支配の王冠~余命一年の悪役転生から始まるバトルロワイアル~

夜刀神さつき

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イリス山

漂流

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 小舟はものすごい勢いで崖へ飲み込まれていくように流されていく。

「はああああああああああああああああああ!!!!!」

 気合を入れてオールで必死に漕ぐが全く意味がない。僕の手が疲れていくだけだ。

「ダメだ。このままじゃ死んでしまうっ!!何か紐とかないのか」

 紐とかあれば、どこかの木に引っ掛けられるかもしれない。

「ありませんね」

 信じられないことに、彼は退屈そうに頭の後ろで手を組んでいた!!

「お前、どうしてそんなに余裕なんだよ!!!」

 エリュシオンは、こんな絶体絶命の状況だというのに、少しも顔色を変えずただ猛スピードで変わっていく景色を仄暗い瞳をしながら眺めている。

「ハデス様が苦しんでいる姿が嬉しいからです。貴方だって俺の性格が悪いところがお気に入りだと言っていたじゃありませんか」

 人を小馬鹿にするような嫌な笑みを浮かべて、溺れ苦しむ豚を眺めるような冷たい目をされる。

 ハデスううううううううううううううううううう!!!何でこんな奴を部下にしたんだ!!!ふざけるなっ!!!お前は実はドMだったのかあああああああああ!!こんなくそ男と心中なんて嫌だああああああああああああ!!!!

「ああああああああああああああああ。聖女アリア様!!どうか僕たちを助けてください。あああああ。もうダメだああああああああ!!」

 必死で聖女アリア様に助けを求めるが、事態は何も変わらない。

「神なんていませんよ」

「お前は無神論者かもしれないけれど、僕は違うんだよ!!信じる者は救われる!今に見ていろ!ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!もうダメだ!!」

 小舟は、少しずつ傾き浮遊感が押し寄せる。

「これでようやく終わりだ。俺は……」

 隣から微かな声が聞こえてきた。

 何を言ったのか聞き返す間もなく、無力な小舟は死の崖へと吸い込まれていた。

         *                     *

 崖から落ちた後、小舟はパリンと木端微塵になった。

「がぼぼぼぼっぼぼぼぼぼぼぼおぼぼぼっぼぼぼぼぼぼ」

 泳げない僕は、冷たい真冬の海に沈んでいく。
 く、苦しい……。息ができない。
 冷たくて全身が凍りそうだ。

 その時、上からエリュシオンがスイスイと魚みたいに動きながら、僕の方まで泳いできた。そして、僕の首根っこをグイッと乱暴に掴むと上の方まで泳ぎ出した。
 そのまま彼は、僕をつかみながら器用に泳いで、近くの岸までたどり着いた。

「ごほっ。うごっ。ごほ、ごほ、ごほ、ごほ……。ああ、苦しい。うごっ。ごほっ……」

 肺の方まで水がいったかもしれない。必死で咳き込み吐き出す。全身から冷たい水がぽたぽたと流れ落ちていく。

「トルドーの息子を水の拷問で殺した貴方にはいい罰ですね」

 そう言いながら、彼は着ている服のボタンをはずし始めた。

 エリュシオン……。

 僕には、冷たい態度をとるくせに、何だかんだ助けてくれる。こいつは、新種のツンデレなのかもしれない。

 エリュシオンからもポタリ、ポタリの水が滴り落ちていて、いい男が更にいい男になっていた。
 パールホワイトの瞳は肌に張り付き、彼の白い騎士の服はほんのり透けている。金色のボタンも外しているため、首元から鎖骨にかけての肌も見えている。
 なんていう破壊力抜群の色気だ。彼の絵姿を書いたら、飛ぶように売れるだろう。

 それにしても、寒くてたまらない。早く温まりたい。

「ああああああ。寒い寒い……」

 ブルブルと震えながら、腕を必死にさする。

「貴方は本当に悪運がいいですね。相当死神にも嫌われているのでしょう」

「そんなこと言っていないで、早く焚火を作ろう」

「承知致しました」

 エリュシオンと一緒に、近くに落ちている木々を集めた。そして、魔法で火をつけ、焚き火を作る。手のひらを近づけると、じわじわと温かくなっていく。

 パチッパチッと火花が弾ける音も心地よい。

 温かい……。もうこのまま動きたくない……。

 必死で手を温める僕の姿を見て、銀髪の男は探るような鋭い目をしていた。
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