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第四話 初めての戦い――ニーズホッグ戦

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 十七支柱――それはこの世界において、最も高い戦闘能力を有すると言われている十七体の生命体をまとめて指す呼び名だ。
 そのほとんどは優秀な異能を持ち合わせており、それに加えて能力の扱いに長けていると言われている。オレはギリギリ、その中の一柱に加わることができていない実力者のうちの一人なのだ――オレはこの世界で生まれ育ったが……生まれつき、とある「異能」を持っていた。

桑弧蓬矢ソウコホウシ」――それがオレの異能につけられた名前だ。弓に能力を一体化させ、魔力の込もった髪を矢として捧げ、狙い通りに遠い距離を射る。単純な能力だが、繰り出される強力な遠距離攻撃は、近距離型かつ攻撃力重視の強者たちには恐れられている。

 ところでだ――今オレはとある砂漠の宿屋にて休んでいるのだが、前方三キロメートルほどの地点から強い魔力を感じたと思って見てみると、何やらモゾモゾと蠢いている者があった。その太く長い姿にオレはすぐにピンと来て――輝彩の弓矢に燃え盛る髪の毛を十三本あまりつがえ、上空へと向けて構えたのだった。

***

 太陽の進む方向とは逆に――東に向かって歩き続けて半日ほど経っただろうか。今俺は、月明りに照らされた薄暗く寒い砂漠を、休み休み進み続けている。
 寒いとは言っても、バリアーの形の変え方がなんとなくわかったので、自分へ向けてバリアーを張り身体を包み込んで、熱を逃がさないようにしているから、少しはマシなのだが。

 その時だった。辺りで地響きがし始め、何事かと思って周りを見回していると、前方の砂が一気に数メートルほど盛り上がり、中からテカテカと光る柱のようなものが姿を現した。


「シャーッシャッシャッシャッシャ!オデはニーズホッグ、ここらの砂漠を治めてる十七支柱の一柱だぜ――おめえみたいなか弱いニンゲンがこんな場所にイッタイ何の用だあい?……そっかそうかあ、オデの栄養になって蓄えられてえんだなあ?よおし、ならばシネえええ!」

 そう叫んでその大きな口をした巨大なミミズは、高く突き上げた胴体を俺の方へと倒してきた。

「ッ! 鏡の世界ミラーゾーン!!」

 恐怖を感じた俺は咄嗟に両手で上向きにバリアーを展開し、ニーズホッグにかかった重力のエネルギーをそっくりそのまま跳ね返し、腕を横へ傾けてその胴体を投げ飛ばしてやった。
 ミラーゾーンに与えられたのと同じ分だけの力を跳ね返すから、俺の腕には一切の負担が無いというわけだな――相手が強ければ強いほど、その強さをそっくりそのまま反映できるということか。少しズルい能力かもしれない。

「なっ……か細いニンゲンのくせにこのオデのボディプレスを素手で受け止めただと……?きっと何かの間違いだ……今度こそシヌが良いぞ!!」

 ニーズホッグはその太い円柱形の身体をうねらせ勢いよく俺に近づいてきたが、俺は今度もそれを直立の姿勢からバリアーで受け止め、軌道を横へと逸らしてやった。
 砂丘に頭を突っ込んで大穴を開けたミミズはまた俺の方へと向かってくる……かと思いきや、こちらを向きながら黙りこくっていて、何だか様子がおかしい。
 
「オ、オデのことをコケにしやがって、もう許さんぜッ!灼熱のマグマの『地熱』を蓄えた――異能『ソフト・セル』の最終奥義ッ!『キュベレの怒り』!」

 こいつも異能持ちだったんだな――最終奥義か……何かヤバそうな名前だが、ここまでの戦いを見ている限り、バリアーの変形をできるようになった俺に効く攻撃など、コイツには無さそうだ。

 俺は全身をミラーゾーンで包み込み、守りの体勢に入ったところへ、ニーズホッグはまさしく「青の爆炎」と表現するがふさわしいような、真っ青に燃え盛る炎を俺に向かって発射した。
 もちろん、俺の本体にダメージは少しも無い。まるで映画館にて、迫力のあるハリウッド映画のワンシーンを眺めているかのような気分だ。

 青い炎が目の前から消え去った時、さっきまでニーズホッグが威勢よく暴れまわっていた砂地はまっ黒に焼け焦げ、ニーズホッグの白い皮膚も丸焦げになって無惨に横たわっていた。……自滅、だよな。
 とりあえず難は逃れたか――「鏡花水月」を上手く使いこなせていなければ、確実に負けている相手だっただろう。


スコッ

 ……何だ?
 後ろを振り返ってみるとそこには、地面に一本、めらめらと燃え盛る深紅の矢が突き刺さっていた。

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