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男の恋人!?そんなバカな……。
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もらった本は、当然だが見知らぬ言語で書いてあった。だけど、僕には神様が言っていた通り言語理解機能がついているためスラスラと読むことができた。しかし、カザーフ、モニャラなどいくつかわからない単語も出てきた。何故か言語理解機能がある僕にそれらがわからなかったのか理解できなかった。
とりあえず、ドアの前で待機している銀髪男を呼びつけることにしよう。
「そこの男、入って欲しい」
……やはり名前を呼べないのは不便だ。
階段とかで振り返って、さりげなく「君の名は?」とか尋ねたいけれど、そんなことをやったら僕が変な奴になる。自分の中ではこいつのことを『むっつりスケベ』と名付けることにしようかな。どうだ、ピッタリだろう。わはははは。
「失礼します」
スッとドアを開けて彼が入ってきた。
「どうしたんですか」
彼が近づくと机の上の紙と、羽ペンをさした。
「なあ、カザーフってどういう意味だ?」
「温泉という意味ですが」
不可解な顔をしながらも、彼は答えてくれた。
何故、僕はそんな簡単な単語がわからなかったのだろうか。神様が言語理解機能をつけてくれたはずなのに、おかしいな。あの神様はポンコツそうだから、もしかしたら、僕はいくつかの単語がわからない状態になっているんじゃないだろうか。不安だ。
「ああ、そうだ。この紙にちょっとサインしてくれない?」
「はい」
サラサラと書かれた文字は、『エンデュミオン・アーレンス』と読めた。そうか、こいつは、エンデュミオンというのか。
「うん、ご苦労」
「ありがとうございます」
彼は、深々と頭を下げた。さっきから、こいつの顔が変化していない。もしかしたら、表情筋が死んでいるのかもしれない。
「なあ、この国のトップは、最近、どんな政策をしているんだ?」
まずは、ここの国名を特定しよう。さすがに「この国の名前は?」とかいきなり聞いたら、ヤバい奴だと思われてしまうから、国の政策を頼りに国名を推測することにした。我ながら、いい作戦だと思う。
「最近では、ミサイル第7号機の制作に国税をつぎ込んでいます」
「ふーん。この国王は、ひどい奴だな」
クズの極みと言っても過言ではない。
「何を言っているんですか。ブロトレイト国の国王は、あなたじゃないですか」
「僕だったのか!!」
まじかよ!?
全身の身体に、百万ボルトの電流を流されたような衝撃が走った。銀髪のイケメンから、空気を凍りつきそうになるほど冷たい目で見られる。……うわぁ、消えてしまいたい。
「……」
「あ、いや、今のは、何でもない。気にするな。ちょっと、ぼけていただけだよ。はははははは」
カラッとした空間に、乾いた笑い声が響き渡る。虚しい……。
しかし、ここがブロトレイト国で僕が国王であることがわかった。それは、大きな進歩だ。
「そういえば、ギル様、今日は人殺しをなさらないのですか」
「え、何だって!」
「人殺しは、ギル様の趣味じゃないですか」
悪趣味すぎるだろーが!
