【完結】前提が間違っています

蛇姫

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転生ヒロインは最後まで乙女ゲームだと思っていた

今日から私は………

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働きながら学園に通いたいと言った私を、笑顔で「応援するわ」と言ってくれた大好きなお母さん。
今日は奮発して合格祝いのケーキを1人分買って帰る。
勿論………お母さんと二人で食べるために。

そんな時だった……男の子が馬車に轢かれそうになっている所を目撃したのは。気が付けば身体が勝手に動いていた

「危ない!!」

私は男の子を思い切り歩道に突き飛ばしたけれど、私が逃げるには馬車の方が速くて間に合わなかった。
衝撃音と周囲の人の叫び声だけが耳に入ってきた。
あの子は無事みたい………よかっ………………………

「リリー!!」

お母さんが私を呼ぶ声が聞こえてきた。
それが私の最後………ごめんね、お母さん。
合格したよって一番に報告したかったのに。





私が目を覚ますと其処はボロ小屋だった。

「リリー!リリー!」
「…………何よ!煩いわね!リリーって誰よ!?」
「リリー?」

リリーって誰よ!?何よ!その顔は!
あれ………この顔どっかで見たことある気がする………。
待って、此処って【乙女ゲーム】なんじゃない!?
目の前のオバさんの髪色!ピンクじゃん!コイツが母親!?
取り敢えず聞いてみるか……どうにかなるでしょ……多分。

「…………お母さん?」

今の声!かなり可憐な感じが出てたんじゃない!?
私ってば女優になれるかも!ヒロインチートで何とかなれ!

「リリー………よね?」
「うん、ごめんね。取り乱したりして」
「……………そう…………リリア。起き上がれそう?」

リリア?………それが私の名前なわけね。
リリーって聞き間違えたじゃない!最後まで言い切ってよね!

「……どうして?」

オバさんは私の目を見て言った。

「貴女のお父さんが来ているのよ」
「お父さん?」
「そうよ………貴女を家に迎えたいのだそうよ。貴女は………」
「お父さんが迎えに来たってこと!?」

(何よ!それを早く言ってよね!)

この見た目って事は学園に入学出来るくらいの年齢よね!?
乙女ゲームが始まれば……私はヒロイン、私はお姫様になる。
こんなボロ小屋も、こんなボロいのしか用意できない母親も要らないわよね。まあ、私のオマケで家に置いてあげてもいいけど。

「…………お父さんに会いたい」
「…そう、それが貴女の望みなのね?」
「うん」

そうよ!……何でアンタが悲しそうな顔してんのよ!?
娘の私が幸せになるのがそんなに嫌なわけ!?
酷い女!!絶対に連れて行ってあげないから!!

「……立てる?」
「うん、もう大丈夫」

だから早く父親の所に連れて行ってくれない?
私の考えが正しければ此処は【乙女ゲームの世界】で間違いないんだから!だってアンタの見た目、完全にヒロインだもん!!

「もう……会いに来ているわ」

ベッドから飛び起きた私は、クローゼットを開けて愕然とした。
ツギハギだらけのボロいワンピースしかない。
どの服にも袖を通したくなかった私は、ワンピースの前で暫く立ち尽くしていたけど、後ろからオバさん(お母さん)の声がしたので振り返り見た。
オバさんの手には薄桃色の綺麗なワンピースが握られていて、私にそれを差し出して言った。

「貴女のお父さんが……一緒に来るならこれを着てこいと言っていたわ。どうする?何時ものにする?それとも……」
「ありがとう!お母さん!」

私は迷わずオバさんの手からワンピースを奪い取り袖を通した。
何このワンピース!私に凄く似合ってる!

「そう………それが貴女の答えなのね」

オバさんが何か言っているけど、全然気にならない!

「子爵様、娘……いえ、子爵令嬢様は袖をお通しになりました」

何?…………何でいきなり子爵令嬢様?
そういえば……これに袖を通す前に何か言ってた気がする。
……一緒に来るならこれを着ろとか何とか言われたって。

「そうか、お前と違って娘はよく分かっているな」
「……………………」

入ってきたのがお父さん?今から私は子爵令嬢ってこと?

「お母さんに別れを告げなさい。この女とは此処で縁を切る」
「うん!………さよなら!お母さん!」

この女に思い入れは特に無いし、私はこんな綺麗なワンピースを用意してくれたお父さんの方が大好きだから!

「ええ………さようなら、子爵令嬢様」

お父さんと私はボロ小屋を後にした。
私とお父さんを見送る女の瞳から涙が溢れていたことには気が付いていたけど、そんなの私には関係ない。
可愛い娘を見送るから流した涙なのだと分かっているけど、私にとってアンタは知らないオバさんだから!






「リリー………私は貴女を誇りに思うわ。合格おめでとう」

母親のその言葉と、机に残された潰れたケーキ
溢れる涙は誰のためのものだったのか………
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