支配の王冠~余命一年の悪役転生から始まるバトルロワイアル~

夜刀神さつき

文字の大きさ
78 / 102
終着点

物語が交わる場所

しおりを挟む

「どうやらお姫様はトラブルに巻き込まれる天才みたいだな」

 眼帯のついた男はからかうようにそう言った。

「そう呼ぶなって百回は言っているだろう!!!」

 船から縄でできた梯子が降ろされた。ナサニエルは、それを掴んでグイグイ進んでいく。僕もそれに続いた。

「お姫様?」

「あいつは、性格が悪いから気にしないで。それより早く登ろう」

 船に乗り込むと、眼帯をつけた船長らしき男に剣を突き付けられた。周りにいる男も、僕を逃がさないとでも言うように取り囲んで用心するように剣を構えている。

「これは驚いた。一緒にいたのはハデスじゃないか。どうして殺していないんだ?後でいたぶりながら殺す気か?」

「ああ……。あの話はなしになったから」

「は?」

 男の周りの空気が氷点下みたいに凍りつく。

「だから、もうこの人を殺さないで。殺したら一生恨むから。この人は僕の大事な人だから手を出さないでくれ」

「は?てめぇ、復讐だとか言いながら恋人探しをしていたのか。俺をだましたな」

「違う。この人は、ハデスじゃないんだ」

「俺を騙すならもっとましな嘘をつけ。どう見てもハデスじゃないか。本物じゃなくても、これだけ似ていればザク
ゼーで売れば結構な額を得られるだろう。とりあえず生首にしよう」

 冗談じゃない!ナサニエル、とんでもない男と連れてきたな。寿命が縮まっただけじゃないか。

「この人は、ハデスじゃなくてジキルだ」

「ジキルって誰だよ」

「てめぇに関係ないだろう」

「関係なくないだろう。俺の船に乗せているんだから」

「ジキルは……僕の命の恩人だ」

「俺だって恩人だろう。同じ恩人でも俺とジキルでどうしてそんなに扱いが違うんだよ」

「あんたの力なんてなくても、僕は自力で逃げられたって言っているだろう」

「そんなわけねぇだろう」

 その時、ガンッと固いものにでもぶつかったのか、船が揺れた。

「ケルピーの群れだ!!」

 船から下を見ると大量のケルピーの群れが見える。

「一体どうなっていやがる」

「キイイイイイイイイイイイイイイイイイイ」
「キエエエエエエエエエエエエエエ」

「何匹くらいいるんだ?」

「千いや、もっといるかもしれない」

 甲高くて醜い声があちこちで聞こえてくる。ケルピーは、船を壊そうとするように次々と体当たりしてくる。
 船にかじりつくようなケルピーの群れも見える。

「離れろっ!!」

 ナサニエルは、光の弓をケルピーの群れに次々と放つが、あまりにも数が多すぎてきりがない。他の海賊も弓矢や銃で応戦するが、ケルピーは殺しても、殺してもいなくならない。

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 大量のケルピーの群れが体当たりしてきたため、船がグラグラと揺れる。バランスを崩して船から落ちた船員に何百というケルピーが殺到している。

「早く倒さないと船がやられる」

「こいつら、きりがない」

「体力が尽きたら、死ぬぞ」


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!11」

 不意にこの世の終わりみたいな鳴き声が響いた。

 今度は大空を切り裂くように巨大な生物が現れた。
 広い羽根、巨大な図体、長い尻尾……。ずっと幻の生き物だと思っていた。あまりの迫力に鳥肌が立った。

「ドラゴンだ」

「ドラゴンがいるぞ!!!」

「口に何かくわえているぞ」

「殺されるぞ。大砲用意」

「待て。手を出すな」

 眼帯の船長は、大砲をうとうとした船員を止めた。確かにドラゴンはこちらの方向に向かってくるが、攻撃する様子はない。

 ドラゴンは、ナサニエルの目の前に口にくわえていた男をポトリと屠るように置いた。
 男は、血だらけでボロボロの状態だった。黒く長い髪の毛をしている。死体だろうか?いや、指が微かに動いている。まだ生きている。

「グルルルルるるるるるるるるっるるるる」

 ドラゴンは、唸り声をあげるが何を言っているのかわからない。

「この人を助けてほしいのか。……もしかして光の魔術師を見つけて飛んできたのか」

 ナサニエルは、血だらけの男に手をかざした。
 すると男は、淡い光で包まれて傷口も塞がっていった。
 目が覚めた男は、黒曜石のような瞳で辺りをぼんやりと見まわしていた。

「俺は……まだ……生きてきたのか。お前がここまで連れてきてくれたのか」

 不思議なことに、男は、ドラゴンと会話をするように話しかけた。

「グルルルル。グルルルル」

「そうか。光の魔術師に会えるとは運がよかった」

「グルルルルるるるるるるるるるるるるるるる」

「そうか。カタストロは、光の魔術師に会ったことがあったのか」

「グルルルル」

 彼がドラゴンと会話しているように見えるのは気のせいだろうか。

「命を助けてもらった礼を言おう。俺の名前は、ベリアルだ。そして、この竜がカタストロ。意味なく危害は加えないから安心して欲しい」

「カタストロって、あのカリロスと一緒にいた伝説の龍か。そんなわけないだろう」

「もう何百年も前の話だろう。カタストロは、死んでいるはずだ。別のドラゴンだろう」

「いや、本人が言っているから間違いない。彼は、カタストロだ」

「え……。あなたは、ドラゴンと会話ができるんですか」

「ああ」

「なるほど。あんた、ルジアの方から来たけど、どうしてこんな事態になったか知っているか」

「知っています。ルキフェルは……死にました。そして、支配の王冠は、バラキエルという魔族が手にしました。バ
ラキエルは、人間を滅ぼして魔族の国を作るつもりです。古代みたいに……」

「どういうことだ?」

 ベリアルは、エミーリア・オルトロスとバルドル共に旅をしてきたこと、ドラゴンに協力してもらったこと、二人が殺されたこと、ルキフェルを殺したこと、バラキエルのことなどを簡潔に説明していった。

「バラキエルは、俺が殺さなければいけません。どうか力を貸してください」

「僕は行く」

 どうせ残り僅かな寿命だ。最後くらい人助けをして死にたい。

「ジキルが行くなら僕も行く」

 ナサニエルも即答した。

「あんたは来るの?」

 ナサニエルは、眼帯男に尋ねた。

「俺は……ちょっと用事がある。その後に行く」

「あっそ」

「ルジア付近まで送ろうか」

「いや、カタストロがいるから大丈夫だ」

 眼帯男の提案は、ベリアルが断った。

「じゃあな、お姫様。俺が行くまで死ぬなよ」

「その呼び方はやめろ!!」

 ドラゴンは、猛スピードで進みあっという間に船は、見えなくなった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...