まあ、この機会に訂正しておこう。僕は、今日から、立派な人間になっていくことをアピールしていかなければ。
「僕の趣味は、人殺しから勉強に変わったんだ。ちゃんと覚えておくように」
「……そうですか」
ゴミクズを見るような冷たい目をされた。彼の顔立ちが恐ろしく整っていて愛想がないせいか、近くに死神がいるような気分になる。
だいたい、何なんだ。この異世界トリップは。
普通、転生とか異世界トリップとかは、まず美少女との出会い、そして第二の美少女の出会い、さらに美少女登場となっているのに、おんにゃの子が全然出てこないじゃないか。
唯一の女は、べッティーナか。
よし、決めた。彼女を胸がキュンキュンするようなメインヒロインにしてやる。僕は、第二の倫理君になる。キランッ。ラノベ主人公になる心の準備は、ばっちりだぜ。
……はい、冗談です。べッティーナは、僕が近づいただけでも、恐怖のあまり顔色が悪くなる。きっと、僕に口説かれたら、ショックのあまり心臓が止まってしまう気がする。余命一か月のヒロインとかダメだな。
しかし、ヒロインが欲しいな。いや、いっそハーレムもいい。黒髪清楚系美人と、金髪ツインテールのツンデレ希望で。それから、年下キャラも必須。年上お姉さんキャラもいてくれたらうれしいな。
少年よ、大志を抱け!そうアメリカのおじさんは、言っていた。
「あの……。この屋敷のべッティーナ以外の女の子を紹介して欲しいんだけど」
僕は、ありったけの勇気を振り絞って銀髪男にお願いした。
さあ、どんなヒロイン候補が現れるのか。かわいい婚約者とかがいたら、すごくうれしいな。妹とかいたら、絶対にかわいがりまくる。
「ギル様が全員、処刑したじゃありませんか」
「OMG――――――――――!!」
ムンクの叫びのポーズで、そう叫んだ。
エマージェンシー、エマージェンシー!大変なことが発覚してしまいました。生きる力をなくして、がっくりとうなだれ膝をつく。
「どうして、そんな悲劇が……」
「俺に近づく女の子に嫉妬したギル様が全員殺しました」
誰か止めろよ、バカ野郎。権力者、怖い。嘘だといって、ジョニー!!
だけど、何でべッティーナは、殺されなかったんだろうか?おそらくべッティーナは、殺される、殺されると、死に怯えている姿が面白いから生かされたんだろうな。運がいいんだか、悪いんだか……。
ちょっと待ったあああああ!!
僕の脳内で、もう一人の僕がツッコミをいれる。
今、エンデュミオンは、『俺に近づく女の子に嫉妬した』とか言っていなかったか。
まさか……。いや、そんな、まさか……。
僕の額に冷や汗が流れ落ちる。
「あの、つかぬことをお伺いしますが、僕とお前の関係って……」
頼む。どうか主人と護衛とかであってくれ。
「恋人じゃないですか」
「%&$“#$$%()」‘)(&(’%‘&%=)!)」
僕は、灰になりたい。
「1年ほど前、ギル様が俺に一目惚れしました。ギル様が嫌がる俺を権力で脅して恋人にさせたんですよ」
「……」
ソウダッタノカ。
ちょっと待って。頭に隕石が墜落したような衝撃を受けているんだが。
転生したら、ホモの恋人がいたとか全然、笑えないんだが。オエエエエエエ。美人の婚約者とかだったら大歓迎なのに、男とか……。死にたい。
「キ、キッスはしたのか」
とりあえずキスしていなければ、セーフだろう。
「きすは」
「アッ―――――――――――――。それ以上言うな。しゃべったら、殺す」
キスしたとか聞いたら、メンタル的に立ち直れない。恋のABCを超えてDまでいっていたとしたら、死ぬしかない。僕たちの間には、何もなかった。そういうことにしておこう。
