支配の王冠~余命一年の悪役転生から始まるバトルロワイアル~

夜刀神さつき

文字の大きさ
53 / 102
番外編  ソリト編

自分のオタク……

しおりを挟む

「気分が悪いのか。肩を貸そうか」

「……だ、大丈夫」

 大丈夫だから、どっか行ってくれ。お前の顔を見ていたら、また気分が悪くなりそうだ。

「全然大丈夫そうじゃないな。よかったら、水を飲むか」

 そういって、水筒を差し出される。水は飲みたい。だけど、いきなり知らないやつの水筒から水を飲むことには抵抗がある。

「……結構だ」

「そっか……。あ、君はヘーゼルの瞳をしているんだね。ソリト様と同じじゃないか。本当に羨ましい」

 うっとりとしたように見つめられ、顔に向かって手を伸ばされるが、彼の友達がその手を叩き落した。

「やめろ、この酔っ払いが」

「兄さん、邪魔して悪いな。こいつは、酔っぱらっているみたいだ。はあ……。お前、本当にソリトのことが好きだよな」

「ああ、大好きだ」

 迷いのない声で、切れ味のいいナイフのようにスパッと言い切られる。気持ち悪いな。どうせソリトの幻影を追っているだけなのに……。本物のソリトは、ここで役立たずのアルバイトとして働いているただの瘦せた男だ。そう心の中で呟くと惨めな気持ちになった。

「あんなのただのモヤシだろう」

 ついボソッとそう呟いてしまう。

「ソリト様のことを見たことがあるのか!!」

 今度は、興奮したようにがしっと手を握られた。

「あ、ああ。あんなの全然、大したことないじゃないか」

「何を言っているんだ。輝くようなプラチナブランドの瞳、知性的にきらめくヘーゼルの瞳、芸術的な顔立ち……全てが美しいじゃないか」

 むしろお前の方がイケメンだしもてるだろうと思ったが、口には出さなかった。

「なあ、俺は、ノーチっていうんだけど、俺と友達にならないか」

「へ?」

「名前は何ていうの?」

「リタだけど……」

「リタか。ソリトを知っている人に会えて嬉しい。だから、俺と友達になって欲しい」

「いや、僕は、ソリトのことなんて嫌いだけど」

 自画自賛とか、絶対無理だ。さすがに恥ずかしすぎる。それに自分が嫌いなのは、本当のことだ。

「大丈夫。お前のこともソリトオタクにしてみせるから」

 話が通じない!!どうして自分で自分のオタクにならないといけないんだ!!バカじゃないのか!!!そんな気持ち悪い奴になってたまるか!

「ちょっとお前ら先に帰ってほしい。俺は、この人と仲良くなってから帰るから」

「はーい」

「ほどほどにしろよ」

 そうして、彼の友人たちは去っていった。こんな面倒くさそうな奴を置いていかないで欲しい。

「それで、ソリト様とはいつどこで出会ったの?詳しく聞かせてほしい」

「えっと……。ロタンに訪問した時に遠くから見えただけだ」

 確かロタンには幼い頃訪問したことがある。そして、民衆の前で挨拶をした。この噓なら、怪しまれないだろう。

「あれは7歳の時のソリト様だね。1506年10月31日~11月3日のソリト様に違いない。すごく綺麗だっただろう」

 え?日付まで覚えているの?こいつ、本当に気持ち悪いな。

「……綺麗な青い服を着ていたことは覚えているよ」

 そうだ。僕は、浮かれたお母様の着せ替え人形となり最終的に美しい青色の服になったことは忘れられない。もう二度とあんな綺麗な服を着ることはないだろう。

「ああ。あれは、王家御用達のレイカーズが作成した服で、ソリト様によく似合っていた」

 オタクってすごい……。僕でも忘れている情報だぞ……。

「今度、君には俺が描いたソリト様の絵姿も見せてあげるよ」

「いや、興味ないんだけど」

 絵姿というのは、大体美化されたものだ。自分の絵姿とか本当に見たくないんだけど。

「きっと、絵姿を見たら君もソリト様に興味を持つはずだ!!」

 自分の顔なんて毎日鏡で見ているんだけど……。

「ノーチはソリトを何だと思っているんだ?」

「ソリト様というのは、この世界で最も高貴な人間だ!!」

 こいつ……頭にうじ虫でも湧いているんじゃないだろうか。オルトロス家の第一後継者であった王になるはずの男だから、価値があると思い込んでいるのだろうか。

「そもそも、ソリトは第一後継者なんかじゃねーよ。長男がまだ生きているんだから。両親が息子を殺そうとした事実を公表したくなくて、病死したことにしたんだけだ」

 醜く生まれた兄は両親から愛されなかったため、殺されそうになった。けれども、逃走して行方不明になっている。本来なら、第一後継者は、僕ではなくて兄であったはずだ。しかし、両親は彼を死んだことにして、僕を後継者にした。

「どうしてそれを知っているんだ?」

「客がそう会話しているのを聞いたことがある」

「……それでも、俺はソリト様が誰よりも素敵だと思う」

 洗脳って怖いな……。どうしたら解けるんだろうか。

「体調は大丈夫?家まで送っていくよ」

「大丈夫だ」

「リタは、家族はいるのか」

「そんなのいない」

「……そっか。なんかかわいそうだな」

「そういうお前は何人いるんだ?」

「家族は15人ほどだ」

 さらりと爆弾発言された。

「なんでそんなにいるんだよ!?おかしいだろう!!」

 驚きのあまり声がかすれてしまう。
 まさか、こいつ複数人と結婚しているのか。こんなにイケメンだとそれくらい許されるのか!?

「ちょっと父親が特殊で……。娼館経営しているから……。自分の娘を商品として扱っているんだ」

「……そっか」

 僕は、何ていう言葉をかけたらいいかわからなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...