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終着点
夢
しおりを挟むエリュシオンは、馬を走らせながら、ギャレットから事情を聞いた。
どうやら娼館にいるとある女を助けに行こうとしたところ、眼帯の男と出会ったらしい。そして、二人で女を守って魔族討伐していくうちに男と意気投合して、男からバラキエルという魔族が支配の王冠を手にしたこと、ナサニエルとハデスが王都に向かっていることを聞いたらしい。
早くいかないと、ジキルが殺されてしまう。
魔物の群れに囲まれているギャレットを置き去りにして、全速力で先に進んでいく。城の周囲では、何故か水の魔法と雷の魔法により大量の魔物は既に死んでいた。水となった場所は氷にして道を作った。
あっという間に城までたどり着いた。
階段を上ってドアを開けて中に入ると、二百近くの魔物から視線を向けられた。
「ふっ。ずいぶん、熱烈な歓迎だな」
「黙れ、侵入者。手を上げなければ、お前を殺す」
「お前らごときには無理だろうな」
自分は、死ぬのだろうか。それとも、生きるのだろうか。
ここまで来たんだ。
もう引き下がるしかない。
奇跡とやらに賭けるしかない。
「お前の負けは、もうきまっているだろう」
この先には、何千、もしくは何万という魔物や屍鬼がいる。
普通だったら、勝てるはずがない。
そんな無謀なことに人生で挑んだことは一度もなかった。
だけど、今は全身の血が騒ぎ、戦いたいとうずいている。
おかしなことに、負ける気がしない。
「さあ、どうだろうな」
何度も何度も死を願った。けれども、俺は、まだ生きている。
ひょっとしたら、死神に嫌われているのかもしれない。
「あああああああああああああああああああああああああ」
すごい勢いで魔力を乱射していくが、自分にも槍のように鋭いナイフみたいなものや、弓矢、炎が降り注ぐ。それを氷の壁を作って防ぎ、今度は氷のナイフで反撃する。
しかし、全ては防ぎ切れず、弓矢が皮膚を貫通してプシューと大量に出血していった。
少しふらついたが、ぐっと倒れるのをこらえて今度は全てを焼き尽くすように炎の魔力を周囲にぶつけまくる。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああ」
「ぐはあああああああああああああああああああああああああ」
早くジキルに会いたい。
彼が無事であることを信じたい……。
夢なんて諦めたのは、いつのことだろうか。そんなもの叶うことないと知っていた。
夢は、夢でしかなかった。
願いを持つことすらためらうようになっていた。
何かに憧れることが消えていった。どんなに憧れたところで、それになれないことが痛いくらいわかっていたからだった。だから、欲しがることすらしなくなった。自分にそれはふさわしくないと否定してばかりだった。いつしか、自分が本当は何を欲しいのかわからなくなっていた。何をしたいのか、望んでいるのかすら見失った。
否定して、否定して、否定して、塗りつぶして、掃き溜めの中で溺れ続けた。
誰かを愛することすらできなくなっていた。最後には、自分でさえも自分を愛せなくなっていた。誰かを嫌う感情で満たされていた。嫌うことで、否定することで、自分を保とうと必死だった。自分が何なのかわからなかった。自分が灰と涙だけで構成されている気分だった。こんなもの、愛せるわけないと決め付けていました。
自分なんて誰からも愛されるわけないと知っていたのに……。
貴方だけが手を差し伸べてくれた。
だから、どうしても貴方を失うわけにはいかない。
貴方に再び会ってから、また夢を見ている。
いや。それは、夢なんていう美しいものじゃなくて、すさまじい執念であり、存在証明する唯一の手段であり、現実から逃げる道具だった。
愛なんて優しいものじゃなくて、恋のように甘いものでもなかった。
ただ貴方のために全てを捧げたかった。
貴方のために死ねたら、どんなに幸せだろうと夢見ていた。
他の誰かが描くありふれた幸せなんかじゃ、貪欲な自分が満足できないことがわかっていた。
貴方が欲しかった。
貴方の心が欲しかった。
自分に向けられる視線が欲しかった。
名前を呼んで欲しかった。
貴方を幸せにしたかった。
だから、全てを賭けた。
そして、こうして死にかけた絶望的な状況でも、バカみたいな夢を見ている。永遠に……。
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