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終着点
物語が交わる場所
しおりを挟む「どうやらお姫様はトラブルに巻き込まれる天才みたいだな」
眼帯のついた男はからかうようにそう言った。
「そう呼ぶなって百回は言っているだろう!!!」
船から縄でできた梯子が降ろされた。ナサニエルは、それを掴んでグイグイ進んでいく。僕もそれに続いた。
「お姫様?」
「あいつは、性格が悪いから気にしないで。それより早く登ろう」
船に乗り込むと、眼帯をつけた船長らしき男に剣を突き付けられた。周りにいる男も、僕を逃がさないとでも言うように取り囲んで用心するように剣を構えている。
「これは驚いた。一緒にいたのはハデスじゃないか。どうして殺していないんだ?後でいたぶりながら殺す気か?」
「ああ……。あの話はなしになったから」
「は?」
男の周りの空気が氷点下みたいに凍りつく。
「だから、もうこの人を殺さないで。殺したら一生恨むから。この人は僕の大事な人だから手を出さないでくれ」
「は?てめぇ、復讐だとか言いながら恋人探しをしていたのか。俺をだましたな」
「違う。この人は、ハデスじゃないんだ」
「俺を騙すならもっとましな嘘をつけ。どう見てもハデスじゃないか。本物じゃなくても、これだけ似ていればザク
ゼーで売れば結構な額を得られるだろう。とりあえず生首にしよう」
冗談じゃない!ナサニエル、とんでもない男と連れてきたな。寿命が縮まっただけじゃないか。
「この人は、ハデスじゃなくてジキルだ」
「ジキルって誰だよ」
「てめぇに関係ないだろう」
「関係なくないだろう。俺の船に乗せているんだから」
「ジキルは……僕の命の恩人だ」
「俺だって恩人だろう。同じ恩人でも俺とジキルでどうしてそんなに扱いが違うんだよ」
「あんたの力なんてなくても、僕は自力で逃げられたって言っているだろう」
「そんなわけねぇだろう」
その時、ガンッと固いものにでもぶつかったのか、船が揺れた。
「ケルピーの群れだ!!」
船から下を見ると大量のケルピーの群れが見える。
「一体どうなっていやがる」
「キイイイイイイイイイイイイイイイイイイ」
「キエエエエエエエエエエエエエエ」
「何匹くらいいるんだ?」
「千いや、もっといるかもしれない」
甲高くて醜い声があちこちで聞こえてくる。ケルピーは、船を壊そうとするように次々と体当たりしてくる。
船にかじりつくようなケルピーの群れも見える。
「離れろっ!!」
ナサニエルは、光の弓をケルピーの群れに次々と放つが、あまりにも数が多すぎてきりがない。他の海賊も弓矢や銃で応戦するが、ケルピーは殺しても、殺してもいなくならない。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
大量のケルピーの群れが体当たりしてきたため、船がグラグラと揺れる。バランスを崩して船から落ちた船員に何百というケルピーが殺到している。
「早く倒さないと船がやられる」
「こいつら、きりがない」
「体力が尽きたら、死ぬぞ」
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!11」
不意にこの世の終わりみたいな鳴き声が響いた。
今度は大空を切り裂くように巨大な生物が現れた。
広い羽根、巨大な図体、長い尻尾……。ずっと幻の生き物だと思っていた。あまりの迫力に鳥肌が立った。
「ドラゴンだ」
「ドラゴンがいるぞ!!!」
「口に何かくわえているぞ」
「殺されるぞ。大砲用意」
「待て。手を出すな」
眼帯の船長は、大砲をうとうとした船員を止めた。確かにドラゴンはこちらの方向に向かってくるが、攻撃する様子はない。
ドラゴンは、ナサニエルの目の前に口にくわえていた男をポトリと屠るように置いた。
男は、血だらけでボロボロの状態だった。黒く長い髪の毛をしている。死体だろうか?いや、指が微かに動いている。まだ生きている。
「グルルルルるるるるるるるるっるるるる」
ドラゴンは、唸り声をあげるが何を言っているのかわからない。
「この人を助けてほしいのか。……もしかして光の魔術師を見つけて飛んできたのか」
ナサニエルは、血だらけの男に手をかざした。
すると男は、淡い光で包まれて傷口も塞がっていった。
目が覚めた男は、黒曜石のような瞳で辺りをぼんやりと見まわしていた。
「俺は……まだ……生きてきたのか。お前がここまで連れてきてくれたのか」
不思議なことに、男は、ドラゴンと会話をするように話しかけた。
「グルルルル。グルルルル」
「そうか。光の魔術師に会えるとは運がよかった」
「グルルルルるるるるるるるるるるるるるるる」
「そうか。カタストロは、光の魔術師に会ったことがあったのか」
「グルルルル」
彼がドラゴンと会話しているように見えるのは気のせいだろうか。
「命を助けてもらった礼を言おう。俺の名前は、ベリアルだ。そして、この竜がカタストロ。意味なく危害は加えないから安心して欲しい」
「カタストロって、あのカリロスと一緒にいた伝説の龍か。そんなわけないだろう」
「もう何百年も前の話だろう。カタストロは、死んでいるはずだ。別のドラゴンだろう」
「いや、本人が言っているから間違いない。彼は、カタストロだ」
「え……。あなたは、ドラゴンと会話ができるんですか」
「ああ」
「なるほど。あんた、ルジアの方から来たけど、どうしてこんな事態になったか知っているか」
「知っています。ルキフェルは……死にました。そして、支配の王冠は、バラキエルという魔族が手にしました。バ
ラキエルは、人間を滅ぼして魔族の国を作るつもりです。古代みたいに……」
「どういうことだ?」
ベリアルは、エミーリア・オルトロスとバルドル共に旅をしてきたこと、ドラゴンに協力してもらったこと、二人が殺されたこと、ルキフェルを殺したこと、バラキエルのことなどを簡潔に説明していった。
「バラキエルは、俺が殺さなければいけません。どうか力を貸してください」
「僕は行く」
どうせ残り僅かな寿命だ。最後くらい人助けをして死にたい。
「ジキルが行くなら僕も行く」
ナサニエルも即答した。
「あんたは来るの?」
ナサニエルは、眼帯男に尋ねた。
「俺は……ちょっと用事がある。その後に行く」
「あっそ」
「ルジア付近まで送ろうか」
「いや、カタストロがいるから大丈夫だ」
眼帯男の提案は、ベリアルが断った。
「じゃあな、お姫様。俺が行くまで死ぬなよ」
「その呼び方はやめろ!!」
ドラゴンは、猛スピードで進みあっという間に船は、見えなくなった。
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