Beauty and Beast

高端麻羽

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Beauty and Beast ・死街・

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藪に行く手を遮られ、張り出した根に足を取られ、小枝に服を引っ掛けながら、どれだけ道なき道を走ったのか、アルフィーネはブルーの案内で樹海を抜けた。
走り続けたからだは疲労していたが、ようやく周囲が開け、司会が広がったような安ど感に胸をなでおろす。
前方に伸びる小道の先には、かつてフーガ国の中心地であった街があるはずだ。そこまで行けば、通用門の場所もわかる。
国境には『風の刃』の壁があるが、とにかくこの場から少しでも離れたかった。

「……!!」
だが、一歩街に足を踏み込んだアルフィーネは言葉を失い、その場に立ち尽くす。
風の結界で粉塵が舞い続けている為か、フーガ国の空は日夜 薄雲に覆われている。そして、その下には死の廃墟が
広がっていた。
建物という建物は、まるで大地震が戦の後のように破壊され、長い年月 風雨にさらされていた為に朽ち果てている。
噂ではフーガ国は整然とした美しい国だったらしいのに、あまりにも無残な荒れようだ。
しかし何よりもアルフィーネの胸を痛めたのは、フーガ国の住民と思われる細切れの遺体が、至る所に放置されたままである事。
昨夜、魔物の放った『風の刃』を思い出す。
アルフィーネが身に着けていたマントは、軽量だが丈夫な旅仕様の物。それを魔物の起こした一陣の風は、薄皮一枚の如く引き裂いてしまった。
───あんなふうに建物も、人間をも裂いてしまったのまだろう。『風』どころではなく『嵐』か『竜巻』だったのかも知れない。
史実として招致していたし、残虐なのは魔物の本質なのだろうけど……
(…いくら何でも酷すぎる…)

アルフィーネは恐怖と共に怒りを感じ、背筋を走る寒気に我が身を抱きしめた。
帰還を催促するようにブルーがアルフィーネの頭上を飛び回る。しかし、使命感のような強い意志がアルフィーネをその場から逃げ出す事を許さなかった。

「……ごめんね、ブルー。ソロ達に伝えて。せっかく迎えに来てくれたけど……私は、まだ帰れない……」
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