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ヴァンパイア・ハンター ~第十二夜~
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たとえ勝てない相手でも、剣を捨ててはいけない。
この命が果てるまで戦うべき時なのだ。
「───私は逃げない」
「アンバー……」
「たとえ死んでも諦めない。私は絶対にこの男に屈しない!」
そう叫んだ瞬間、不意にアンバーの視界が開けた。
今まで見えなかった世界が色を持ち始める。
アンバーは瞳を細め、一振りだけになった剣に力を込めた。
「……」
伯爵は無言でアンバーを見つめる。
恋を自覚する事で気力を取り戻したアンバーに、何か底知れぬものを感じたのかも知れない。
(勝てないかもしれない……でも諦めない)
「いくぞ、アンバー」
短剣を握り直し、アズライトも身構える。
「勝ち目のない戦いに、なぜ挑む?」
伯爵は相変わらず笑いながら二人の様子を眺めている。だが不意に視線を逸らしたかと思うと、微かにその表情が変わった。
「……そろそろ、遊びは終わりだ」
言うや否や、伯爵の姿が消える。いや、一瞬の内に移動したのだ。
「!」
気配に気づいた途端、伯爵は二人のすぐ目の前にいた。その手指が刃の如き爪に変わる。
「死ね、人間」
「…っ!」
「アズライトォ!!」
間を置かずアズライトは瞬殺される───
───……はずだった。
気づけば無意識に突き出したアンバーの剣がアズライトの短剣と交差している。
まるで互いを守り合うかの如く。
「───っ!?」
突如として伯爵の顔から冷笑が消える。
正体不明のまばゆい光が周囲を照らし、初めて伯爵に油断が生じた。
「伯爵、覚悟ォ───っ!」
隙を見逃さず、アンバーは伯爵に斬りかかる。
アズライトの短剣と絡み合ったままの剣で。
「…!?」
アンバーの剣は折れる寸前。
アズライトの短剣も神の祝福の無い銀製のダガー。
いずれもヴァンパイアの致命傷には至らないはずなのに、伯爵は多大なダメージを受け後ずさった。
───今の現象は一体?
だが考えるよりも早く、アンバーは隠し武器を構える。
対魔物仕様に造られた純銀製の鎖刃が伯爵の額に命中した。
夜の森に魔物の悲鳴が轟く。それはアンバーも初めて聞くヴァンパイアの絶叫。
伯爵の額からは焦げた臭いが漂い、端麗な容貌が焼けただれていた。
この機を逃すわけにはゆかず、アンバーとアズライトは三たび伯爵に向かって駆け出す。
「闇に還れ、ヴァンパイア───!」
アズライトはアンバーの腕を引き寄せ、二人で同時に伯爵の心臓に剣を突き立てた。
「オオオオオォォッ!!」
あれほど慄然としていたヴァンパイアが明らかな劣勢に陥っている。
その胸には十字型の傷が生じ、黒い血潮が噴出し始めた。
「……ゴー…レム…」
「…………」
「私を城に連れて帰れ」
しかし命令されたゴーレムは、もはや原型を留めていない。先刻の攻撃で受けた傷から致命的な量の泥が流れ尽くしていたのだ。
「………っ」
伯爵は配下を諦め、マントを翼に変えて飛翔する。
だが。
「逃がさない!」
アンバーは再び鎖刃を構え、その背後でアズライトが彼女の肩を支えている。
「とどめだ!!」
今度こそ鎖刃は伯爵の心臓を貫く。
もはや断末魔を叫ぶ余裕も無く、伯爵は白み始めた夜空の中で塵と化した。
この命が果てるまで戦うべき時なのだ。
「───私は逃げない」
「アンバー……」
「たとえ死んでも諦めない。私は絶対にこの男に屈しない!」
そう叫んだ瞬間、不意にアンバーの視界が開けた。
今まで見えなかった世界が色を持ち始める。
アンバーは瞳を細め、一振りだけになった剣に力を込めた。
「……」
伯爵は無言でアンバーを見つめる。
恋を自覚する事で気力を取り戻したアンバーに、何か底知れぬものを感じたのかも知れない。
(勝てないかもしれない……でも諦めない)
「いくぞ、アンバー」
短剣を握り直し、アズライトも身構える。
「勝ち目のない戦いに、なぜ挑む?」
伯爵は相変わらず笑いながら二人の様子を眺めている。だが不意に視線を逸らしたかと思うと、微かにその表情が変わった。
「……そろそろ、遊びは終わりだ」
言うや否や、伯爵の姿が消える。いや、一瞬の内に移動したのだ。
「!」
気配に気づいた途端、伯爵は二人のすぐ目の前にいた。その手指が刃の如き爪に変わる。
「死ね、人間」
「…っ!」
「アズライトォ!!」
間を置かずアズライトは瞬殺される───
───……はずだった。
気づけば無意識に突き出したアンバーの剣がアズライトの短剣と交差している。
まるで互いを守り合うかの如く。
「───っ!?」
突如として伯爵の顔から冷笑が消える。
正体不明のまばゆい光が周囲を照らし、初めて伯爵に油断が生じた。
「伯爵、覚悟ォ───っ!」
隙を見逃さず、アンバーは伯爵に斬りかかる。
アズライトの短剣と絡み合ったままの剣で。
「…!?」
アンバーの剣は折れる寸前。
アズライトの短剣も神の祝福の無い銀製のダガー。
いずれもヴァンパイアの致命傷には至らないはずなのに、伯爵は多大なダメージを受け後ずさった。
───今の現象は一体?
だが考えるよりも早く、アンバーは隠し武器を構える。
対魔物仕様に造られた純銀製の鎖刃が伯爵の額に命中した。
夜の森に魔物の悲鳴が轟く。それはアンバーも初めて聞くヴァンパイアの絶叫。
伯爵の額からは焦げた臭いが漂い、端麗な容貌が焼けただれていた。
この機を逃すわけにはゆかず、アンバーとアズライトは三たび伯爵に向かって駆け出す。
「闇に還れ、ヴァンパイア───!」
アズライトはアンバーの腕を引き寄せ、二人で同時に伯爵の心臓に剣を突き立てた。
「オオオオオォォッ!!」
あれほど慄然としていたヴァンパイアが明らかな劣勢に陥っている。
その胸には十字型の傷が生じ、黒い血潮が噴出し始めた。
「……ゴー…レム…」
「…………」
「私を城に連れて帰れ」
しかし命令されたゴーレムは、もはや原型を留めていない。先刻の攻撃で受けた傷から致命的な量の泥が流れ尽くしていたのだ。
「………っ」
伯爵は配下を諦め、マントを翼に変えて飛翔する。
だが。
「逃がさない!」
アンバーは再び鎖刃を構え、その背後でアズライトが彼女の肩を支えている。
「とどめだ!!」
今度こそ鎖刃は伯爵の心臓を貫く。
もはや断末魔を叫ぶ余裕も無く、伯爵は白み始めた夜空の中で塵と化した。
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