でも、一つだけ納得がいった。
こいつは、ギルのお気に入りだった。だから、ビクビク怯えるような使用人と違って生意気な態度だったのだろう。睨んだり、文句を言ったりしたところで、ギルに殺されない自信があったのだ。つまり、簡潔に言うと、生意気で嫌な奴だということだ。
「しかし、今日のギル様はおかしいですね」
「実は、頭を打ってちょっとだけ記憶が抜けているんだ」
「そうですか。では、医者をお呼びしましょう」
「その必要はない。ただ、いつもの僕ってどんな感じだったっけ?」
「『跪け、愚民』『死ね』『この僕を誰だと思っている?』とか言っていました」
ヤバい、現実逃避したくなってきた。
「……ふっ。今日は、風がよく吹いているな」
「そうですね」
淡々と返事をされた。……悲しい。
「とりあえず本を読むから、部屋から出て行ってくれ」
「かしこまりました」
エンデュミオンは、ビシリと一礼してから颯爽と出て行った。
とりあえず、ドアの前で待機している銀髪男を呼びつけることにしよう。
「そこの男、入って欲しい」
……やはり名前を呼べないのは不便だ。
階段とかで振り返って、さりげなく「君の名は?」とか尋ねたいけれど、そんなことをやったら僕が変な奴になる。自分の中ではこいつのことを『むっつりスケベ』と名付けることにしようかな。どうだ、ピッタリだろう。わはははは。
「失礼します」
スッとドアを開けて彼が入ってきた。
「どうしたんですか」
彼が近づくと机の上の紙と、羽ペンをさした。
「なあ、カザーフってどういう意味だ?」
「温泉という意味ですが」
不可解な顔をしながらも、彼は答えてくれた。
何故、僕はそんな簡単な単語がわからなかったのだろうか。神様が言語理解機能をつけてくれたはずなのに、おかしいな。あの神様はポンコツそうだから、もしかしたら、僕はいくつかの単語がわからない状態になっているんじゃないだろうか。不安だ。
「ああ、そうだ。この紙にちょっとサインしてくれない?」
「はい」
サラサラと書かれた文字は、『エンデュミオン・アーレンス』と読めた。そうか、こいつは、エンデュミオンというのか。
「うん、ご苦労」
「ありがとうございます」
彼は、深々と頭を下げた。さっきから、こいつの顔が変化していない。もしかしたら、表情筋が死んでいるのかもしれない。
「なあ、この国のトップは、最近、どんな政策をしているんだ?」
まずは、ここの国名を特定しよう。さすがに「この国の名前は?」とかいきなり聞いたら、ヤバい奴だと思われてしまうから、国の政策を頼りに国名を推測することにした。我ながら、いい作戦だと思う。
「最近では、ミサイル第7号機の制作に国税をつぎ込んでいます」
「ふーん。この国王は、ひどい奴だな」
クズの極みと言っても過言ではない。
「何を言っているんですか。ブロトレイト国の国王は、あなたじゃないですか」
「僕だったのか!!」
まじかよ!?
全身の身体に、百万ボルトの電流を流されたような衝撃が走った。銀髪のイケメンから、空気を凍りつきそうになるほど冷たい目で見られる。……うわぁ、消えてしまいたい。
「……」
「あ、いや、今のは、何でもない。気にするな。ちょっと、ぼけていただけだよ。はははははは」
カラッとした空間に、乾いた笑い声が響き渡る。虚しい……。
しかし、ここがブロトレイト国で僕が国王であることがわかった。それは、大きな進歩だ。
「そういえば、ギル様、今日は人殺しをなさらないのですか」
「え、何だって!」
「人殺しは、ギル様の趣味じゃないですか」
悪趣味すぎるだろーが!
