支配の王冠~余命一年の悪役転生から始まるバトルロワイアル~

夜刀神さつき

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イリス山

決着

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 少女には、僕の攻撃はなかなか当たらず、僕は逃げてばかりいた。

「くっ」

 額に滝のような汗が滲む。

「ちょっと逃げないでよ」

 少女は、イライラしたように剣を振るう。それを何とか転がって逃げる。

「はあ、はあ、はあ……」 

 もうやばいかもしれない。逃げるスピードが遅くなっている。足を止めたら殺される。

「こいつの相手は、俺がします」

 その時、エリュシオンが、少女の近くに滑り込んできた。

「きゃああああっ」

 少女は、逃げるように後ずさりながら剣を振るう。


 エリュシオンが、少女の方へ行ったなら、さっきの男はどこにいる?背後を振り返ると、雪崩のような大量の植物が襲い掛かってきた。

「フローガ!!!!」
 

 嵐みたいな激しい炎が手のひらから生まれた。

「うわあっ!!」
 あまりの威力に男は、背後に吹き飛んだ。

 けれども、すぐに体制を立て直して僕を攻撃してこようとする。
 しかし、ヴァルタルの周囲の植物は焼き切ったため、少し彼の攻撃力が衰えていた。
 今なら、ヴァルタルを倒せるかもしれない。

「はああああああああああああああああああ!!!」

 剣を炎で燃えさせながら彼に近づいていく。
 人を殺すのは始めてのことではない。彼らは、おそらく罪のない人々を襲った盗賊だ。だけど、自分が間違ったことをしている気がして怖くなる。

 殺さなければ殺される。隙を見せたら終わりだ。
 僕にはやるべきことがある。ためらっている時間はないはずだ。
 心臓を一突きにして、楽に殺そう。

 そう思ったとき、少女が飛び込んできた。

 剣は軌道を変えることができずに、彼女の肺のあたりを貫いた。

「……っあ……」

 少女は、刺された部位を抑えながら血を吐いた。

「ごほっ」
 
 地面が真紅に染まる。
 彼女の右手から、剣がこぼれ落ちる。
 そして、ゆっくりとその場に崩れ落ちていく。
 
「ラウェルナっ!!!」

 焦ったヴァルタルが、僕を殺そうと鎌を振りかぶったが、エリュシオンが彼の心臓付近を水が上から自然に流れるように滑らかな動きで彼を刺した。

「……うっ……」

 鮮血の血が空気を踊るように舞う。
 倒れた二人の荒い呼吸の音が響き渡る。焼け焦げた大地に真紅の血が流れ落ち染め上げていく。

「……うぐっ……はあ、はあ……」

「……お前、なんで……」

「これで……あの時の借りを返したから……文句なしだから……」

 もうすぐ死ぬというのに、少女は強気な口調でそう言い切った。

「ああ、そうだな……。もうこれでチャラだ……」

 ヴァルタルも、どこか突き放したようにそういうと、少女は胸に何かが込み上げてきたように顔を崩した。

「……嘘よ。こんなんで返せたと思えない。だって、あなた、全部、失ったじゃないっ。本当は……私のことを助けるんじゃなかったって思っていたんでしょう……。私なんて見殺しにすればよかったのに……」

 少女は、顔を歪ませボロボロと泣きながら、そう訴える。

「そうだ。お前と出会ってから散々だった……。死んだ方がましってくらい苦しかったよ……。毎日死ぬほど吐いて、ダクリがなかったら、眠れなかった……」

「バカ!!!ヴァルのバカ!!バカ!別に……助けてなんて頼んでないのに、私を助けたせいで、不幸になって、バ
カじゃないの!!」

「ああ、そうさ……。僕は……バカだ……」

 少女は、苦しそうにゴホッとせき込んだ。

「それでも……なんでだろうな……。お前に出会えてよかったと思っているんだ……。ばかだよな……」

 彼の灰色の瞳が、懐かしい思い出に浸るように細められた。

「そうね……。あなたは、本当にバカだわ……。あああああああああああ……」

 言葉にならない声が嗚咽に変わる。
 そんな少女の手を男が震える手で握りしめる。
 すると、少女の唇は幸せそうに弧を描いた。

 どうして、そんなに幸せそうなのかわからなかった。僕には、何のことを言っているのかわからなかったし、二人には二人にしかわからない世界があるのだろう。

「ああ……。実にいい……」

 ヴァルタルも、まるで最も幸せな夢でも見ているように笑った。

 そして、微笑みながら最後の一呼吸をした。
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