【完結】前提が間違っています

蛇姫

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転生ヒロインは最後まで乙女ゲームだと思っていた

悪役令嬢

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 入学式の日には、確かに南棟に入ることが許されていたのに、今日…来てみたら全面的に立ち入り禁止になっていた。
 私はヒロインなんだから、絶対止められないと思っていたのに、何故か止められるし……何なのよ!あのモブ教師共!
 ……考えてみれば、悪役令嬢が命令して…私に嫌がらせをしているって可能性もあるのよね。
 そっちがその気なら、私にだって考えがあるんだから!
 モブとはいえ、それなりの見た目をした男子は多いみたいだし、そいつらを使って悪役令嬢を炙り出せばいいのよ!
 公爵令嬢は一人しか在籍していないみたいだから、私にメロメロになった男子たちに「公爵令嬢に虐められたの」とか言えば、馬鹿な奴らなら自分達で探してくれるでしょ。
 そうと決まれば格好良い男子を探して、泣いてる所を何回か目撃させる必要があるわね。

 その考えを実行して直ぐに、リリアの容姿も相まって騙される男子生徒が続出したが、此処で【自分で真相を確かめた者】と【リリアの言葉を鵜呑みにした者】とで大きく別れることになった。
 前者の男子生徒は、リリアが大嘘つきである事に気が付き即座に離れた。リリアにとっては、どうでも良かったらしく、自分を信じている後者の男子生徒を使って、公爵令嬢の炙り出しに成功した。
 今日は初めて、リリアのために(いらない)勇気を振り絞った愚かな男子生徒たちが、(全くリリアと接点の無い)公爵令嬢を糾弾するべく、(謎の正義感を胸に)食堂で大声を張り上げる。

「ルナリア・ドラグーン公爵令嬢!幾ら公爵令嬢でもやっていいことと悪いことがある!リリアちゃんに謝ってください!貴女の婚約者がリリアちゃんを選んだのも………」
「選んだのも……何かな?」

 この女が【悪役令嬢】ってわけね。如何にも冷たそうな顔してるし、可憐で健気な私を虐める女って感じが滲み出てる。
 けど、何なの?この男は。……ゲームで見たこと無いってことは隠れ攻略対象でも無いし、ただのモブがヒロインが幸せになるのを邪魔する権利なんて無いんですけど?

「誰ですか?貴男には関係ないですよね?」
「…………え?リリアちゃん、ドラグーン公爵令嬢の婚約者と仲良くなったから……ドラグーン公爵令嬢に虐められたって………」
「そうですけど………いいの………私が悪いから………」
「リリアちゃん……彼のことは知ってるよね?」
「えっ…………知らないですけど」

 知るわけないじゃない。こんなモブキャラ。まあ……顔に傷さえ無ければ素敵だとは思うけど、その傷のせいで全部が台無し。
 ヒロインの私に相応しいのはアル様みたいな人だけなの。私の視界に映りたい気持ちは分かるけど、ヒロインの私が、モブキャラの顔と名前なんて覚える必要ないから。

「「「申し訳ありませんでした!!」」」
「それは誰に対する謝罪かな?」
「いや……あの……」

 何で謝るの?たかがモブと悪役令嬢でしょう!?…ヒロインの私が一緒にいてあげてるんだから、アンタたちが謝る必要なんて無いのに!!この世界は私のための世界なのよ!?

「ヴォルフ様、勘違いは誰にでもありますわ」
「………そうだね、ルナ。勘違いは誰にでもある……君たちも【勘違いでした】は今回だけにしてくれるかな?」
「「「はい!!寛大な御心に感謝いたします!!」」」
「えっ……ちょっと……」

(どういうこと!?何でお開きになるのよ!!)

 嘘……私を置いて全員何処かに行ったんですけど!?断罪は!?
 有り得ない……ヒロインの私より悪役令嬢を優先するなんて。
 あの三人は駄目ね。もっと私の話だけを聞いてくれる男を探さないと。………やっぱり私の騎士が必要よね。
 でも、騎士を目指してる奴らって「騎士道精神」を持ってるせいで女に手を出さないのよね……中途半端な奴じゃないと。

 それから私は何度も、何度も、あの女に突撃しては返り討ちにされて、それでもヒロインとして悪役令嬢に立ち向かい続けた。
 漸く私の話だけを聞いてくれる中途半端な騎士道を掲げる男をメロメロにできた。それ以外にも何人かを引き連れて、私は悪役令嬢に挑む。今度こそ、悪役令嬢としての役割を果たしてもらう!!
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