まあ、この機会に訂正しておこう。僕は、今日から、立派な人間になっていくことをアピールしていかなければ。
「僕の趣味は、人殺しから勉強に変わったんだ。ちゃんと覚えておくように」
「……そうですか」
ゴミクズを見るような冷たい目をされた。彼の顔立ちが恐ろしく整っていて愛想がないせいか、近くに死神がいるような気分になる。
だいたい、何なんだ。この異世界トリップは。
普通、転生とか異世界トリップとかは、まず美少女との出会い、そして第二の美少女の出会い、さらに美少女登場となっているのに、おんにゃの子が全然出てこないじゃないか。
唯一の女は、べッティーナか。
よし、決めた。彼女を胸がキュンキュンするようなメインヒロインにしてやる。僕は、第二の倫理君になる。キランッ。ラノベ主人公になる心の準備は、ばっちりだぜ。
……はい、冗談です。べッティーナは、僕が近づいただけでも、恐怖のあまり顔色が悪くなる。きっと、僕に口説かれたら、ショックのあまり心臓が止まってしまう気がする。余命一か月のヒロインとかダメだな。
しかし、ヒロインが欲しいな。いや、いっそハーレムもいい。黒髪清楚系美人と、金髪ツインテールのツンデレ希望で。それから、年下キャラも必須。年上お姉さんキャラもいてくれたらうれしいな。
少年よ、大志を抱け!そうアメリカのおじさんは、言っていた。
「あの……。この屋敷のべッティーナ以外の女の子を紹介して欲しいんだけど」
僕は、ありったけの勇気を振り絞って銀髪男にお願いした。
さあ、どんなヒロイン候補が現れるのか。かわいい婚約者とかがいたら、すごくうれしいな。妹とかいたら、絶対にかわいがりまくる。
「ギル様が全員、処刑したじゃありませんか」
「OMG――――――――――!!」
ムンクの叫びのポーズで、そう叫んだ。
エマージェンシー、エマージェンシー!大変なことが発覚してしまいました。生きる力をなくして、がっくりとうなだれ膝をつく。
「どうして、そんな悲劇が……」
「俺に近づく女の子に嫉妬したギル様が全員殺しました」
誰か止めろよ、バカ野郎。権力者、怖い。嘘だといって、ジョニー!!
だけど、何でべッティーナは、殺されなかったんだろうか?おそらくべッティーナは、殺される、殺されると、死に怯えている姿が面白いから生かされたんだろうな。運がいいんだか、悪いんだか……。
ちょっと待ったあああああ!!
僕の脳内で、もう一人の僕がツッコミをいれる。
今、エンデュミオンは、『俺に近づく女の子に嫉妬した』とか言っていなかったか。
まさか……。いや、そんな、まさか……。
僕の額に冷や汗が流れ落ちる。
「あの、つかぬことをお伺いしますが、僕とお前の関係って……」
頼む。どうか主人と護衛とかであってくれ。
「恋人じゃないですか」
「%&$“#$$%()」‘)(&(’%‘&%=)!)」
僕は、灰になりたい。
「1年ほど前、ギル様が俺に一目惚れしました。ギル様が嫌がる俺を権力で脅して恋人にさせたんですよ」
「……」
ソウダッタノカ。
ちょっと待って。頭に隕石が墜落したような衝撃を受けているんだが。
転生したら、ホモの恋人がいたとか全然、笑えないんだが。オエエエエエエ。美人の婚約者とかだったら大歓迎なのに、男とか……。死にたい。
「キ、キッスはしたのか」
とりあえずキスしていなければ、セーフだろう。
「きすは」
「アッ―――――――――――――。それ以上言うな。しゃべったら、殺す」
キスしたとか聞いたら、メンタル的に立ち直れない。恋のABCを超えてDまでいっていたとしたら、死ぬしかない。僕たちの間には、何もなかった。そういうことにしておこう。
でも、一つだけ納得がいった。
こいつは、ギルのお気に入りだった。だから、ビクビク怯えるような使用人と違って生意気な態度だったのだろう。睨んだり、文句を言ったりしたところで、ギルに殺されない自信があったのだ。つまり、簡潔に言うと、生意気で嫌な奴だということだ。
「しかし、今日のギル様はおかしいですね」
「実は、頭を打ってちょっとだけ記憶が抜けているんだ」
「そうですか。では、医者をお呼びしましょう」
「その必要はない。ただ、いつもの僕ってどんな感じだったっけ?」
「『跪け、愚民』『死ね』『この僕を誰だと思っている?』とか言っていました」
ヤバい、現実逃避したくなってきた。
「……ふっ。今日は、風がよく吹いているな」
「そうですね」
淡々と返事をされた。……悲しい。
「とりあえず本を読むから、部屋から出て行ってくれ」
「かしこまりました」
エンデュミオンは、ビシリと一礼してから颯爽と出て行った。
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