前は俺の好みじゃないんだよ』
そんなことを言われたのは生まれて初めてのことで、僕は少し新鮮な気持ちになる。まあ、倉山先輩に釣り合う濃さの男性は、日本人にはいない気がする。容姿の面でも、性格の面でも。
「それで、何の用ですか?」
『何、大したことない。ちょっとした浮気調査だ』
僕は倉山先輩の手伝いで、何度か「浮気調査」をしたことがある。
ただ、それはある女性の彼氏が他の女性と交際がないかを調べる探偵の仕事のような調査ではない。
僕が倉山先輩からアルバイトとして任されるのは、「その人に浮気癖がないかを調べる調査」だ。
自分たちの愛が本物かどうか、確かめたがるカップルは結構いるらしい。少なくとも、倉山先輩の懐が潤うくらいにはいることは、確かだ。
僕はそんな彼氏のいる女性と一日行動し、彼女が浮気しないかということを調べる。
何故その役割に僕が抜擢されたかというと、倉山先輩いわく「矢藤は一般的に見てこれ以上とないくらい、いい男だから」だそうだ。
倉山先輩にそう言われてもあまり嬉しくなかったのは、どうしてだろうか。
僕は確かに交際としてのデートは吐き気がするが、ビジネスとなれば話は別である。うちの学校はアルバイトが禁止なので、欲しい小説の新刊が出たときは、倉山先輩のお世話になっていた。
彼氏のいる女性が僕に浮気した割合は、伏せておこうと思う。ただ、「愛なんてそんなもんだ」とだけは、言っておく。
だから、今日もその手のものだと思って、待ち合わせに指定された喫茶店のカウンター席に座り、相手を待っていた。しかし、どういうわけかやって来たのはお洒落な内装に相応しくない野暮ったい学校指定のジャージ姿の太眉だった。
どこからどう見ても、我らが倉山先輩である。
「よう。待ったか」
「あまり待ってませんが、帰ってもいいですか?」
「あまり時間は取らせねえよ。ほら、奢るから好きなもん頼め」
あまりお腹は空いていなかったが、僕はホットコーヒーとクラブサンドセットをマスターに注文する。
「俺も同じやつを」
「えー」
思わず不満の声が出てしまう。
「……なんだよ。そのとてつもなく嫌そうな顔」
「いや、何が悲しくて倉山先輩と同じメニューを頼まなくちゃいけないんですか」
そんなことするなら山田と二人で、本当にネズミの国にデートしに行った方が……生理的に、ぎりぎりイーブンといったところだろうか。
「マスター。僕やっぱり紅茶とティラミスのセットで」
「えー」
マスターが拒否したので、僕はカウンター席に倉山先輩と二人並んで、クラブサンドをかじることになった。
「それより、浮気調査だったんじゃないんですか? 倉山先輩が来てどうするんです」
まさか、倉山先輩が僕に浮気しないかを調べるのだろうか。いや、それだと、倉山先輩に彼氏がいることが前提なのだが……嫌な想像をしてしまった。
「お前は何か勘違いしてるな。今回は、ごく一般的な意味での『浮気の調査』だ」
「はあ……誰のですか?」
「誰って、お前のだよ」
倉山先輩が指を差す先の向こうには、布巾でテーブルを拭くマスターの姿があった。
「馬鹿垂れ。『お前』というのは、矢藤のことだ」
「はあ、僕ですか。なるほど……あれ?」僕は危ういところで、納得しそうになる。「ちょっと待ってください。僕って別に誰か、付き合っている女性がいるわけじゃないじゃないですか」
すると、倉山先輩は呆れた顔をした。
「まさか、忘れたのか? いくら何でもそれはサイテーだぞ。山田ちゃんが、お前のカノジョだろが」
「違いますよ。山田は付き合ってるふりをしているだけで、カノジョではないです」
「お前たち自身はそう思っているかもしれないが、カソレンだって立派な恋愛の形だと俺は思うぜ。だから、最近は気を使って、お前や山田ちゃんに『浮気調査』の仕事を回さなかったんだ」
「やめて下さい。何だか、寒気がします」
僕と山田が本当に付き合っているとか、倉山先輩が気を使うとか色々なことに。寒いのは部室だけにして欲しい。
というか、山田も浮気調査の仕事をやっていたことを、僕は初めて知った。 どういうところで倉山先輩と山田が繋がっていたのか気になっていたが、そういうことなら納得だ。
「それで、矢藤。俺に逆らうと怖いことになるのは知っているな」
「五厘は勘弁して下さい。ベッカムヘアなら、まだいける自信があるんで」
