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運命の日⑤
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10月12日
最悪の気分で目を覚ました。あんなに良くしてくれたおじいちゃんを死の間際まで悩ませ続けそして後悔を残させて死なせてしまうなんて。考えるだけで吐き気がしてきた。自分の勇気がなくてできなかったことがおじいちゃんのせいでできなかったと勘違いさせて苦しめていたことがむねにささった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。」
倒れてうずくまりながら僕は繰り返しつぶやいた。その日は何も無いままただただ後悔とともにすごした。
「僕はこのまま何もせずにすごすのかなぁ」
涙がこぼれでているのがわかる。水分もとっていないのに不思議だった。
「このままなにもせずにすごす...」
「ふっははははははははははははははははははははははははは」
自分を嘲るようなわらいかたをした。
「このままなにもせずにすごすじゃないな。僕は能動ができないんだった。僕は日常をすごしているんじゃない。こんな何も変わらないような日常にすごさせられているんだ。」
「あはははははははははははははははははははははは」
ひどい笑い方だった。本物の狂人のようだった。
「なんだなんだおじいちゃんの最期とかもはや関係なかったのか。僕は日常全てにおいて受動的だったのか。すごさせられていたのかみんなは簡単に過ごしているような日常に」
叫んでいた。そして暴れた。机を蹴り飛ばした、意味もなく壁に体当りしたりした、そしてまた壁を殴り血をだしてその場に倒れた
「あぁ、倒された。これも受動かな、ハハハ」
もはや正常な思考力は残っていなかった。
* * *
10月28日
僕の自殺志願者としての人生がはじまった日だ。
おじいちゃんの死から一ヶ月初月忌だった。おじいちゃんの知人の何人かが家をたずねてきた。その人たちは僕を見るたび口々に
「大丈夫かい?」
「どうしたの?」
と不安につつまれた目でいった。無理もなかった。僕は僕の人生が全て受動的だったと気づいた時なにもかもやる気がうせて食事もろくにとらず情緒不安定でたまに壁を殴ったりしては倒れての繰り返しを続けていた。その結果以前よりだいぶやせ細り顔から正気は消えていた。この顔では心配するなという方が無理である。
ちょうど正午におじいちゃんとともにヴァイオリニストの道を目指した横田さんという人が来た。横田さんと僕はわりと面識があった。だからなのか、横田さんは僕を見るなり
「寿紀くん、どうしたんだい大丈夫かい?なんでそんなにやせ細ってるんだい?食事はきちんとしてるのかい?」
横田さんは並々ならぬ様子でそういった。不安に包まれたなんて可愛い表現じゃなく、まるで僕の後ろに死神でも見ているようだった。
「はい、大丈夫です。」
全く力のない声でこたえた。
「どうみても大丈夫じゃないじゃないか。ちょっとはいるよ。」
横田さんは僕の家におしいった。そして壁周辺の血をみて唖然とした。
「どういう事だ、これは」
嫌に真剣な声だった、と言うよりも怒りに似たものがこめられていた。
「少し、おじいちゃんの死で情緒不安定になってしまって」
思い沈黙だった。横田さんはなにか考え込んでいるようだった。
「ずっと家の中にいたのかい?」
「はい?」
「元気が死んでからずっと家から出てないのか?」
「はい」
はぁ、横田さんがため息をついた。
「どうやら深く悩みすぎているようだね、1回外に出てみるといい。例えばほら」
タンスの横にあったヴァイオリンケースを指さしていう
「あれは碁盤通りにあるヴァイオリン店のものだ。元気さんヴァイオリンの調整を直々に頼まれて返せずじまいになってしまったんだろう。あれを返しに行くついでに外に出てきてみたらどうだ?こんな閉鎖的な空間じゃそりゃ気が滅入っちゃうよ。」
横田さんは優しく言った。確かにそうなのかもしれない。
「ありがとうございます。昼からこのヴァイオリンを返しに少し外に出てみます。」
声には少しだけちからがあった。
「うん、それがいい。」
横田さんは笑顔で言った。
「じぁあそろそろ帰るかね、元気にしなよ寿紀くん。」
横田さんはのそっと立ち上がり、部屋を後にした。
「さようなら、ありがとうございました。」
後ろから横田さんにいう。横田さんは振り向き手だけ振って去っていった。
「久々に外に出る...か、あれ?これって外に出ようとしているのか...それとも外に出させられているのか...?」
