支配の王冠~余命一年の悪役転生から始まるバトルロワイアル~

夜刀神さつき

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悪役転生

絶体絶命の状況

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 ライモンドが城門を開ける?
 どうしてそんなことを報告しにきたのだろうか。
 
「……何が問題なのか」

 城門って閉まっていたのか?だとしたら、一体、何のためだろうか?民衆の暴動でもあったのだろうか。どうしよう。ハデスは、私利私欲のことしか考えないひどい領主だったから、暴動もたくさん起きていたに違いない。民衆に攻め込まれたら、どうしよう。話し合いでなんとかならないだろうか。

「現実逃避するのもいい加減にしてください。もうすぐ死鬼の大群がやってきます」

 え?なんだって。
 
 しき……。
 
 頭が一瞬フリーズして、目ん玉が飛び出そうなくらい驚く。

 ぎょえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!

 そ、そ、そんなヴァカなっ!!
 し、し、し、し、死鬼って、ルキフェルが黒魔術で王都ルジアを占領する時に使った動く死体だよな。弱点はなく、ルキフェルの命令を遂行するまで戦い続けるらしい。腕がちぎれても、首がちぎれても時間と共に再生していく恐ろしい化物だ。

 反逆者ルキフェルは、死鬼の力で数百年続いたオルトロス家を滅ぼす革命を起こしたのだ!!死鬼は、国家反逆レベルの革命を起こせるくらいやばいものである!!!

 そんなものに攻め込まれたら、もうおしまいだ。体中をむしゃむしゃと食われながら死んでいく悲惨な最期を迎えるに違いないっ!!

 胃が痛くなってきた。
 うううう。吐き気とめまいもしてくる。

 もうダメだ。ようやくわかった。ハデスは自殺したに違いない。だから、エリュシオンが剣を使わなかったのかと疑問に思っていたんだ。こんなくそみたいな状況、誰だって嫌になる。だけど、何らかの理由で死んだハデスの身体に僕の魂が入り込んだのだろう!

 ハデスが自殺をしたくなった気持ちがよくわかった。

「何で城門を開ける人間がいるんだよ!!そいつだって死ぬじゃないか!!!バカじゃないか!!!」

 八つ当たりのようにエリュシオンにそう荒々しく問いかけると、鼻で笑われた。

「あなたを殺すために決まっているじゃないですか」

 彼は、ゾクッとするほど冷たい声をしながら、出来の悪い生徒を見るような目眼差しをしながら、そう言ってきた。口元には、僕をバカにするようなゾッとする笑みを浮かべている。

「……」

 なんてこった。人生がハードモードすぎて辛い。

「えっと……僕は何をしたっけ……」

 なめくじを見るような目はやめてくれ。僕にだって心があるんだから。

「貴方は、彼の家族を丸焼きにしました。それも、ライモンドの目の前で。彼の10歳の娘も含まれていましたね。まず最初に泣き叫けぶ少女を殺しました。次に、憎しむと絶望で叫び続ける母親をとても楽しそうに殺していましたね。母親を殺すあなたは、とっておきのデザートを食べるようでした」

「……」

 あ、あ、あああああああああ。
 さすがハデス・ダインスレイブ。常人には考えられないことをやってのける。ザクゼーの悪魔と呼ばれていただけのことがある。

「一階のドアはもちろん閉めていますが、食料はつきましたし死ぬのは時間の問題でしょう」

 随分前から城は死鬼に囲まれていた。食料のためかわからないけれど、城にいた人間を殺した。ついに食料が尽きて、ハデスは自殺したというところか……。そして、城門は開けられ、化け物の大群がやってくるのか……。そして、死鬼に食われながら死んでいくのか……。

 僕を転生させた奴を殴りつけたくなるくらいひどい状況だ。

「……えっと、植物の種は残っているのか」

「何に使うつもりですか」

「何って栽培に決まっているだろう」

「……」

 エリュシオンの顔が、千年生きた銅像のように凍り付いた。

 うん、我ながらグッドアイデアだったに違いない。きっと、エリュシオンの盲点だったのだろう。自分が天才過ぎてちょっと恥ずかしくなるよ。

「現実逃避するのもいい加減にしてください。反吐が出ます」

 ゾッとするほど、優しさの欠片もない冷たく低い軽蔑に満ちた声が吐き捨てられた。

 そして、我慢の限界だというように左手で胸倉をグッとつかまれる。

「うぐっ……」

 そのまま掴んでいる左手に力を込められていく。
 今にも首を絞めてきそうなくらいの殺気を感じる。

「いい加減諦めたらどうですか。もう終わりなんですよ。結界は壊されました。城は死鬼の群れで埋め尽くされています。食糧も尽きました。助けなんて来ません。嫌われもののハデス・ダインスレイブを助けるような奴なんて、誰もいないでしょう。そして、体内には一年以内に必ず死ぬ呪いが刻まれている。貴方は、ここで死ぬんですよ」

 エリュシオンがもうすぐ殺される汚い豚をみるような目をしながら、ゲス顔でそう言った。ブラックチョコレートのように滑らかで低い声の余韻が脳裏に残る。
 ……あああああああああああああああああ。

 なんてこった。スタートニューライフ、新しい人生よこんにちはだと思ったら、もうendじゃねぇか!!これが小説ならあまりの速さに読者がびっくりするだろう。

 つーか、お前、僕の部下じゃねぇのかよ。

 何でそんなひどいことを上司に向かって言うんだよ、バカバカバーカ。絶対に、ハデスは部下から嫌われていただろう。 

 まあ、いい。そんなことより、生きることの方が大事だ。

「……血の革命事件が起きた時、僕は地図を見ながら考えたことがある」

「は?」

「どうしてルキフェルは船を利用してイテミスまで行かなかったかと。そうすれば、ルジアにいる多くの兵士と戦う必要がなかったはずだ」

「それがどうしたんですか」

「僕が思うに……死鬼は泳げない。カラス城から、ベラル川までは大した距離はない。おそらく漁師が使う小舟もあるはずだ。僕の魔力とお前の剣技を合わせて、ここから抜け出すんだ」

「……」

「お前、エリュシオン・リジルだろう」

「そうですが」

 やはり、こいつはあのエリュシオンだったらしい。だとしたら、剣術だってきっと悪くないはずだ。あの小さかったガキが、こんなに大きくなったと思うと、笑みがこぼれ落ちてしまう。彼が大人になれるなんて……。人生やっぱり何が起きるかわからないな。

 エリュシオンは笑みを浮かべる僕を見て、理解できないと言いたげに眉をひそめ、胸倉をつかんでいた手を離した。

「ごほっごほっ……。ふううう」

「……」

 ああ。空気が美味しい……。身体に染み渡る……。
 呼吸を整えて、まっすぐエリュシオンを見つめ肩を叩く。

「シオン・リジルの息子だったら、それくらいできるだろう。僕の手足となるなら、それくらいやってもらわないと困る」

「ハデス様……。今日は……どうされたんですか?」

「どうやら、死の恐怖でおかしくなったみたいだ」

 ろくな言い訳が思いつかなかったので、しゃあしゃあとそう言ってのけた。エリュシオンは、まるでチベットスナギツネのような顔になった。
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