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第三話 ステータス

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 なるほどなー。
 大精霊様(名前は無いらしい)に色々と聞いて、この世界についてだいぶ詳しくなることができた。

 まず、良い知らせから発表していこう。この森は「世界樹」っていう、生命の源になるエネルギーをこの世界の住民に与えているばかデカい木の周りにあるものらしく、世界樹大森林っていう名前らしい。
 世界樹だよ世界樹!異世界テンプレわっしょいわっしょい。素晴らしス!葉っぱ食べれば生き返れるかな?

 よし、次行ってみよう。俺が飲み込んで腹痛を起こした光るタマゴは、「大精霊の宝玉」っていう世界樹から定期的に排出される玉なんだそうだ。
 それぞれに一体ずつ、スキルを持った精霊が宿っていて、玉を見つけたら、それに触れることによって精霊が乗り移って、その精霊のスキルを使うことができるようになるらしい。この系統の玉にはランク分けがピンからキリまであって、「精霊の玉」っていう大して使えないスキルを宿した玉から、「大精霊の宝珠」とかいう、伝説レベルの超レアなスキルを持った玉もある。俺の飲み込んだ「大精霊の宝玉」は、その間くらいに位置するランクのアイテムだった。精霊様の実績によって、玉のランクが移り変わっていくらしい。

 もう一回玉に触れば、精霊が玉に戻って、スキルも消えてしまうようだ。……そう、俺はなぜだか腹の中で玉を壊してしまったようで、ふつう玉を壊すと、精霊の呪いを受けて問答無用に殺されるらしいんだが、俺の場合はすぐに大精霊様が俺の身体に乗り移った。だから、呪いも受けなかったし、スキルも手放せなくなったってことらしいね。

 えーっと、あと、一番びっくりしたのは、この世界には「レベル」の概念があるってことだ。どうやらここの世界の「神」っていう存在(正確には女神様らしい)は俺たち住民と直接的な関わりを持つことが好きだから、他の命を刈り取って、魂のエネルギー(いわゆる経験値)を女神様に献上すれば、その量に従ってレベルを上げてもらえるらしい。
 ゲームの感覚と同じで、レベルが上がれば身体能力が上がるし、種ごとに決まった固有スキルも与えてもらえるんだそう。
 そこで、どう経験値を献上すればいいのかって話だけど、それには必ず「精霊の玉」系のアイテムが必要なんだと。精霊たちは女神様の使いだから、精霊を介して女神様に経験値を譲ることができる。これにはどんな種類の「精霊の玉」を使っても、効果は変わらないらしい。

 ……とまあ、神様がほとんど住人たちに干渉しない、見守るだけの元の世界から来た俺の観点からすると、あまりにカルチャーショックがでかいことばかりだったけど、それと同じくらいワクワクも止まらなかった。
 ちなみに、気になっていたアルカナスキル「皇帝」とかいう能力?のことについて聞いてみると、なにやらこの能力はスキル「統率」っていうものの上位互換の、最高位に位置するスキルらしい。
 肝心の内容はというと、他の魔物に一定時間触れていることで、その魔物を必ず自分の仲間に引き入れることができるというものだそうだ。加えて、互いに経験値の一部を譲りあうことができるし、仲間の持っているスキルの一部も使えるようになるとのこと。

 …………どう思う?絶対チート能力だよね?これ。
 同じ「統率」系統の下位のスキルは、触れている必要のある時間が長いし、必ず仲間にできるとも限らないらしく、使い勝手が悪いらしいけど、「皇帝」は他と一線を画すみたいだ。

 先ほどの主人公フラグ立て作戦が功を奏したのかは分からないけど、この大精霊様との出会いはきっと俺のヘビ生に役立つだろうね。仲間を簡単に増やせるっていうのはやっぱりでかいと思う。


 あと、俺が異世界から転生してきたって大精霊様に伝えると、最初は全く信じてなかったっぽいけど、俺の頭の中を覗いてみたら、全く知らない世界での生活が本当に営まれていたから、俺が魔物にしては知能が高いことも含めて、どうやら納得してくれたらしい。

 ……そうそう、うちの大精霊様、けっこう残念だった。いや、スキルは優秀だし、精霊としての格は高いみたいだけどさ。俺の脳内に残ってる記憶の中でRPGゲームを見つけて、ドハマりしてしまったらしい。

 <<なっ、なんだこれっ!?やべぇ、異世界楽しすぎでしょ!!お前、このゲームやっててくれてありがとうな!>>

 だとさ。俺からしたらこっちの異世界が楽しいんだけどね。

 話が逸れた。大事なのはここからだ。半分良い知らせ、半分悪い知らせ。
 ダメもとで、例のハマってるゲームとか、他の内のラノベで出てくるような「ステータス画面」なり、「鑑定スキル」みたいなものをこの世界で再現するのは無理かって聞いてみたら、<<できるよ?ちょっと待っててくれ>>の二つ返事で、本当にやってくれたのだ。
 試しにステータスオープンと念じてみると、視界の隅に白いウィンドウが開いて、以下のような内容が表示された。


「[種族名] ローセルぺナス(幼体) LV:1

[説明] 小型のヘビの姿をした最下位種の魔物。弱い酸性の毒を持つ。人間によるランク付けはFランク。

[種固有スキル]
<取得済み>
初期スキル:胃強化LV1:胃を強化する。本体のレベルの上がりに応じてレベルアップする。
初期スキル:毒牙:牙で噛みつくと、毒が注入される。
<未取得>
取得LV5:蛇睨み:恐怖に耐性の無い相手の目を見ることで、短時間動きを鈍くさせる。

[精霊スキル]
<大精霊の宝玉>アルカナスキル「皇帝」:どんな魔物であれ一定時間触れていることで敵対心を消し、仲間にすることができる。スキル系列「統率」の最上位スキル。

[ステータス]
HP:9
MP:3
筋力:6
魔力:2
防御力:3
瞬発力:7
持続力:4 」


 …………!!! ステータスがオープンしたッッ!SUGGEEEEEEE!!!

 それが最初の感想。そして、次に思ったのは

 ファッ! 俺、YOEEEEEEE!!!

 くっそー!はぁ……はぁ……。
 うん。

 あっ、そうか!きっとステータスは10段階中の評価なんだよ!そう考えると瞬発力とか強いし……ね?そうだろう?

 なんていう風に、望みをかけてみたけど、大精霊様にそんなわけないだろって、いとも容易く切り捨てられた。

 この世界では、一般の成人男性で、大体ステータスの平均は150前後らしい。
 いや、ほんと。くっそ弱いっすよ俺。なんやねんFランクって……。
 前の世界の一般ヘビと、本当に同じ程度っぽい。そこらへんの野郎にスコップで首切られたら死ぬんだよ。こんなことあり得るかい?おいら転生者なのに。もう少しサービスをくれよ……。

 なんて愚痴っていると、大精霊様が俺に良いことを教えてくれた。
 この世界の魔物は、進化するんだと。
 レベルアップとか、特定の条件を満たすと、進化するんだと。人間は、進化できないんだと。
 そうだよな、進化とか無いと、わざわざ説明の欄で最下位種とか書かないよな。

 ……ふはは、俺にも春が来たかもしれない。
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