頭のネジは完全に外れたようだった。
最悪の気分で目を覚ました。あんなに良くしてくれたおじいちゃんを死の間際まで悩ませ続けそして後悔を残させて死なせてしまうなんて。考えるだけで吐き気がしてきた。自分の勇気がなくてできなかったことがおじいちゃんのせいでできなかったと勘違いさせて苦しめていたことがむねにささった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。」
倒れてうずくまりながら僕は繰り返しつぶやいた。その日は何も無いままただただ後悔とともにすごした。
「僕はこのまま何もせずにすごすのかなぁ」
涙がこぼれでているのがわかる。水分もとっていないのに不思議だった。
「このままなにもせずにすごす...」
「ふっははははははははははははははははははははははははは」
自分を嘲るようなわらいかたをした。
「このままなにもせずにすごすじゃないな。僕は能動ができないんだった。僕は日常をすごしているんじゃない。こんな何も変わらないような日常にすごさせられているんだ。」
「あはははははははははははははははははははははは」
ひどい笑い方だった。本物の狂人のようだった。
「なんだなんだおじいちゃんの最期とかもはや関係なかったのか。僕は日常全てにおいて受動的だったのか。すごさせられていたのかみんなは簡単に過ごしているような日常に」
叫んでいた。そして暴れた。机を蹴り飛ばした、意味もなく壁に体当りしたりした、そしてまた壁を殴り血をだしてその場に倒れた
「あぁ、倒された。これも受動かな、ハハハ」
もはや正常な思考力は残っていなかった。
* * *
10月28日
僕の自殺志願者としての人生がはじまった日だ。
おじいちゃんの死から一ヶ月初月忌だった。おじいちゃんの知人の何人かが家をたずねてきた。その人たちは僕を見るたび口々に
「大丈夫かい?」
「どうしたの?」
と不安につつまれた目でいった。無理もなかった。僕は僕の人生が全て受動的だったと気づいた時なにもかもやる気がうせて食事もろくにとらず情緒不安定でたまに壁を殴ったりしては倒れての繰り返しを続けていた。その結果以前よりだいぶやせ細り顔から正気は消えていた。この顔では心配するなという方が無理である。
ちょうど正午におじいちゃんとともにヴァイオリニストの道を目指した横田さんという人が来た。横田さんと僕はわりと面識があった。だからなのか、横田さんは僕を見るなり
「寿紀くん、どうしたんだい大丈夫かい?なんでそんなにやせ細ってるんだい?食事はきちんとしてるのかい?」
横田さんは並々ならぬ様子でそういった。不安に包まれたなんて可愛い表現じゃなく、まるで僕の後ろに死神でも見ているようだった。
「はい、大丈夫です。」
全く力のない声でこたえた。
「どうみても大丈夫じゃないじゃないか。ちょっとはいるよ。」
横田さんは僕の家におしいった。そして壁周辺の血をみて唖然とした。
「どういう事だ、これは」
嫌に真剣な声だった、と言うよりも怒りに似たものがこめられていた。
「少し、おじいちゃんの死で情緒不安定になってしまって」
思い沈黙だった。横田さんはなにか考え込んでいるようだった。
「ずっと家の中にいたのかい?」
「はい?」
「元気が死んでからずっと家から出てないのか?」
「はい」
はぁ、横田さんがため息をついた。
「どうやら深く悩みすぎているようだね、1回外に出てみるといい。例えばほら」
タンスの横にあったヴァイオリンケースを指さしていう
「あれは碁盤通りにあるヴァイオリン店のものだ。元気さんヴァイオリンの調整を直々に頼まれて返せずじまいになってしまったんだろう。あれを返しに行くついでに外に出てきてみたらどうだ?こんな閉鎖的な空間じゃそりゃ気が滅入っちゃうよ。」
横田さんは優しく言った。確かにそうなのかもしれない。
「ありがとうございます。昼からこのヴァイオリンを返しに少し外に出てみます。」
声には少しだけちからがあった。
「うん、それがいい。」
横田さんは笑顔で言った。
「じぁあそろそろ帰るかね、元気にしなよ寿紀くん。」
横田さんはのそっと立ち上がり、部屋を後にした。
「さようなら、ありがとうございました。」
後ろから横田さんにいう。横田さんは振り向き手だけ振って去っていった。
「久々に外に出る...か、あれ?これって外に出ようとしているのか...それとも外に出させられているのか...?」
頭のネジは完全に外れたようだった。
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