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ロタン
とある女の依頼
しおりを挟むロタンの街外れにある娼館『ヘブン』。安っぽい名前だけど、ここには極上の女がそろっている。
ピンク色の髪に緋色の瞳をしたギャレット・バルムルクは、ヘブンにたどり着くといつも通りアイラを指名した。
アイラ・フォティアは、ここの経営者であるノクト・フォティアの娘である。
艶のあるサラサラとした漆黒の髪に、猫みたいにパッチリとした真っ黒い瞳、真っ白い肌をした極上の美女である。黒いレースが散りばめられた上品なドレスを好んで着用していることが多い。
その日も、アイラを指名するとすぐにやってきた。
「ギャレット!!!」
真っ赤な唇に弧を描き、極上の笑みを浮かべてギャレットに飛びついてきた。
「あなたに会いたくてたまらなかったわ」
「俺もだよ、ハニー」
ギャレットも、アイラを抱きしめ返して蜂蜜のように甘い声で囁き返す。
ロタンを訪れるときは、必ず彼女に会う。女なんて山ほど見てきたが、彼女の危うい美貌にはいつも引き込まれて決して飽きることはない。
「毎日、あなたのことばかり考えていたわ。この間、あなたが死ぬ夢を見たの」
「ベイビー。俺は死なないさ」
「だけど、あなたは危険な仕事をしているから不安なのよ。それに前回会いに来てから、一か月も空いているわ。私は、寂しすぎて死んでしまうかと思ったわ」
「今日の君は、いつもよりも甘えてくるね」
「だって会いたかったんですもの」
そう甘えた声を出しているが、アイラが男を操縦するのがとても得意であることは自分が一番よくわかっている。初めて彼女にあった日、財布の中身は空っぽになったのだ。
彼女に貢いでいる男は、現在12人ほどいることもわかっている。そして、そのうちの一人が大物の海賊であることまで知っている。
「仕事は順調なの?」
「ああ、もちろんだ。俺が失敗するわけない」
アイラは、ギャレットが殺し屋であることを知る数少ない人間の一人だ。冗談めいて打ち明けた時に、彼女はビビったりすることなく「素敵ね」と笑ったのだ。
「ルキフェルがあなたの居場所を探しているみたいね。ここにも声がかかったわ。もちろんごまかしたけれど」
「ああ。くそっ。ここにくる頻度も下げた方がいいか」
かつて依頼主だったルキフェルの命令に失敗してから、ルキフェルに追われている身分となってしまった。
「あなたがいないと寂しくなるわ」
目を潤ませながら、豊満な胸を押し付けられる。ああ。柔らかくて気持ちいいっ。
「安心しろ。お前には絶対にまた会いに来る。お前は特別だ」
アイラは、何故か自分を惹きつける。誰にも言えない闇を抱えていそうで、幸せにしてあげたくなる。
「本当に私が特別?」
首を少しかしげてかわいらしくそう問いかける。けれども、瞳の奥は計算高そうに光り輝いている。
「もちろんだ」
「ねぇ、お願いがあるのよ。とある人間を殺して欲しいの。報酬は弾むわ」
愛の言葉を紡ぐように甘ったれた声で囁かれた。逃がさないというように、首の後ろにしなやかな手を回されギュッと囲い込まれる。
「俺を信じて。君のためならどんな人間でも殺せるよ」
自分ほど殺しの才能がある奴は、いないだろう。
愛するハニーのためだったら、20人くらい殺してあげてもいい。それくらい大したことじゃない。それで、彼女の愛が勝ち取れるなら、安いものだ。
「ハデス・ダインスレイブとエリュシオン・リジルを殺して欲しいの」
そう囁かれた名前は、聞き覚えがある名前だった。
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