「だったら正直に答えろ。お前、山田ちゃん以外の女と、デートしたりしてるか?」
「まさか。そんなことありえません」
僕はぶんぶんと、音が鳴るくらい勢いよく首を振る。僕がビジネス以外で女性とデートする、そんなこと考えるだけでも悪寒が走った。それは地球が逆立ちすることより、ありえないことだ。
「そうか。まあ、そうだよな……」
倉山先輩は安心したような、残念がるような複雑な顔をした。
「お前がカソレンを通して、女性と恋愛することを覚えてくれれば、それはそれで俺は嬉しかったんだが」
「倉山先輩。そういうのを余計な心配って言うんですよ」
「違いない」
倉山先輩はニヤリと笑った。この人のことだから、純粋な心配ではないのだろう。さらに余計である。
「そもそも、何でこんな疑惑が上がったんですか? それくらい、教えてもらってもいいでしょう?」
「まあ、いいだろう。情報源は伏せておくが、街でちらっと矢藤が若い女性とデートしているのを、見たやつがいるんだ。お前、女の親戚と街出歩いたことあるか?」
「最近はないです。僕に姉や妹はいませんし、親戚はみんな関西ですから」
若い女性と聞いて、僕は山田のマネージャーを連想する。しかし、僕は彼女とメールや電話で連絡を取り合うことはしているが、直接会って話したことはほとんどない。
「山田ちゃんと実際にデートしたこともないか?」
「ないです。たぶん……というか絶対、人違いじゃないですか」
僕がそう言うと、倉山先輩は「なるほど」と神妙な顔をして考え込んだ。その顔はどこか、疑いを捨てきれていない。
もしかすると、倉山先輩は、僕らしき人が女性とデートをしているという証拠を、握っているのかもしれない。
突然、喫茶店内に着信音が鳴り響いた。音は倉山先輩のポケットからだ。
「ちょっと悪い」
倉山先輩は通話を始めようとするが、マスターが『店内で通話はおやめください』という張り紙を指差したので、短く舌打ちをして店の外に出る。
しばらくして、倉山先輩は戻ってきた。
「疑って悪かったな。矢藤の浮気の疑いはもう晴れた」
呆気ないほど簡潔に、僕の浮気容疑は払拭された。
それじゃあ用が出来たから、と倉山先輩はマスターに代金を払うと、「ばいびー」と手を振って去って行った。
その表情が「面白いことになってきたぞ」と語っているのが、どうにも気になった。
◇
「昨日の放課後、駅前の喫茶店で、キスをしてる矢藤と山田を見たよ」
そうクラスメイトに言われたとき、僕は怪訝な顔をした。全く身に覚えがない話だったからだ。
「人違いじゃないかな」
「いや、あんな美男美女のカップルは、お前たち以外にいないよ。別に付き合ってるんだから、キスくらいするさ。恥ずかしがることないだろう?」
帰りの電車で山田に、僕との打ち合わせなしに作った「喫茶店でキスをした」という作り話を友人たちに話したか、と聞いてみた。
「それとも、僕以外の男性と一緒にいたか?」
「心当たりが全くないわ。何よ、それ」
山田は驚いた顔をした。彼女はとても嘘をついているようには見えない。一応、彼女とマネージャーの行動についても聞いてみる。
「彼女とは昨日は仕事で、夜までずっと一緒にいたわ」
それからもおかしなことは起こった。
次の日、学校で山田は「意味が分からない」とぶつぶつ呟きながら、僕の腕を引っぱって空教室に連れて行った。
「これ、何?」
山田の口調はいつもの落ち着いた様子がなかった。切羽詰っている感じがする。
僕は山田の手にある、一枚の紙を見た。いくつもの小さい写真がプリントされたもので、プリクラだということが分かる。
「これがどうしたんだ?」
「このプリクラに映ってる二人を、よく見て」
言われて、僕は目を凝らしてプリクラの写真を見る。思わず「え」と声を上げてしまった。
プリクラには僕と山田としか思えない、二人の男女が仲の良さそうに寄り添って映っている。
これではまるで恋人同士だ。
「このとてつもなく気持ち悪い写真、何? どこで拾ったんだ?」
「さっき別のクラスの女子生徒に『これ、山田さんと矢藤くんだよね。すみれ野駅前のゲームセンターのプリクラに、一枚残ってたのを偶然見つけたの』って言われて渡されたのよ」
「……なんだこれ?」
僕は唖然とする。
