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なかよくしよう⑥
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目を開けると、そこには白い天井があった。そして数秒後自分はベッドの上に横たわっていることに気づいた。なぜベッドのうえで寝ているんだろう?ああ、そうか、僕は教室で倒れたのか...少し体を動かしてみる
「ああ、起きたのか」
「すみません、迷惑かけましたよね」
「別にそんなことはいい、それより1日に2人も倒れるなんて前代未聞だ、どうして倒れたんだ?」
...どうして?かそう言えば僕はどうして倒れたんだろう。別に体調は悪かったわけじゃないし、わからない、なにか理由があったはずだけど蓋をされたようで見つけられない。
「すみません、分かりません。」
「そうか...」
それだけ言うと穂川先生は去っていき机に向かい椅子に座った。
「不思議ですね、自分の倒れた理由すらわからないなんて」
数秒の沈黙ののち先生は話し出した
「私は学校の先生だし医者ではない、だから正確なことは言えない。でも、雪下の倒れた理由ならなんとなくわかる。おおよそ多大なストレスによって引き起こされたものだろう。雪下一限前保健室に来た時なにか怯えているような顔をしていたからな。」
怯えたような表情?いや、それ以前に
「僕今日保健室に来ましたっけ?」
素朴な疑問だった。僕は朝から元気だったし保健室に来る理由なんてなかった。
「雪下ほんとに覚えてないのか。」
穂川先生は近寄ってきて僕の肩を揺すりながら聞いた。
「いや、覚えてないも何も多分きてないんじゃな...」
言葉が詰まった。脳が何かを思い出した思考を塞いでいた蓋が取れたような感覚だった。
「あ、あ、あ」
思い出した、僕は朝保健室に来ていた。彼女と保健室に来ていたんだ。
「思い出したか、驚かしやがって」
穂川先生は安心そうに言った。しかし僕の様態は反比例して悪くなっていっているようだった。
「穂川先生すみません、少し一人にしてください。」
僕の姿をじっと見たのち
「ああわかったよ」
察したような口調で言って去っていった。先生が去った刹那目から何かが流れてきた。あれ?なんで泣いているんだろう。だがその涙は止まるどころか激しさを増していた。彼女のことを、彼女に関することをなぜ一瞬忘れたのだろうか。多分防衛機制みたいなものだったのだろう。彼女から多大なストレスを受けたがために彼女を思い出させないように脳が規制をかけたのだろう。涙を流しながら尚も思考を続けた。なぜ彼女を考えてはいけないと思ったのだろう。階段での出来事がよみがえる。「なかよくしよう」ただそれだけの言葉がきっときっかけだった。その言葉で僕の脳は彼女が自殺志願者ではない可能性があるとはじきだしたのだろう。そしてその後彼女は倒れた。彼女は死ぬまでの時間の話をした。僕は死ぬまで死に方などについて話してみたいという期待しか持っていなかったが彼女の目からは残りの日を楽しみたいという希望が見えた。そして極めつけに彼女は言った「自分の人生がいつ終わるかはっきりと教えて欲しい」と。もう僕は自分の中に湧いて大きくなっていく疑問を押さえつけることが出来なくなったのだ。残り時間に対しての希望の目を持った彼女、自分の死の時間が把握出来ていない彼女。そして死について恐怖を感じている彼女。ああ、もう自分を誤魔化すことが出来ないほど証拠が集まってしまった。
彼女は自殺志願者なんかじゃない...生存志願者だ
「ああ、起きたのか」
「すみません、迷惑かけましたよね」
「別にそんなことはいい、それより1日に2人も倒れるなんて前代未聞だ、どうして倒れたんだ?」
...どうして?かそう言えば僕はどうして倒れたんだろう。別に体調は悪かったわけじゃないし、わからない、なにか理由があったはずだけど蓋をされたようで見つけられない。
「すみません、分かりません。」
「そうか...」
それだけ言うと穂川先生は去っていき机に向かい椅子に座った。
「不思議ですね、自分の倒れた理由すらわからないなんて」
数秒の沈黙ののち先生は話し出した
「私は学校の先生だし医者ではない、だから正確なことは言えない。でも、雪下の倒れた理由ならなんとなくわかる。おおよそ多大なストレスによって引き起こされたものだろう。雪下一限前保健室に来た時なにか怯えているような顔をしていたからな。」
怯えたような表情?いや、それ以前に
「僕今日保健室に来ましたっけ?」
素朴な疑問だった。僕は朝から元気だったし保健室に来る理由なんてなかった。
「雪下ほんとに覚えてないのか。」
穂川先生は近寄ってきて僕の肩を揺すりながら聞いた。
「いや、覚えてないも何も多分きてないんじゃな...」
言葉が詰まった。脳が何かを思い出した思考を塞いでいた蓋が取れたような感覚だった。
「あ、あ、あ」
思い出した、僕は朝保健室に来ていた。彼女と保健室に来ていたんだ。
「思い出したか、驚かしやがって」
穂川先生は安心そうに言った。しかし僕の様態は反比例して悪くなっていっているようだった。
「穂川先生すみません、少し一人にしてください。」
僕の姿をじっと見たのち
「ああわかったよ」
察したような口調で言って去っていった。先生が去った刹那目から何かが流れてきた。あれ?なんで泣いているんだろう。だがその涙は止まるどころか激しさを増していた。彼女のことを、彼女に関することをなぜ一瞬忘れたのだろうか。多分防衛機制みたいなものだったのだろう。彼女から多大なストレスを受けたがために彼女を思い出させないように脳が規制をかけたのだろう。涙を流しながら尚も思考を続けた。なぜ彼女を考えてはいけないと思ったのだろう。階段での出来事がよみがえる。「なかよくしよう」ただそれだけの言葉がきっときっかけだった。その言葉で僕の脳は彼女が自殺志願者ではない可能性があるとはじきだしたのだろう。そしてその後彼女は倒れた。彼女は死ぬまでの時間の話をした。僕は死ぬまで死に方などについて話してみたいという期待しか持っていなかったが彼女の目からは残りの日を楽しみたいという希望が見えた。そして極めつけに彼女は言った「自分の人生がいつ終わるかはっきりと教えて欲しい」と。もう僕は自分の中に湧いて大きくなっていく疑問を押さえつけることが出来なくなったのだ。残り時間に対しての希望の目を持った彼女、自分の死の時間が把握出来ていない彼女。そして死について恐怖を感じている彼女。ああ、もう自分を誤魔化すことが出来ないほど証拠が集まってしまった。
彼女は自殺志願者なんかじゃない...生存志願者だ
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