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宣戦布告
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【楓視点】
俺は、遠藤と別れてから、カフェでサンドウィッチとコーヒーをテイクアウトしてから、誠が待っているマンションへと向かう。
誠はまだ寝ているだろうか。今のうちに、誠の寝顔写真も追加しておきたい。
そう心を浮き立たせながら帰るが、家で見たのは、椅子の上に長い足を組みながら何かの書類を読んでいる母さんの姿だった。
ヤバい。誠と母さんを接触させてしまった。
母さんは、絶対に俺に男の恋人がいることを受け入れられないだろう。
「母さん。誠はどうした?」
そう彼女の正面に立ち尋ねるが、彼女は書類から目を離さないまま「「一人で帰っていったわ」と答えた。
「母さんが帰らせたんだろう」
そう指摘すると、母さんは書類から目をあげて「桃華さんから聞いたことは、事実だったようね」と呟いた。
「……」
「男と付き合っているってどういうこと?」
母さんは、抑えていた感情が高ぶったのか、大声でそう尋ねてきた。
「俺が好きな人と付き合っているだけだ」
「遊びならいいわ。でも、あなたの結婚相手は、一流の女しか認めない」
「母さんに認められなくてもいい。俺は、本気で誠が好きだ」
そう言うと、母さんは、腕組みをしながらジッと俺を認めた。そして「わかった。そんなに好きなら、桃華さんと結婚して愛人にでもすればいいでしょう」と言い出した。
俺は、そんな発想しか出てこない母さんを見て、悲しさと悔しさがじわじわとこみあげてきた。
「母さんは……俺の幸せなんて考えていないだね」
「違うわ。私は、誰よりもあなたの幸せを考えている。あなたの子供だって、世界一幸せにしてあげたいと思っているわ」
「はっ。そういう母さんは、東条家に嫁いで幸せだったの?」
「楓!!!」
薫子は、大声で俺の名前を呼んで、ギロリと睨みつけた。彼女の手は、怒りでブルブルと震えていた。しかし、呼吸を落ち着かせると「……私は、あなたさえ戻ってくれれば幸せよ」と品のいい笑みを浮かべた。
「今日は、確認しにきただけよ。用事があるからもう帰るわ」
「誠に何かするつもり?変なことをしたら、許さないからな」
「安心して。そんなことはしないわ。私が我慢強いってわかっているでしょう。だけど、忘れないでね。あなたは、東条家の人間であることを」
母さんは、俺にそう言い残してから嵐のように去っていった。
「ああ、くそっ」
俺は、髪にぐしゃっと手をいれながら、机に肘をついた。
母さんは、誠に何か言うかもしれない。おそらく俺と別れろと脅すだろう。しかし、母さんは、どんなに嫌いな人間に対しても暴力を振るったり、危害を加えたりすることはないはずだ。間近で母さんを見てきた俺は、よくわかっている。誠が俺を好きなら、母さんの言うことを受け入れないだろう。誠相手に金で交渉するかもしれないが、誠は俺と付き合った方が得だとわかっているはずだ。
まず片付けるべきなのは、あの忌々しいホストだ。あいつは、肉食獣のような目で誠を見ていた。彼が誠の魅力に本気でハマる前に、早く手を打たないといけない。
その日の夕方、俺は、蓮という奴の職場の前で待機していた。日が沈みかけた頃、昨日と違って高そうなベージュのコートを着た蓮が現れた。
蓮は、俺に気がつくと目を丸くしたが、すぐに近づいてきた。
「俺に何か用?もしかして、誠に近づくなとでもいいに来た?」
彼は、ヘラヘラとした顔でからかうように笑いながら、そう尋ねてきた。
「お前、桃華に言われて、俺達の仲を引き裂こうとしただろう」
「……あー、ばれちゃったか……」
蓮は、髪をガシガシとかきむしりながら、ため息をついた。
「桃華からいくらもらう予定だ。2倍の金を払うから、誠の前から消えてくれ」
それを聞いた蓮の茶色の目が、獲物を狙うカラスみたいにキラリと輝いた。
「そういうことなら、遠慮なく……いや……」
ふいに蓮の軽薄そうな笑顔が曇った。彼は、真剣そうな顔で、顎に手を当てながら無言で考え込む。やがて、迷子になった子供みたいにポツリと「……わからないんだ」と漏らした。
「はあ?」
「俺には、どうして誠がコートをかけてくれたのかわからない」
確か蓮は、あのコートを誠からもらったと言っていた。おそらく寒空の下に薄着でいた蓮をかわいそうに思い、お人よしの誠がコートをかけたのだろう。
どうして、それだけのことで、こんなホストが思い悩んでいるのか理解できない。きっと、他の女から山のように貢がれてきただろうに。
「何をそんなに悩んでいる?どうせ誠がお前に同情してコートをかけただけだろう」
「同情か……。それでも、俺は……」
何かを言いかけた蓮は、首を軽く振ってから、覚悟を決めた顔で話し出した。
「わかった。やっぱり、いい。金はいらない。そんな金くらい自分ですぐ稼げる。お前からはもらえない。だって俺は、本気で誠を奪うから」
誠を奪う?こいつは、誠を付き合おうとしているのか。
この男も、本気で誠に惚れているのか。
この俺から、誠を奪う気でいるのか。
頭が焼け焦げるような怒りで支配される。
「ふざけるな。誠は、俺のものだ」
彼を、殺意を込めながら睨みつけるが、彼は軽く手を振ってから歩き出した。