「私が聞きたいわ。本当に何よ、これ。①矢藤くんが私のそっくりさんと撮った。②私が矢藤くんのそっくりさんと撮った。③矢藤くんのそっくりさんと私のそっくりさんが撮った。さあ、どれ?」
「僕も君も心当たりがないようだから①と②はないな。残るは③だけど、山田って生き別れた双子の姉とかがいたのか?」
「そんなのいないわ」
もちろん僕も双子の弟なんていない。
「もっと単純に考えれば、合成写真でしょうね。どんな目的があるのか分からないけど、こんなことをするなんて最低だわ」山田はプリクラを見て顔をしかめた。「こんなベタベタ矢藤くんとくっついてるなんて、これじゃあ本当に付き合ってるみたいじゃない!」
しかし、それだけではなかった。
ある祭日の昼、本を読んでいるとケータイが鳴った。山田のマネージャーからの電話だ。
『矢藤くんってパソコン持ってたっけ?』
「ノートなら持ってますけど」
『パソコンのメールアドレス教えてくれない? すぐに見て欲しい動画があるの。さっき、テレビで放送されたばかりのものなんだけど……』
僕は山田のマネージャーからデータで送られてきた動画を見て、絶句してしまう。
そこには街中でインタビューを受けるカップルが映っており、それはどう見ても僕と 山田にしか見えなかった。しかも、僕たちはマイクを持ったインタビュアーに関係を聞かれると、声を揃えて「付き合ってます」と答える始末だ。
頭が痛くなる。
「何ですか、これ。僕たち、街を並んで歩いたことなんて、ないですよ」
『やっぱり。華子ちゃんも同じ反応だったんだけど……』山田のマネージャーは泣き出しそうな声だった。『これってどういうことなのかな? 矢藤くんと華子ちゃんの、そっくりさんがいるってこと?』
「分かりません。それより、山田の大丈夫なんでしょうか? モデルに恋人がいると発覚するのは、問題じゃないですか?」
『もちろん影響はあると思う。華子ちゃんは「純情さ」で売り出してたし。でも、比較的そういうことに緩い事務所だから、所長に怒られるなんてことはないと思う。安心して』
山田のマネージャーと電話を切ると、何件かメールが来ていた。どれも『テレビ見たよ。ヒューヒュー』という手の内容だった。
それに苦笑している余裕すら、今の僕にはない。
最も現実的な考えは、テレビ局が嘘の映像を作ったということになるだろう。しかし、それをしてどんなメリットがあるのだ、と聞かれると何の答えも返せない。街角インタビュー程度のものに、金をかけて虚像を作る価値なんて全くないだろう。
山田のマネージャーが言っていたような、「そっくりさん」の可能性はありえるだろうか。
いや、今の医療に僕は詳しいわけではないが、どんな金をかけて整形したとしてもあそこまで他人に似せることは不可能のように思える。
山田の考えも聞いてみたいところだったが、仕事中らしいので電話をすることができない。
この前の一件で、倉山先輩が裏で何か握っている可能性は多いにあるが、彼女に電話をすることもためらわれた。何を要求されるか分からないし、それが倉山先輩の狙いかもしれない。倉山先輩は最終手段だ。
そうやって悶々としながら、夕方まで自宅で過ごしていた僕のところに、友達から一通のメールが届く。
『大箱公園なう。熱々の矢藤と山田見たよ! (^^)/』
僕はケータイと財布だけを持って家を出ると、大箱公園へ自転車を走らせた。
◇
大箱公園は郊外にある、一般の学校の校庭の二倍ほどの大きさの、自然公園だ。
僕が公園に着いたときには、すでに日は落ちていた。駐輪場に自転車を止めると、僕は息を整えることさえせずに公園の中へと入っていった。
人気のない公園内は、静まり返っていた。
途中、武器になりそうなものを持ってないことに気づく。僕は茂みに入ると、手のひらに収まる程度の大きさの石をいくつか拾って、ポケットに詰め始めた。
「『僕』自身のことなんだから、そんなに警戒する必要はないじゃないか」
僕はぎょっとする。背後から突然声をかけられたからではない。その声が、紛れもない自分自身の声だったからだ。
僕は石を握ったまま振り返ると、いつでも次の行動に移れるように低い体勢を取る。
「まあ、『僕』ももし逆側の立場だったら、君と同じ行動を取ると思うけどね」
『彼』はそう言って肩を竦める。声だけでなく、公園の街灯に照らされる容姿も、紛れもない僕自身のものだ。
思わず息を飲む。
