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番外編 ソリト編
自分のオタク……
しおりを挟む「気分が悪いのか。肩を貸そうか」
「……だ、大丈夫」
大丈夫だから、どっか行ってくれ。お前の顔を見ていたら、また気分が悪くなりそうだ。
「全然大丈夫そうじゃないな。よかったら、水を飲むか」
そういって、水筒を差し出される。水は飲みたい。だけど、いきなり知らないやつの水筒から水を飲むことには抵抗がある。
「……結構だ」
「そっか……。あ、君はヘーゼルの瞳をしているんだね。ソリト様と同じじゃないか。本当に羨ましい」
うっとりとしたように見つめられ、顔に向かって手を伸ばされるが、彼の友達がその手を叩き落した。
「やめろ、この酔っ払いが」
「兄さん、邪魔して悪いな。こいつは、酔っぱらっているみたいだ。はあ……。お前、本当にソリトのことが好きだよな」
「ああ、大好きだ」
迷いのない声で、切れ味のいいナイフのようにスパッと言い切られる。気持ち悪いな。どうせソリトの幻影を追っているだけなのに……。本物のソリトは、ここで役立たずのアルバイトとして働いているただの瘦せた男だ。そう心の中で呟くと惨めな気持ちになった。
「あんなのただのモヤシだろう」
ついボソッとそう呟いてしまう。
「ソリト様のことを見たことがあるのか!!」
今度は、興奮したようにがしっと手を握られた。
「あ、ああ。あんなの全然、大したことないじゃないか」
「何を言っているんだ。輝くようなプラチナブランドの瞳、知性的にきらめくヘーゼルの瞳、芸術的な顔立ち……全てが美しいじゃないか」
むしろお前の方がイケメンだしもてるだろうと思ったが、口には出さなかった。
「なあ、俺は、ノーチっていうんだけど、俺と友達にならないか」
「へ?」
「名前は何ていうの?」
「リタだけど……」
「リタか。ソリトを知っている人に会えて嬉しい。だから、俺と友達になって欲しい」
「いや、僕は、ソリトのことなんて嫌いだけど」
自画自賛とか、絶対無理だ。さすがに恥ずかしすぎる。それに自分が嫌いなのは、本当のことだ。
「大丈夫。お前のこともソリトオタクにしてみせるから」
話が通じない!!どうして自分で自分のオタクにならないといけないんだ!!バカじゃないのか!!!そんな気持ち悪い奴になってたまるか!
「ちょっとお前ら先に帰ってほしい。俺は、この人と仲良くなってから帰るから」
「はーい」
「ほどほどにしろよ」
そうして、彼の友人たちは去っていった。こんな面倒くさそうな奴を置いていかないで欲しい。
「それで、ソリト様とはいつどこで出会ったの?詳しく聞かせてほしい」
「えっと……。ロタンに訪問した時に遠くから見えただけだ」
確かロタンには幼い頃訪問したことがある。そして、民衆の前で挨拶をした。この噓なら、怪しまれないだろう。
「あれは7歳の時のソリト様だね。1506年10月31日~11月3日のソリト様に違いない。すごく綺麗だっただろう」
え?日付まで覚えているの?こいつ、本当に気持ち悪いな。
「……綺麗な青い服を着ていたことは覚えているよ」
そうだ。僕は、浮かれたお母様の着せ替え人形となり最終的に美しい青色の服になったことは忘れられない。もう二度とあんな綺麗な服を着ることはないだろう。
「ああ。あれは、王家御用達のレイカーズが作成した服で、ソリト様によく似合っていた」
オタクってすごい……。僕でも忘れている情報だぞ……。
「今度、君には俺が描いたソリト様の絵姿も見せてあげるよ」
「いや、興味ないんだけど」
絵姿というのは、大体美化されたものだ。自分の絵姿とか本当に見たくないんだけど。
「きっと、絵姿を見たら君もソリト様に興味を持つはずだ!!」
自分の顔なんて毎日鏡で見ているんだけど……。
「ノーチはソリトを何だと思っているんだ?」
「ソリト様というのは、この世界で最も高貴な人間だ!!」
こいつ……頭にうじ虫でも湧いているんじゃないだろうか。オルトロス家の第一後継者であった王になるはずの男だから、価値があると思い込んでいるのだろうか。
「そもそも、ソリトは第一後継者なんかじゃねーよ。長男がまだ生きているんだから。両親が息子を殺そうとした事実を公表したくなくて、病死したことにしたんだけだ」
醜く生まれた兄は両親から愛されなかったため、殺されそうになった。けれども、逃走して行方不明になっている。本来なら、第一後継者は、僕ではなくて兄であったはずだ。しかし、両親は彼を死んだことにして、僕を後継者にした。
「どうしてそれを知っているんだ?」
「客がそう会話しているのを聞いたことがある」
「……それでも、俺はソリト様が誰よりも素敵だと思う」
洗脳って怖いな……。どうしたら解けるんだろうか。
「体調は大丈夫?家まで送っていくよ」
「大丈夫だ」
「リタは、家族はいるのか」
「そんなのいない」
「……そっか。なんかかわいそうだな」
「そういうお前は何人いるんだ?」
「家族は15人ほどだ」
さらりと爆弾発言された。
「なんでそんなにいるんだよ!?おかしいだろう!!」
驚きのあまり声がかすれてしまう。
まさか、こいつ複数人と結婚しているのか。こんなにイケメンだとそれくらい許されるのか!?
「ちょっと父親が特殊で……。娼館経営しているから……。自分の娘を商品として扱っているんだ」
「……そっか」
僕は、何ていう言葉をかけたらいいかわからなかった。
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