「話はもう終わりでいいか。仕事があるから、失礼する」
彼は、これ以上俺の話を聞く気がないというように、振り返ることなく立ち去った。
俺は、遠藤と別れてから、カフェでサンドウィッチとコーヒーをテイクアウトしてから、誠が待っているマンションへと向かう。
誠はまだ寝ているだろうか。今のうちに、誠の寝顔写真も追加しておきたい。
そう心を浮き立たせながら帰るが、家で見たのは、椅子の上に長い足を組みながら何かの書類を読んでいる母さんの姿だった。
ヤバい。誠と母さんを接触させてしまった。
母さんは、絶対に俺に男の恋人がいることを受け入れられないだろう。
「母さん。誠はどうした?」
そう彼女の正面に立ち尋ねるが、彼女は書類から目を離さないまま「「一人で帰っていったわ」と答えた。
「母さんが帰らせたんだろう」
そう指摘すると、母さんは書類から目をあげて「桃華さんから聞いたことは、事実だったようね」と呟いた。
「……」
「男と付き合っているってどういうこと?」
母さんは、抑えていた感情が高ぶったのか、大声でそう尋ねてきた。
「俺が好きな人と付き合っているだけだ」
「遊びならいいわ。でも、あなたの結婚相手は、一流の女しか認めない」
「母さんに認められなくてもいい。俺は、本気で誠が好きだ」
そう言うと、母さんは、腕組みをしながらジッと俺を認めた。そして「わかった。そんなに好きなら、桃華さんと結婚して愛人にでもすればいいでしょう」と言い出した。
俺は、そんな発想しか出てこない母さんを見て、悲しさと悔しさがじわじわとこみあげてきた。
「母さんは……俺の幸せなんて考えていないだね」
「違うわ。私は、誰よりもあなたの幸せを考えている。あなたの子供だって、世界一幸せにしてあげたいと思っているわ」
「はっ。そういう母さんは、東条家に嫁いで幸せだったの?」
「楓!!!」
薫子は、大声で俺の名前を呼んで、ギロリと睨みつけた。彼女の手は、怒りでブルブルと震えていた。しかし、呼吸を落ち着かせると「……私は、あなたさえ戻ってくれれば幸せよ」と品のいい笑みを浮かべた。
「今日は、確認しにきただけよ。用事があるからもう帰るわ」
「誠に何かするつもり?変なことをしたら、許さないからな」
「安心して。そんなことはしないわ。私が我慢強いってわかっているでしょう。だけど、忘れないでね。あなたは、東条家の人間であることを」
母さんは、俺にそう言い残してから嵐のように去っていった。
「ああ、くそっ」
俺は、髪にぐしゃっと手をいれながら、机に肘をついた。
母さんは、誠に何か言うかもしれない。おそらく俺と別れろと脅すだろう。しかし、母さんは、どんなに嫌いな人間に対しても暴力を振るったり、危害を加えたりすることはないはずだ。間近で母さんを見てきた俺は、よくわかっている。誠が俺を好きなら、母さんの言うことを受け入れないだろう。誠相手に金で交渉するかもしれないが、誠は俺と付き合った方が得だとわかっているはずだ。
まず片付けるべきなのは、あの忌々しいホストだ。あいつは、肉食獣のような目で誠を見ていた。彼が誠の魅力に本気でハマる前に、早く手を打たないといけない。
その日の夕方、俺は、蓮という奴の職場の前で待機していた。日が沈みかけた頃、昨日と違って高そうなベージュのコートを着た蓮が現れた。
蓮は、俺に気がつくと目を丸くしたが、すぐに近づいてきた。
「俺に何か用?もしかして、誠に近づくなとでもいいに来た?」
彼は、ヘラヘラとした顔でからかうように笑いながら、そう尋ねてきた。
「お前、桃華に言われて、俺達の仲を引き裂こうとしただろう」
「……あー、ばれちゃったか……」
蓮は、髪をガシガシとかきむしりながら、ため息をついた。
「桃華からいくらもらう予定だ。2倍の金を払うから、誠の前から消えてくれ」
それを聞いた蓮の茶色の目が、獲物を狙うカラスみたいにキラリと輝いた。
「そういうことなら、遠慮なく……いや……」
ふいに蓮の軽薄そうな笑顔が曇った。彼は、真剣そうな顔で、顎に手を当てながら無言で考え込む。やがて、迷子になった子供みたいにポツリと「……わからないんだ」と漏らした。
「はあ?」
「俺には、どうして誠がコートをかけてくれたのかわからない」
確か蓮は、あのコートを誠からもらったと言っていた。おそらく寒空の下に薄着でいた蓮をかわいそうに思い、お人よしの誠がコートをかけたのだろう。
どうして、それだけのことで、こんなホストが思い悩んでいるのか理解できない。きっと、他の女から山のように貢がれてきただろうに。
「何をそんなに悩んでいる?どうせ誠がお前に同情してコートをかけただけだろう」
「同情か……。それでも、俺は……」
何かを言いかけた蓮は、首を軽く振ってから、覚悟を決めた顔で話し出した。
「わかった。やっぱり、いい。金はいらない。そんな金くらい自分ですぐ稼げる。お前からはもらえない。だって俺は、本気で誠を奪うから」
誠を奪う?こいつは、誠を付き合おうとしているのか。
この男も、本気で誠に惚れているのか。
この俺から、誠を奪う気でいるのか。
頭が焼け焦げるような怒りで支配される。
「ふざけるな。誠は、俺のものだ」
彼を、殺意を込めながら睨みつけるが、彼は軽く手を振ってから歩き出した。
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