しかし、そこに鏡があるわけではない、ということは明白だ。僕と彼には決定的な違いがあった。
彼の隣には『山田』がいた。
美しく長い黒髪。街灯に輝く白い肌。人形のように整った顔立ち。そして、左手の人差し指のシルバーの指輪。それは、僕が山田にプレゼントしたことになっている、ネズミの国のお土産だ。
紛れもない、僕のカソレンの相手である山田の容姿だった。しかし、その山田は今、モデルの仕事中でマネージャーといるはずだ。
つまり、僕の目の前にいる『二人』は偽者、あるいは――――
「偽者でもそっくりさんでも何でもいいさ。基本的に『僕』は君であり、『山田』は山田なんだからね」
「違う」
僕は否定する。
もし、相手から敵意を感じていたら、こうも冷静でいられなかったかもしれない。しかし、『二人』からはむしろ、友好的な印象さえ受けた。僕は茂みに手に握っていた石を投げ捨てると、立ち上がる。
「『お前たち』は僕たちじゃない。僕たちは間違っても、そんなふうに仲良く手を繋いだりはしないからね」
僕の前に並んで立つ、彼と『山田』の手は結ばれていた。二人とも小さく微笑み、僕から見ても二人は幸せそうな「お似合いのカップル」に見える。
僕と山田は、決して付き合うことなんてない。その決定的な違いが、目の前の二人が偽者であることを語っている。
「君は少し頭が固いな」
僕は自分と同じ姿をした男に揶揄され、少しむっとする。そんな僕に余裕の笑みを浮べ、彼は言う。
「質問だ。君は彼女――山田華子のことをどう思ってる?」
僕はすぐには答えられなかった。僕と山田の関係は、一般のものではない。恋愛関係にあるわけでもないが、それでもクラスメイト以上の関係であることは確かだ。それを何と称したらいいのか、僕はわからない。
「でも、たぶん、大事な存在だ」
「そうだろう。『僕』も『山田』はたぶん、大事な存在だ」
そう彼が言うと、『山田』は「『たぶん』って何よ」と肘で小突いた。
「仕方ないだろう。『僕』は自分が大好きなんだから。でも、相手ももちろん大事だ。それは君も同じだろう? そして『山田』と彼女も、きっと同じだ。ほら、『僕』たちは何の違いもない。同じものだ」
「無理矢理な、屁理屈だ」
「そうだね」彼は笑ってうなずいた。「確かに、無理矢理かもしれない。でも、事実さ。『僕』と『山田』と君たちの違いなんてない」
「違いがないなら、何でお前たちは本当の恋愛をしていて、僕たちは仮想の恋愛をしているんだ?」
「それは、君たちが本物で『僕たち』が偽者である違いと、ほとんど同じだろう」
要領を得ない、無意味な問答だ。結局、僕たちと二人が違うものなのか、そうでないのか、さっぱりわからない。
「違うけど、違わない。矛盾というものは、思いのほか簡単に成り立つのさ。君たちのカソレンだって、そういうものだろう?」
付き合っているけど、付き合っていない。確かに、カソレンはそういった矛盾の上にある。
「それで、お前たちの目的は何だ?」
僕がそう問うと、彼は呆れたように肩をすくめた。隣の『山田』はくすくす薄く笑う。
「言ったでしょう? 『私たち』とあなたたちは同じものだって。あなたたちが平穏を求めてカソレンを始めたように、『私たち』もそうやって交際を始めたの。別に取って代ってやろうだなんて思ってないから安心しなさい」
「『僕たち』は君たちのプラスになることはしても、マイナスになることはしない」
「「何故なら――」」
パチンという乾いた音と共に公園にある全ての街灯の明かりが消える。しかし、それは瞬きをするほど一瞬のもので、すぐに街灯は光出し、辺りは元の明かるさを取り戻した。
二人はまるで夕日が見せた蜃気楼のように、僕の前から姿を消していた。
休日だが山田はモデルの仕事があったので、僕は自宅でのんびりと、本棚の文庫本を並び替えて遊んでいたところだった。
しかし、本棚を一般文芸とライトノベルに分類わけしようとしたことはいいが、「そもそもライトノベルの定義とは何だ」という疑問に、ぶち当たってしまっていたのである。
「あ、倉山先輩ちょうどいいところに電話して来ましたね。今、僕が好きな作家のシリーズものが、ライトノベルかどうか悩んでいるんですよ。あの、『戯れ言だけどね』って寒い台詞が口癖のやつです。先輩はどっちだと思いますか」
