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Beauty and Beast ・策謀・
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その頃、剣士ソロはセレナーデ国王城の謁見の間にいた。
アルフィーネが連れ去られた後、ソロは夜明けを待って愛鳥にアルフィーネを探させ自分は早馬で一昼夜 不眠不休でセレナーデ国戻り、薬草を届けた。
本当はその足でフーガ国にトンボ返りしようと思っていたのだが、セレナーデ国王・ロンドに引き止められ、不本意ながら今に至っている。
向き合うロンド王にはソロの不機嫌がひしひしと伝わっていた。
「ご苦労だったな、ソロ。おかげでマドリガルは小康状態に戻った。感謝するぞ」
とりあえずロンド王は謝辞を述べる。
即位して間もない若き国王ロンドは、王子時代から社会勉強と称して身分を隠しては諸外国を旅して回っており、剣士ソロと知り合ったのも、忍びで城下を散策している
時だった。
ソロは生来の無頓着さでロンドの身分を知った後も、その親しみを込めた慇懃な態度を変える事は無く、庶民派の王は彼をいたく気に入っているのだが。
「礼を言う相手が違うだろ」
不遜な口調でソロは言い放つ。
「薬草を手に入れた功労者はフィーネなんだ。それが魔物に捕まったのに、いつまでのんびり構えてるつもりだ!?」
責めるように怒鳴り、ソロは床に拳を叩きつける。
事実、彼は怒っていた。
平民の身ではあったが、剣士ソロの名は文字通り一騎当千の戦闘能力で諸国に聞こえ魔物や盗賊団に悩む国主などは、わざわざ彼を訪ねて来てまで退治の依頼をする事もある。
ソロ自身それを生業としており、過去無敗・連勝記録更新中で評判だった。
ロンドの頼みがなくても隣国に棲む百目の魔物は、いずれ退治するつもりでいたし、アルフィーネの護衛を引き受けたのも、一つには腕試しが目的だったのである。
なのに、みすみすアルフィーネを攫われた上、魔物に一撃も返せなかった事はソロのプライドをいたく傷つけた。
こうなったら、あの魔物を倒しアルフィーネを無事に救出しないと気がすまない。
彼はアルフィーネとは顔馴染で、密かに想いを寄せてもいたのだから。
「オレはフィーネを助けに行くからな」
我慢も限界だとばかりにソロは立ち上がる。
友人であり良き理解者であるロンド王は、胸中察して余りあった。
「待て、ソロ」
「なんで止めるんだ!フィーネが殺されてからじゃ遅いんだぞ、今頃あの魔物に喰われてたりしたらどうする!?」
ロンド王はなるべく穏便に引き止めたかったが、やむなく重い口を開く。
「……実は、その…そのくらいの事は、覚悟の上だったのだ」
「───!?」
ソロは一瞬、ロンド王の言った意味がわからなかった。
「……何だって?」
「だから…、……魔物がアルフィーネに興味を示す事はわかっていたのだ。攫われるとは予想外だったが」
「どういう事だ!?」
掴みかからんばかりの剣幕のソロを制し、ロンド王は改めて語り始める。
「これを話したら、お前が反対するのは目に見えていたから黙っていたのだがな……ソロ、あの『百目の魔物の伝説』は知っていよう?」
「ああ、勿論だ」
魔物に関する噂は、こと剣士の間には途切れる事なく伝わって来る。まして国一つを滅ぼし今なお脅威である百目の魔物の『伝説』はセレナーデ国民ならずとも知らぬ者はいない。
「フーガ国民は全滅したわけではなく、僧侶が一人生き延び我が国に保護された。フーガ国の効能の高い薬草の知識は彼から得た物である」
「…それで?」
話の意図が掴めず、ソロはいささか苛立ったように先を催促する。
「余も即位前に色々と学んだが、遺された文献によるとアルフィーネは、魔物を唯一御する事のできたフーガ国の巫女・ミヌエットとやらに瓜二つらしい」
「───何だって!?」
その時、バサバサと羽音を立てて、空いていた窓から青い鳥が飛び込んで来た。
アルフィーネが連れ去られた後、ソロは夜明けを待って愛鳥にアルフィーネを探させ自分は早馬で一昼夜 不眠不休でセレナーデ国戻り、薬草を届けた。
本当はその足でフーガ国にトンボ返りしようと思っていたのだが、セレナーデ国王・ロンドに引き止められ、不本意ながら今に至っている。
向き合うロンド王にはソロの不機嫌がひしひしと伝わっていた。
「ご苦労だったな、ソロ。おかげでマドリガルは小康状態に戻った。感謝するぞ」
とりあえずロンド王は謝辞を述べる。
即位して間もない若き国王ロンドは、王子時代から社会勉強と称して身分を隠しては諸外国を旅して回っており、剣士ソロと知り合ったのも、忍びで城下を散策している
時だった。
ソロは生来の無頓着さでロンドの身分を知った後も、その親しみを込めた慇懃な態度を変える事は無く、庶民派の王は彼をいたく気に入っているのだが。
「礼を言う相手が違うだろ」
不遜な口調でソロは言い放つ。
「薬草を手に入れた功労者はフィーネなんだ。それが魔物に捕まったのに、いつまでのんびり構えてるつもりだ!?」
責めるように怒鳴り、ソロは床に拳を叩きつける。
事実、彼は怒っていた。
平民の身ではあったが、剣士ソロの名は文字通り一騎当千の戦闘能力で諸国に聞こえ魔物や盗賊団に悩む国主などは、わざわざ彼を訪ねて来てまで退治の依頼をする事もある。
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なのに、みすみすアルフィーネを攫われた上、魔物に一撃も返せなかった事はソロのプライドをいたく傷つけた。
こうなったら、あの魔物を倒しアルフィーネを無事に救出しないと気がすまない。
彼はアルフィーネとは顔馴染で、密かに想いを寄せてもいたのだから。
「オレはフィーネを助けに行くからな」
我慢も限界だとばかりにソロは立ち上がる。
友人であり良き理解者であるロンド王は、胸中察して余りあった。
「待て、ソロ」
「なんで止めるんだ!フィーネが殺されてからじゃ遅いんだぞ、今頃あの魔物に喰われてたりしたらどうする!?」
ロンド王はなるべく穏便に引き止めたかったが、やむなく重い口を開く。
「……実は、その…そのくらいの事は、覚悟の上だったのだ」
「───!?」
ソロは一瞬、ロンド王の言った意味がわからなかった。
「……何だって?」
「だから…、……魔物がアルフィーネに興味を示す事はわかっていたのだ。攫われるとは予想外だったが」
「どういう事だ!?」
掴みかからんばかりの剣幕のソロを制し、ロンド王は改めて語り始める。
「これを話したら、お前が反対するのは目に見えていたから黙っていたのだがな……ソロ、あの『百目の魔物の伝説』は知っていよう?」
「ああ、勿論だ」
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「…それで?」
話の意図が掴めず、ソロはいささか苛立ったように先を催促する。
「余も即位前に色々と学んだが、遺された文献によるとアルフィーネは、魔物を唯一御する事のできたフーガ国の巫女・ミヌエットとやらに瓜二つらしい」
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