支配の王冠~余命一年の悪役転生から始まるバトルロワイアル~

夜刀神さつき

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ロタン

握手

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 ミゲルが倒れると同時にコロシアムが崩壊していく。

「きゃああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 悲鳴があがって方にアイゼアが「ユリアっ!!」と叫びながら駆け付けた。
 ユリアは、足をくじいたしくアイゼアがお姫様抱っこをして去っていった。
 エリュシオンも僕のもとに駆けつけて、飛びかける石の粒を氷の壁により防いだ。そこへギャレットもやってきた。

 時間が経つとコロシアムの崩壊が終わって、エリュシオンが氷の壁をなくして、ギャレットの髪をグイッと引っ張った。

「お前、ミゲルを殺せるならさっさとやれ」

「でも、エリュシオンの弱っている姿を見るのが新鮮だったし」

 ただのクズじゃないか!!
 それを聞いたエリュシオンも忌々しそうに舌打ちをした。

「それより、今後はルキフェルのところに行くの?俺も連れて行ってよ」

「え?」

 僕は、いつまで女装を続けないといけないんだ!

「俺のミューズであるユリアにもう一度会いたいんだ」

「お前が失恋する姿を楽しみにしている」

 そう声をかけるエリュシオンは、なかなか辛辣だった。

「お前はハデスがいるのに、俺にはそんなことを言うのか」

「……どういう意味だ?」

「気が付いていないと思った?お前、ハデスだろう」

「そ、そ、そんなわけないだろう!!」

「気が付いていたのか」

 僕が必死に否定をしたのに、エリュシオンはあっさりと認めた。
 こいつ……。僕の努力を無駄にしやがって……。

「お前……。あんなに嫌いだったハデスと付き合うなんて……。そっか、エリュシオン。お前、特殊な性癖に目覚めたんだな」

「違う!!そもそも付き合っていない」

 必死で否定するが、生暖かい目で見られた。

「そんなことより、お前、ルジアについてどうするつもりだ?ユリア側につくのか。俺たちは、ルキフェルを殺すつもりだけど」

「俺がユリアを口説き落とすから、問題ないよ」

「……」

 こいつ、どんだけポジティブな思考回路をしているんだ……。

「旅に親友がいたら、お前だって楽しいだろう」

 ギャレットは、エリュシオンの肩に手を回して密着をしたが、エリュシオンはめちゃくちゃ嫌そうな顔をしていた。

「……はあ。何でお前、才能だけはあるんだよ」

「俺、きっと役に立つぜ」

「わかった。ただし、これ以上ふざけるな」

「明日の朝に、昨日の宿屋で、待ち合わせでいい?俺、最後に会いたい女がいるんだ」

「わかった。遅れるなよ」

「ああ。俺を信じろ、親友」

 そう言い残すと、ギャレットは風のように去っていった。

「全くあいつは……」

「だけど、強いな」

「殺しの才能だけはある奴ですから」

「お前も強くてびっくりしたよ」

「……」

「驚いたな。お前、あんな魔術使えたんだな」

 そんな言葉を投げかけると、エリュシオンの顔がナイフを突き立てられたみたいに苦痛で歪んだ。

「……」

「お前どうして黒魔術なんて使えるんだよ。何で黙っていたんだよ」

 誰よりも綺麗な顔を持っているくせに、何でそんな才能まであるんだよ。神様にでも愛されているんじゃないか。エリュシオンに比べると自分みたいな人間が、失敗作にすら思える。

「俺のこと嫌いになりましたか……」

 彼の左手が微かに痙攣しているのが視界に入る。
 何で彼は、そんなことを聞くのだろうか?意味がわからない。
 彼は、何かを怖がっている気がする。誰よりも強いくせに、何をそんなに怖がっているのだろうか。
 助けを求めるように伸ばされたエリュシオンの手は、空中で止まった。

「そうじゃない。ただ……お前の強さには圧倒されたんだ」

 たまたま手にしたカードがこんなに強いと思わなかった。

「……そんなに怖がらないでください。俺は、あなたを傷つけたりしませんから。俺も自分に与えられたものが怖いんです。自分が人と違っていることを自覚して、自己嫌悪ばかり感じていました」

 確かギャレットが、エリュシオンの父親は、エリュシオンを愛さなかったと言っていた。圧倒的すぎる才能は、父親の愛情さえも歪めてしまったのだろうか。

「……俺を嫌わないでください。貴方にだけは、嫌われたくないんです」

 まるで沈みかけた夕日みたいに寂しそうな顔をしている。
 エリュシオンがあの頃の、死んだ瞳をしている少年の姿に重なって、たまらなく抱きしめたくなる。

「僕は……エリュシオンに出会えて良かったと思っている」

 ハデスになって、最初に出会えた人間がエリュシオンで良かった。
 アメジストの瞳が驚いたように揺れている。

「お前は、誰よりも強いし、他の誰にできないことをやってのける。今の僕には、エリュシオンが必要だ。僕は、お前に隣にいて欲しい」

 そんな風に告げた僕を、エリュシオンが眩しいものを見るように目を背けた。

「貴方は……変わらないですね……。その優しさが俺には似つかわしくないものに思えて怖いんです。……俺は……ずっと貴方と出会ったことを後悔ばかりしていました」

「お前な。僕がせっかく……」

「自分を責め続けること、自分が不幸になることこそ、貴方と出会った罰だと思っていたんです」

 言いかけた言葉を遮られて、必死で編み出すように言葉を重ねられた。
 ……どういう意味だ……?自分を責める?こいつ、僕がジギルだとわかっているのか。それで、ジギルを殺してしまったことを後悔していたのか。それとも、僕がジギルだと証拠を掴むために鎌をかけているのか。

 どちらにせよ、黙っておくことが無難だろう。

「だけど……貴方は本当に優しい人ですね。俺は、その優しさにつけこみたい」

 まるで握手するように左手を伸ばされた。
 僕も、手を握手するように伸ばすと、グッと力強く温かい手で握られてグッと引き寄せ引っ張られる。

「うわあっ」

 そして、体制を崩した僕は、エリュシオンの胸の中にボスンと収まった。そして、もう二度と逃がさないとでもいうように、鉄みたいにがっしりと拘束される。

「おい、離せよ」

「嫌です。ずっとこのまま貴方を離したくない」

「おいってば……」

 抵抗するように背中をバシバシと叩くが無視され、僕を抱きしめる力が更に強くなっていく。

「今だけはこうさせて……」

 かすれた声で、耳元に囁かれると魂が揺さぶられるそうになった。服越しに伝わる温もりは心地よく、抵抗する気力を奪っていく。自分の手は、手持ち無沙汰になって空中を彷徨っている。少しだけためらった後に、震える彼の背中にそっと手を伸ばした。
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