『「ライトに人が死ぬ」という意味で、ライトノベルだよな。面白いけど』
倉山先輩の答えは投げやりなような、的を射ているようなものだった。
『それより矢藤、今暇か?』
「『ミステリーに萌えが必要かどうか』という考察を、日記にまとめるくらいには暇ですね」
『つまり、山田ちゃん以外の女性とデートするくらいには、暇ってことだな』
「倉山先輩をエスコートする自信なんて、僕にはないです。無理です」
『なんで俺が矢藤とデートせにゃあかんのだ。ぶっちゃけるが、お前は俺の好みじゃないんだよ』
そんなことを言われたのは生まれて初めてのことで、僕は少し新鮮な気持ちになる。まあ、倉山先輩に釣り合う濃さの男性は、日本人にはいない気がする。容姿の面でも、性格の面でも。
「それで、何の用ですか?」
『何、大したことない。ちょっとした浮気調査だ』
僕は倉山先輩の手伝いで、何度か「浮気調査」をしたことがある。
ただ、それはある女性の彼氏が他の女性と交際がないかを調べる探偵の仕事のような調査ではない。
僕が倉山先輩からアルバイトとして任されるのは、「その人に浮気癖がないかを調べる調査」だ。
自分たちの愛が本物かどうか、確かめたがるカップルは結構いるらしい。少なくとも、倉山先輩の懐が潤うくらいにはいることは、確かだ。
僕はそんな彼氏のいる女性と一日行動し、彼女が浮気しないかということを調べる。
何故その役割に僕が抜擢されたかというと、倉山先輩いわく「矢藤は一般的に見てこれ以上とないくらい、いい男だから」だそうだ。
倉山先輩にそう言われてもあまり嬉しくなかったのは、どうしてだろうか。
僕は確かに交際としてのデートは吐き気がするが、ビジネスとなれば話は別である。うちの学校はアルバイトが禁止なので、欲しい小説の新刊が出たときは、倉山先輩のお世話になっていた。
彼氏のいる女性が僕に浮気した割合は、伏せておこうと思う。ただ、「愛なんてそんなもんだ」とだけは、言っておく。
だから、今日もその手のものだと思って、待ち合わせに指定された喫茶店のカウンター席に座り、相手を待っていた。しかし、どういうわけかやって来たのはお洒落な内装に相応しくない野暮ったい学校指定のジャージ姿の太眉だった。
どこからどう見ても、我らが倉山先輩である。
「よう。待ったか」
「あまり待ってませんが、帰ってもいいですか?」
「あまり時間は取らせねえよ。ほら、奢るから好きなもん頼め」
あまりお腹は空いていなかったが、僕はホットコーヒーとクラブサンドセットをマスターに注文する。
「俺も同じやつを」
「えー」
思わず不満の声が出てしまう。
「……なんだよ。そのとてつもなく嫌そうな顔」
「いや、何が悲しくて倉山先輩と同じメニューを頼まなくちゃいけないんですか」
そんなことするなら山田と二人で、本当にネズミの国にデートしに行った方が……生理的に、ぎりぎりイーブンといったところだろうか。
「マスター。僕やっぱり紅茶とティラミスのセットで」
「えー」
マスターが拒否したので、僕はカウンター席に倉山先輩と二人並んで、クラブサンドをかじることになった。
「それより、浮気調査だったんじゃないんですか? 倉山先輩が来てどうするんです」
まさか、倉山先輩が僕に浮気しないかを調べるのだろうか。いや、それだと、倉山先輩に彼氏がいることが前提なのだが……嫌な想像をしてしまった。
「お前は何か勘違いしてるな。今回は、ごく一般的な意味での『浮気の調査』だ」
「はあ……誰のですか?」
「誰って、お前のだよ」
倉山先輩が指を差す先の向こうには、布巾でテーブルを拭くマスターの姿があった。
「馬鹿垂れ。『お前』というのは、矢藤のことだ」
「はあ、僕ですか。なるほど……あれ?」僕は危ういところで、納得しそうになる。「ちょっと待ってください。僕って別に誰か、付き合っている女性がいるわけじゃないじゃないですか」
すると、倉山先輩は呆れた顔をした。
「まさか、忘れたのか? いくら何でもそれはサイテーだぞ。山田ちゃんが、お前のカノジョだろが」
「違いますよ。山田は付き合ってるふりをしているだけで、カノジョではないです」
「お前たち自身はそう思っているかもしれないが、カソレンだって立派な恋愛の形だと俺は思うぜ。だから、最近は気を使って、お前や山田ちゃんに『浮気調査』の仕事を回さなかったんだ」
「やめて下さい。何だか、寒気がします」
