支配の王冠~余命一年の悪役転生から始まるバトルロワイアル~

夜刀神さつき

文字の大きさ
49 / 102
ロタン

ミゲル

しおりを挟む
 ミゲルは、何故か死がすぐ足元に迫っているような恐怖を感じていた。

 人生は、退屈だった。
 小さい頃から、欲しいものは何でも手に入った。魔術、剣術、勉強……何でも手にできた。できないことなんて何もなかったし、つまらないことでつまずいている雑魚の気持ちなんて一ミリたりとも理解できなかった。世界はまるで、空っぽの水槽を泳いでいるみたいに退屈な空間だった。

 自分があまりにも優秀しすぎたせいだろうか。誰のことも対等な存在に見えなかった。まるで自分とは違う下等動物のように思えていた。だから、誰に対しても執着も、愛情も持つことができなかった。

 ある日、父さんが戦死した。悲しいなんて感情は生まれなかったけれども、優しい息子らしく必死で悲しんでいるふりを演じた。

 父さんが死んだことで、クリューサーオール家の地位が下がってしまうことが心配だった。それは、生まれて初めて知った敗北みたいに屈辱的なことだった。だから、退屈しのぎに世界を手に入れようと思った。イフリートを倒して、この世界の頂点につこうと……。そうすれば、この屈辱も報われる気がした。自分は特別な人間だとよくわかっていた。だから、絶対にそれを成し遂げられると疑ったことはなかった。

 まずは、地位を確立して、イフリートに近づいた。

 愚かなイフリートは、私の言葉にそそのかされて、どんどん愚王となり、評判ばかり落としていった。
 作戦の下ごしらえは、完璧だった。けれども、手柄はあっさりとルキフェルに横取りされた。ルキフェルは、俺を上回る魔術を覚醒させ、支配の王冠を手に入れて更に強い魔力を手にした。腸が煮えくり返るほどの怒りを覚えたが、自分がルキフェルに勝てないことがわかっていたから、いつか彼を倒せる時が来るまで待ち続けた。

 そうだ。
 自分はこんなところで、死ぬような人間じゃない。誰よりも特別な選ばれた存在だ。
 いつか、ルキフェルを倒して全てを手にする。
 こんなところで死ぬわけにはいかない。

「私は、この世界の頂点に立つ!」

 両手を広げて、周囲にある全ての石を浮かばせる。あいつを殺さなければいけない。敵は、全て殺す。殺して、殺して、殺して、殺しまくるっ!!!

 そして、それらを、ピンク頭をしている青年に向けて放った。
 しかし、石の隙間を縫うように一つの銃弾が放たれる。

 銀色の銃弾が心臓を射抜いた。

「あぐっ!!!」

 バカな。
 バカな、バカな、バカな……。
 この石の隙間をくぐり抜けて、心臓までたどり着いただと……。
 そんなバカな……。
 血液が焼けるような激しい痛みを感じて、その場に倒れた。
 呼吸が苦しくなっていく。
 脳に酸素が回らない。

 自分は……死ぬのか……。
 目的を果たせないまま負け犬みたいに死んでいくのか……。
 ああ、なんて無様な死に方だろうか……。
 こんな時に、誰のことも思い浮かばない。誰かに伝えたい言葉の一つも出てこない。
 親友だったアルベルトが「僕には……君が理解できない」と去っていったことが理解できる。

 欠陥品だったんだ。
 生産的なことにしか価値を見出せなかった。
 ただダラダラと過ごしている時間が、ひどく無駄に感じられた。
 楽しいはずなのに、楽しんでいるふりばかりしていた。
 どうしてだろう。一人でいる時間だけ、ありのままの自分になれた。
 どんなに逃げても、苦しいだけだ。逃げているから、幸せになれない。本当に心が満たされることがなかった。それは、全てを手にしていないからだと思っていた。

 周りにいた全ての人間は駒だった。だから、誰のことも容赦なく切り捨てられたし、利用できないものに興味なんて持てなかった。妹のミシェル、親友のアルベルト、ユリア、アイゼア、ウォルフ、セレネー、ヨシュカ、アシュレイ、ルーガン……。

 名前も顔も覚えているのに、結局、全てがチェスの道具みたいに見えていた。
 若かった頃の自分が記憶に蘇る。
 天才だ、選ばれた人間とちやほやされていた。誰もが私に憧れた。誰と比べても優越感が生まれた。
 けれども、あまりにも世界がつまらなくて死んだ目をしていた……。

 狂気を抱いて道を踏み外してから、初めて世界が輝いて見えた。世界も、人の命も、自分が遊ぶためのおもちゃだった。
 もしも痛みを知った人間であったなら、誰かのことを大切にできたのだろうか。
 ちゃんとミッシェルのことも愛せただろうか。自分が妹を利用したことを後悔できるような人間になれただろうか。
 今更、そんなこと考えても遅いけれども……。
 もう一度やり直せれば、誰かを愛せるような人間になれただろうか……。
 いや、自分みたいな欠陥品は、無理だろうな。

 夜空に浮かんだ一人ぼっちの月みたいに、自虐的な笑みが浮かんだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...