支配の王冠~余命一年の悪役転生から始まるバトルロワイアル~

夜刀神さつき

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ディナヴィア

セレネーの魔力  エリュシオン視点

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 エリュシオンがスクルータを倒してから急いで戻ると、視界に入ったのは、ボロボロになって全身から血を流すハデスの姿だった。


「ハデス様!!!!」


 そう呼びかけると、彼は、血だらけの唇を開き、口を開いた。

「エリュ……シオン……」

 今にも死にそうなか弱い声が、響き渡る。

「に……げろ……。おま……え……は……、い……きろ……」

 何で、あんたがそんなことをいうんだよ……。

 だけど、どうしてだろう。

 心臓を締め付けられる感覚がする。手のひらから、砂がこぼれ落ちていくかのように、大切なものがなくなりそうな感覚が押し寄せてくる。これは、焦燥感だろうか。

 感情なんて、とっくの昔に枯渇したと思っていたのに……。

 血だらけのハデスがあの日のジギルの姿と重なる。あの時、感じた絶望と、同じ絶望が押し寄せてくる。

 まるであの時のジギルみたいだ。

 俺が殺した血を流し地面で動かなくなったジギルだ。

 俺は、頭でもおかしくなったのだろうか。

 いや、もうどうだっていい。
 あそこにいるハデスを守りたい。命に代えても、ハデスを助けたい。ついに頭がおかしくなったのかもしれない。

 剣をセレネーに向けて、構える。

 距離は、およそ30メートルほど。ここから、どうやって彼女を殺すか。

「スクルータを殺したの?」

「ああ、そうだ」

「そう……。そうか……。彼は、死んだのね」

 彼女は、そう呟いて、事実を嚙み締めるように黙りこむ。そして、胸に手を深呼吸をする。

「怒らないんだな」

「もちろん怒っているわ。彼は、私の大切なペットだったのよ。でも……彼は、喧嘩してばかりだから、早死にすることはわかっていたわ。狂犬を自分の手で処分することにならなくてよかったわ」

「……そうか」

 少女と彼は、どういう関係だったのだろうか。

 少なくとも、スクルータは、好きな人を守るために戦えたから幸せだったに違いない。……俺と違って。

 そう考えると、先ほど自分が殺した男を羨ましく感じた。

「私は、あなたと違って優しいからハデスを殺さないわ。だって、彼は、魔力があるもの」

「……」

「両手両足を切り落とし、一生、植物人間にして魔力を吸い取り続けてやるわ。父親を殺されても、ハデスを生かす
なんて、私は何て優しいのかしら」

 鈴の音を転がすようなかわいらしい声で、残酷な言葉を奏でていく。

「……それはダメだ」

 脳裏が真っ赤に染まり、頭を焼け焦がしていくような激しい怒りで満たされていく。

「悪いな。その計画を阻止するため、お前を殺す」

「あなたごときに、この私が殺されるわけないでしょう!!魔力も使えないような失敗作が!」

 セレネーがドンっと、ハイヒールで足元を踏んだ。


『フローズン!!』


 セレネーの足元が凍り付いていく。大理石の床、絨毯、柱、王座、天井、窓……全てがピキピキと音を立てて氷に姿を変えていく。エリュシオンの足元にも到達したが、エリュシオンの靴や衣服は氷に変わることはなかった。ハデスの周りは氷っているが、ハデスも氷にはなっていない。

「あら、あなたはどうして凍らないの?おかしいわね」

 不可解そうに眉をひそめた。

「……魔力量が多い?それとも、氷の魔力があるのかしら。使わないなんて宝の持ち腐れね。まあ、いいわ」

 今度は、いくつものナイフのように鋭い氷柱が、何百個も放たれる。それらを剣で弾き飛ばすが、ハデスに当たらないようにしようと思うと、よけられなくて、腕や足に突き刺さり真紅の血が流れていった。
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