僕と山田が本当に付き合っているとか、倉山先輩が気を使うとか色々なことに。寒いのは部室だけにして欲しい。
というか、山田も浮気調査の仕事をやっていたことを、僕は初めて知った。 どういうところで倉山先輩と山田が繋がっていたのか気になっていたが、そういうことなら納得だ。
「それで、矢藤。俺に逆らうと怖いことになるのは知っているな」
「五厘は勘弁して下さい。ベッカムヘアなら、まだいける自信があるんで」
「だったら正直に答えろ。お前、山田ちゃん以外の女と、デートしたりしてるか?」
「まさか。そんなことありえません」
僕はぶんぶんと、音が鳴るくらい勢いよく首を振る。僕がビジネス以外で女性とデートする、そんなこと考えるだけでも悪寒が走った。それは地球が逆立ちすることより、ありえないことだ。
「そうか。まあ、そうだよな……」
倉山先輩は安心したような、残念がるような複雑な顔をした。
「お前がカソレンを通して、女性と恋愛することを覚えてくれれば、それはそれで俺は嬉しかったんだが」
「倉山先輩。そういうのを余計な心配って言うんですよ」
「違いない」
倉山先輩はニヤリと笑った。この人のことだから、純粋な心配ではないのだろう。さらに余計である。
「そもそも、何でこんな疑惑が上がったんですか? それくらい、教えてもらってもいいでしょう?」
「まあ、いいだろう。情報源は伏せておくが、街でちらっと矢藤が若い女性とデートしているのを、見たやつがいるんだ。お前、女の親戚と街出歩いたことあるか?」
「最近はないです。僕に姉や妹はいませんし、親戚はみんな関西ですから」
若い女性と聞いて、僕は山田のマネージャーを連想する。しかし、僕は彼女とメールや電話で連絡を取り合うことはしているが、直接会って話したことはほとんどない。
「山田ちゃんと実際にデートしたこともないか?」
「ないです。たぶん……というか絶対、人違いじゃないですか」
僕がそう言うと、倉山先輩は「なるほど」と神妙な顔をして考え込んだ。その顔はどこか、疑いを捨てきれていない。
もしかすると、倉山先輩は、僕らしき人が女性とデートをしているという証拠を、握っているのかもしれない。
突然、喫茶店内に着信音が鳴り響いた。音は倉山先輩のポケットからだ。
「ちょっと悪い」
倉山先輩は通話を始めようとするが、マスターが『店内で通話はおやめください』という張り紙を指差したので、短く舌打ちをして店の外に出る。
しばらくして、倉山先輩は戻ってきた。
「疑って悪かったな。矢藤の浮気の疑いはもう晴れた」
呆気ないほど簡潔に、僕の浮気容疑は払拭された。
それじゃあ用が出来たから、と倉山先輩はマスターに代金を払うと、「ばいびー」と手を振って去って行った。
その表情が「面白いことになってきたぞ」と語っているのが、どうにも気になった。
◇
「昨日の放課後、駅前の喫茶店で、キスをしてる矢藤と山田を見たよ」
そうクラスメイトに言われたとき、僕は怪訝な顔をした。全く身に覚えがない話だったからだ。
「人違いじゃないかな」
「いや、あんな美男美女のカップルは、お前たち以外にいないよ。別に付き合ってるんだから、キスくらいするさ。恥ずかしがることないだろう?」
帰りの電車で山田に、僕との打ち合わせなしに作った「喫茶店でキスをした」という作り話を友人たちに話したか、と聞いてみた。
「それとも、僕以外の男性と一緒にいたか?」
「心当たりが全くないわ。何よ、それ」
山田は驚いた顔をした。彼女はとても嘘をついているようには見えない。一応、彼女とマネージャーの行動についても聞いてみる。
「彼女とは昨日は仕事で、夜までずっと一緒にいたわ」
それからもおかしなことは起こった。
次の日、学校で山田は「意味が分からない」とぶつぶつ呟きながら、僕の腕を引っぱって空教室に連れて行った。
「これ、何?」
山田の口調はいつもの落ち着いた様子がなかった。切羽詰っている感じがする。
僕は山田の手にある、一枚の紙を見た。いくつもの小さい写真がプリントされたもので、プリクラだということが分かる。
「これがどうしたんだ?」
「このプリクラに映ってる二人を、よく見て」
言われて、僕は目を凝らしてプリクラの写真を見る。思わず「え」と声を上げてしまった。
