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彼の終着点
彼の終着点
しおりを挟む「どうしてここがわかったんだ?」
「貴方の考えることくらい全部、わかりますよ」
俺がどれだけギャレットから、ジキルの情報を買ったと思っている?ナサニエルのこと、ノーチのこと、伝染病で死んだ家族のこと……全部、調べた。
だから、ジキルは、死の呪いが解けたらノーチのもとに訪れるはずだと確信していた。
「貴方は何でも言うことを聞くから、力を貸してほしいといいましたよね。その約束を破るおつもりですか」
「そういうわけじゃ……」
「忘れたんですか。俺は、バラキエル以上の力の持ち主です。地獄の果てでも貴方のことを見つけて見せます。逃げようとするなんて、そんなに俺のことが嫌いだったんですか」
「嫌いなわけじゃない」
「でも、もう俺はいらないんでしょう」
「え?」
「……貴方は、俺の力以外、俺を必要としたことなんて一度もないのでしょう。俺の気持ちなんて一度も考えたことないのでしょうね。利用するだけ利用して、あとはポイ捨てするつもりだったんですか。もう用済みだから、今後の人生で関わらないつもりだったんですか。俺が貴方のために、どれほど労力を費やしたか全て忘れてしまったのですか。貴方のために全て捧げたんです。殺して、殺して、殺し続けて……手を血で染め上げました。血の繋がった家族まで殺しました。それなのに、貴方は俺を裏切ったんです」
こんな事を言いたいわけじゃないのに、恨み言みたいな言葉が止まらない。胸の中にあるドロドロとしたものがあふれてくる。
「裏切ったわけじゃない。お前だってもう呪いが解けて、僕と一緒にいる必要はなくなっただろう。それに……お前は、英雄になったんだ。もっと栄誉ある道を歩いたらどうだ?評判の悪いハデスとつるむと人生台無しになるぞ」
「台無しになってもいいです。誰に何て言われてもいいです。俺も連れて行ってください」
「俺の人生は、貴方がいないと意味がない。このまま貴方を一人で行かせると、どんな目に合うのか不安です。俺が貴方を守ります。俺も連れて行ってください。悪いところは全部なおします。何でもします。だから、連れて行ってください」
「でも……」
「……俺は貴方が好きです。貴方の存在が、俺の生きる意味の全てです」
「エリュシオン……」
「俺は……貴方に救われました。ずっと貴方が好きでした。影みたいに、心に張り付いて忘れられませんでした」
「貴方のために、剣も命も……俺が貴方に捧げられるものは全て捧げるから……。そばにい続けて。俺を嫌わないで。捨てないで。俺の居場所を他の誰かにあげたりなんかしないで。俺が傍に居続けることを許して……。俺と一緒に生きてください」
戸惑う彼を逃がしたくなくて、抱きしめる。
こんなに長い時間生きてきたけれども、生きていく理由なんて見つからない。だけど、貴方と会えたから、生きていてよかったと思えた。貴方がいるだけで、世界は価値のあるものに変わる気がして。これからの人生は、貴方さえいてくれればいい。
俺だけを見て。俺のことだけを考えて……。傍にいることを許して。醜さも、弱さも、後ろめたい過去も、全部愛して……。地獄のような人生から救い出して楽園を見せて欲しい。
俺は、貴方しかいないから。貴方だけに全部捧げるから。
俺を愛して……。俺だけを他の誰よりも特別に思って……。壊れたおもちゃみたいに捨てたりなんかしないで……。ずっとそばにいて。貴方だけはいなくならないで。どこにも行かないで……。
抱きしめたジキルの身体は、とても温かかった。こんな温かいものは、初めて触れたと思えるほどだった。すると、ジキルからも恐る恐る手を伸ばされて抱きしめられ返される。
全部許されたような気分になって、すがりつくように力強く抱きしめた。
エリュシオンは、初めて誰かに愛されることを覚えた少年みたいに、泣き続けた。
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