白狐

〽︎巳鷹田・葛峯

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 ザーザー雨が降っている。
今日の仕事は遠出しないといけないのだが、雨ってのは、どうしてこう悪い頃合いに降ってくるんだろう。
 そんなことをぐちぐち言ってても仕方がないし、今日は仕事に行かないといけない。いつもより寒いのは我慢して、早く外に出ないとな。
僕が住んでるのは、町から何十キロと離れた草原。天気と生物を調査する仕事をしているので、たまに調査結果を届けに行かないといけない。紙に書くので、雨の日に届けに行くのは怖いものだ。一応国に届ける物なので、耐水紙で、インクも耐水性のものだが、そうわかっていても怖いというのが生き物の性である。
特に意味もなく立ち上がったり座ったり、廊下を行き来してみたり…。そうこうしてるうちに雨がやまないかな、と小さな窓をちらちら見ていた。それも、2、3分おきに。窓枠のところに手を当てて、指をぐるぐるさせながら、外をじーっと見つめていると、びゅうっと、何か通りすがった。
なんだろう。ポケットに手を突っ込んで、対象から目を逸らさないように。手探りで、ポケットを探し回る。あった。双眼鏡だ。早くしないと、逃げてしまうから、急いで双眼鏡を目に当てると、正体はすぐにわかってしまった。
なんだ、すぐに興ざめた。
正体は白狐だ。なんの変哲もない、ただの白狐。
上官に少しいい報告ができると思ったのにな。
ここらではあまり見ないものの報告ができれば、研究にも役立つと思ったのだが、僕はがっかりして、なおさら外に出るのが億劫になってしまった。
でも、どうだろう。
白狐の正体など、誰も知らないだろう。
ならば、白狐の研究など、面白いのではないか。
ここらでは、白狐に触るどころか、近づく事ができた人もいない。
知っているようで、全く知らない、近いようで、滅茶苦茶に遠い。それが白狐ではないか。
それに、興味を持って研究したものなど、前代未聞だ。もし、僕がこの地に伝わる「白狐の伝説」の正体を暴けたら。それは、まだ誰もみたことがない、論文になるだろう。次回からは、生態報告をする時、白狐についても書こう。
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