プリクラには僕と山田としか思えない、二人の男女が仲の良さそうに寄り添って映っている。
これではまるで恋人同士だ。
「このとてつもなく気持ち悪い写真、何? どこで拾ったんだ?」
「さっき別のクラスの女子生徒に『これ、山田さんと矢藤くんだよね。すみれ野駅前のゲームセンターのプリクラに、一枚残ってたのを偶然見つけたの』って言われて渡されたのよ」
「……なんだこれ?」
僕は唖然とする。
「私が聞きたいわ。本当に何よ、これ。①矢藤くんが私のそっくりさんと撮った。②私が矢藤くんのそっくりさんと撮った。③矢藤くんのそっくりさんと私のそっくりさんが撮った。さあ、どれ?」
「僕も君も心当たりがないようだから①と②はないな。残るは③だけど、山田って生き別れた双子の姉とかがいたのか?」
「そんなのいないわ」
もちろん僕も双子の弟なんていない。
「もっと単純に考えれば、合成写真でしょうね。どんな目的があるのか分からないけど、こんなことをするなんて最低だわ」山田はプリクラを見て顔をしかめた。「こんなベタベタ矢藤くんとくっついてるなんて、これじゃあ本当に付き合ってるみたいじゃない!」
しかし、それだけではなかった。
ある祭日の昼、本を読んでいるとケータイが鳴った。山田のマネージャーからの電話だ。
『矢藤くんってパソコン持ってたっけ?』
「ノートなら持ってますけど」
『パソコンのメールアドレス教えてくれない? すぐに見て欲しい動画があるの。さっき、テレビで放送されたばかりのものなんだけど……』
僕は山田のマネージャーからデータで送られてきた動画を見て、絶句してしまう。
そこには街中でインタビューを受けるカップルが映っており、それはどう見ても僕と 山田にしか見えなかった。しかも、僕たちはマイクを持ったインタビュアーに関係を聞かれると、声を揃えて「付き合ってます」と答える始末だ。
頭が痛くなる。
「何ですか、これ。僕たち、街を並んで歩いたことなんて、ないですよ」
『やっぱり。華子ちゃんも同じ反応だったんだけど……』山田のマネージャーは泣き出しそうな声だった。『これってどういうことなのかな? 矢藤くんと華子ちゃんの、そっくりさんがいるってこと?』
「分かりません。それより、山田の大丈夫なんでしょうか? モデルに恋人がいると発覚するのは、問題じゃないですか?」
『もちろん影響はあると思う。華子ちゃんは「純情さ」で売り出してたし。でも、比較的そういうことに緩い事務所だから、所長に怒られるなんてことはないと思う。安心して』
山田のマネージャーと電話を切ると、何件かメールが来ていた。どれも『テレビ見たよ。ヒューヒュー』という手の内容だった。
それに苦笑している余裕すら、今の僕にはない。
最も現実的な考えは、テレビ局が嘘の映像を作ったということになるだろう。しかし、それをしてどんなメリットがあるのだ、と聞かれると何の答えも返せない。街角インタビュー程度のものに、金をかけて虚像を作る価値なんて全くないだろう。
山田のマネージャーが言っていたような、「そっくりさん」の可能性はありえるだろうか。
いや、今の医療に僕は詳しいわけではないが、どんな金をかけて整形したとしてもあそこまで他人に似せることは不可能のように思える。
山田の考えも聞いてみたいところだったが、仕事中らしいので電話をすることができない。
この前の一件で、倉山先輩が裏で何か握っている可能性は多いにあるが、彼女に電話をすることもためらわれた。何を要求されるか分からないし、それが倉山先輩の狙いかもしれない。倉山先輩は最終手段だ。
そうやって悶々としながら、夕方まで自宅で過ごしていた僕のところに、友達から一通のメールが届く。
『大箱公園なう。熱々の矢藤と山田見たよ! (^^)/』
僕はケータイと財布だけを持って家を出ると、大箱公園へ自転車を走らせた。
◇
大箱公園は郊外にある、一般の学校の校庭の二倍ほどの大きさの、自然公園だ。
僕が公園に着いたときには、すでに日は落ちていた。駐輪場に自転車を止めると、僕は息を整えることさえせずに公園の中へと入っていった。
人気のない公園内は、静まり返っていた。
途中、武器になりそうなものを持ってないことに気づく。僕は茂みに入ると、手のひらに収まる程度の大きさの石をいくつか拾って、ポケットに詰め始めた。
「『僕』自身のことなんだから、そんなに警戒する必要はないじゃないか」
