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7歳児と張り合う大人

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 みなさん、こんにちは。世界一の犯罪者であるメシアであるギル・ノイルラーです。

 結局、僕の腕は、全治一か月の骨折だった。

 右利きなのに右手を使えなくなってしまったせいで、エンデュミオンにせっせと介護されている。

 申し訳ないと思って、他の奴らにも曜日別で頼もうとしたが、何故かエンデュミオンは、俺の世話係を譲らなかった。俺の世話係になる人間をかわいそうだと思って、他の奴にやらせようとしないのだろう。

 おかげで朝から晩まで世話になっている。

 服の着替えから、食事、書類の整理、何から何までお世話になっている。

 トイレと風呂は、何とか自力で入っているが、その後、髪を乾かしてもらったりしている。その度に、こいつは俺がいないと生きていけないクズだなというような優越感に満ちた目で見られているのは、たぶん気のせいではないはずだ。……早く元気になりたい。とりあえず頭にあるのは、そればかりだ。


 ちなみに、今日の服は、ショッキングピンクのヒラヒラスーツです。

 うおおおおおおおおおおおおおお。

 これは視界の暴力だああああ。

 鏡に自分が映るたびに、鏡をアチョーってジャッキーのように叩きわりたくなる。

 ブサイクよ、胸を張れ。きっと、君たちの姿は、今の僕のキモさ100%の姿よりも、はるかにましだろう。




 シオンを他の奴らに人質にされないように地下牢に閉じ込めることにした。ちなみに、シオンの隣には、探偵レイヴンがいる。二つの地下牢を開通させて、暇を持て余しているレイヴンには、シオンの家庭教師を頼んだ。

 時間がある時は、シオンのために新しい本や教材を届けることにした。

 ドアを開けた途端、牢屋の中でシオンがキラキラと瞳を輝かせた。

「ギル様、会いたかったです」

 目が潰れそうになるくらい眩しい笑顔だ。君の瞳に乾杯。

「シオン、今日も一日頑張っていたか」

「うっ……。が、頑張りました」

 その引きつった笑顔は、何なのだろうか。

「レイヴン、お前、もしかしてスパルタ教育をしていないか」

「俺は、普通に教えている。だけど、シオンが思ったよりもバカなんだよ」

「レイヴンが厳しすぎるんです」

 意外と相性が悪かったみたいだ。

「お前一体どんな指導をしたんだよ」

「一時間で本を一冊丸暗記しろと言っただけだ」

「どう考えても厳しすぎるだろう。シオンがかわいそうだ」

「ギル様!!」

 シオンがキラキラと瞳を輝かせながら、僕を見てくる。ミルクティー色の髪が縁取るマシュマロほっぺは、ピンク色に染まっている。破壊力抜群のかわいさだ。

 安心しろ、僕は、お前の味方だからな。

「全くレイヴンは、凡人の記憶力というものを理解していないな。2時間で一冊にしろよ」

「……ギル様」

 今度は、シオンから腐った生ゴミを見るような目をされた。何故だ?

「そんなの僕には、無理ですよ」

 目をウルウルとして泣きそうな顔をするシオンを見ると、甘やかしたい気分でいっぱいになる。

「しょうがないな。シオンは、かわいいから許してやるよ」

「ギル様、こんな奴のどこがかわいいんですか」

 地獄の使者のような目をしたエンデュミオンから、問いかけられる。

「全部、かわいいじゃねぇか。少なくともお前の百倍かわいい」

「本当ですか」

 キラキラをした目をするシオン。

「そりゃ、当然だろう。むしろエンデュミオンにかわいい要素とか皆無だな」

「やったー」

 それを聞いたエンデュミオンは、ムッとしたような顔をした。

「俺の方が優秀です。背も高いし、女にもモテモテです。女だけじゃなくて、ギル様に一目惚れされるほどイケメンですから。しかも、スポーツ万能です。剣大会を最年少で優勝して、あまりにも勝ちすぎて出場資格をはく奪されるほど強いです。俺の方がシオンよりも、断然ハイスペックですから」

 そこにいたのは、7歳児相手に本気で張り合う大人の姿だった……。とんでもないクズだ。

「う、うえーん……。エンデュミオンが苛めてくる……」

 辺りにシオンの泣き声が響きわたる。

「かわいそうに。よし。今日のデザートにプリンもつけさせといてやるよ」

 鉄格子の間から手を差し込んで、シオンのミルクティー色の髪を撫でてやる。

 な、何という触り心地だ。まさに神級の髪だ。もうこれだけで、誰もを虜にする魔性の美少年になれる気がする。

「ギル様、シオンばかりずるいです」

「黙れ。お前は、今日のデザート抜きだから」

 ビシッと指さし宣言する。

 すると、ますます不機嫌そうに美しい顔を歪めた。

 一体こいつが何を考えているのかよくわからない。
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