僕はぎょっとする。背後から突然声をかけられたからではない。その声が、紛れもない自分自身の声だったからだ。
僕は石を握ったまま振り返ると、いつでも次の行動に移れるように低い体勢を取る。
「まあ、『僕』ももし逆側の立場だったら、君と同じ行動を取ると思うけどね」
『彼』はそう言って肩を竦める。声だけでなく、公園の街灯に照らされる容姿も、紛れもない僕自身のものだ。
思わず息を飲む。
しかし、そこに鏡があるわけではない、ということは明白だ。僕と彼には決定的な違いがあった。
彼の隣には『山田』がいた。
美しく長い黒髪。街灯に輝く白い肌。人形のように整った顔立ち。そして、左手の人差し指のシルバーの指輪。それは、僕が山田にプレゼントしたことになっている、ネズミの国のお土産だ。
紛れもない、僕のカソレンの相手である山田の容姿だった。しかし、その山田は今、モデルの仕事中でマネージャーといるはずだ。
つまり、僕の目の前にいる『二人』は偽者、あるいは――――
「偽者でもそっくりさんでも何でもいいさ。基本的に『僕』は君であり、『山田』は山田なんだからね」
「違う」
僕は否定する。
もし、相手から敵意を感じていたら、こうも冷静でいられなかったかもしれない。しかし、『二人』からはむしろ、友好的な印象さえ受けた。僕は茂みに手に握っていた石を投げ捨てると、立ち上がる。
「『お前たち』は僕たちじゃない。僕たちは間違っても、そんなふうに仲良く手を繋いだりはしないからね」
僕の前に並んで立つ、彼と『山田』の手は結ばれていた。二人とも小さく微笑み、僕から見ても二人は幸せそうな「お似合いのカップル」に見える。
僕と山田は、決して付き合うことなんてない。その決定的な違いが、目の前の二人が偽者であることを語っている。
「君は少し頭が固いな」
僕は自分と同じ姿をした男に揶揄され、少しむっとする。そんな僕に余裕の笑みを浮べ、彼は言う。
「質問だ。君は彼女――山田華子のことをどう思ってる?」
僕はすぐには答えられなかった。僕と山田の関係は、一般のものではない。恋愛関係にあるわけでもないが、それでもクラスメイト以上の関係であることは確かだ。それを何と称したらいいのか、僕はわからない。
「でも、たぶん、大事な存在だ」
「そうだろう。『僕』も『山田』はたぶん、大事な存在だ」
そう彼が言うと、『山田』は「『たぶん』って何よ」と肘で小突いた。
「仕方ないだろう。『僕』は自分が大好きなんだから。でも、相手ももちろん大事だ。それは君も同じだろう? そして『山田』と彼女も、きっと同じだ。ほら、『僕』たちは何の違いもない。同じものだ」
「無理矢理な、屁理屈だ」
「そうだね」彼は笑ってうなずいた。「確かに、無理矢理かもしれない。でも、事実さ。『僕』と『山田』と君たちの違いなんてない」
「違いがないなら、何でお前たちは本当の恋愛をしていて、僕たちは仮想の恋愛をしているんだ?」
「それは、君たちが本物で『僕たち』が偽者である違いと、ほとんど同じだろう」
要領を得ない、無意味な問答だ。結局、僕たちと二人が違うものなのか、そうでないのか、さっぱりわからない。
「違うけど、違わない。矛盾というものは、思いのほか簡単に成り立つのさ。君たちのカソレンだって、そういうものだろう?」
付き合っているけど、付き合っていない。確かに、カソレンはそういった矛盾の上にある。
「それで、お前たちの目的は何だ?」
僕がそう問うと、彼は呆れたように肩をすくめた。隣の『山田』はくすくす薄く笑う。
「言ったでしょう? 『私たち』とあなたたちは同じものだって。あなたたちが平穏を求めてカソレンを始めたように、『私たち』もそうやって交際を始めたの。別に取って代ってやろうだなんて思ってないから安心しなさい」
「『僕たち』は君たちのプラスになることはしても、マイナスになることはしない」
「「何故なら――」」
パチンという乾いた音と共に公園にある全ての街灯の明かりが消える。しかし、それは瞬きをするほど一瞬のもので、すぐに街灯は光出し、辺りは元の明かるさを取り戻した。
二人はまるで夕日が見せた蜃気楼のように、僕の前から姿を消していた。
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