状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

三〇八

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状況の人、異世界へ転移する

状況の人、お目付け役が付く2

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「う~ん、俺たちは明日にでも国境付近まで足を延ばそうと思ってるんだけど……君も来るのかい?」
「そう命令されております」
「そうか。まあ、俺たちも宰相から要請されているわけだし、拒否する権限は無いわなぁ」
「お許しいただけますか!?」
「どうせ断っても付いてくる気だろ? 俺たちとしても宰相閣下やヒューイット隊長の趣意に違えるつもりも無いしな。ただし、行動指針の決定権は俺たちにある事だけは認めてもらうよ。もちろん意見はいくらでも聞くけどな」
「あ、ありがとうございます!」
 礼を言いながらロイは龍海の手を取った。
「国の未来を守ってくださる勇者様に、士官候補学生の身でありながらお力添えが出来る事、大変光栄に思っております! これから勇者様の下僕のつもりでご奉公させていただきますので何なりとお申し付けください、サイガ卿!」
 ――え?
 龍海くん、洋子さん、思わず目が点。
 そんな二人にかまわず目をキラキラさせて龍海を見つめるロイ・トライデント軍曹。
「お主、何を勘違いしておる? そいつはタツミだぞ? 勇者のヨウコ・サイガはそちらの娘ぞ」
「は?」
 カレンに人違いを指摘され、今度はロイの目が点になり、
「…………だって、女の子ですよ?」
と首を傾げる。
 女が勇者? みたいな言われ方に洋子ちゃん、ちょっくらムシッとするの図。
「カレンの言う通りだ。彼女こそが召喚された勇者、雑賀洋子だよ? 聞いてなかったのかい?」
「あ、いえ……性別の所は失念しておりました。恥ずかしながら自分、ヒューイット隊長から説明を受ける際、勇者様を支援するという極秘任務に選ばれた事にいささか舞い上がっておりまして……サイガ……いえ、シノノメ卿が勇者だとばかり……」
 まあ、確かに未来の軍将校を目指す士官学生が、仮にも国家の極秘任務に抜擢されたとあれば高揚するのもやむを得ないかと思えなくもない。
 これをもってこの士官学生が男尊女卑の思想を持っているかどうかは判断すべきではないが、それはさておき、
「で、お主はいつまでタツミの手を握っておるのか?」
とカレンが指摘するように、ロイは龍海の手をぎゅっと握り続けている。
「それよりも、指南役って以外のあなたの素性をまだ聞かされておりませんが?」
 カレンの言う事など、どこ吹く風。ロイは逆に彼女を問い詰めた。
「言う必要があるのかの?」
「当然です。お二方に近づく者は全て検閲対象であると考えます。今現在では、あなたが妖艶な体躯を利用してシノノメ卿を特殊接待ハニートラップで篭絡せんとする他国の間諜である、その可能性は否定できません」
「ほほう。我の身体も高く見積もられたモノよの。誉め言葉と理解しておいて良いのかや?」
「そうお考えになりたいなら、ご自由に」
「強がりを申すな。お主も若い。夜などしも女子おなごを求めて大変であろう?」
「何を仰ってるんです?」
「我は心が広い。ただ見るだけならとやかく言うつもりは無いぞ? 昨晩も飲み続けている間のタツミの目は半分が所、我の胸をチラ見しておったしの」
 そう言いつつカレンの右手が男衆を挑発するように己が胸をモリっと持ち上げた。
 ――う、バレてた……
 しかしロイ。
「それは自意識過剰と言うものではありませんか? 全ての男がそんな腫物の様な脂の塊に目を奪われる訳ではありませんよ?」
 おお、もっと言え、言ってやれ! 先ほど差別的に見られたにも拘らず洋子はロイの言に密かに同意していた。
「ふふ、図星を突かれる若人ほど、そのような強がりを宣うモノよの」
「そういう男がいることは否定しませんよ。でも自分は……」
 相変わらず龍海の手を離さないロイは、
「我が国のために異世界に来てまで戦っていただける、その男気こそ……」
より一層、手に力を込めた。彼の龍海を見つめる目のキラキラ度が増している。
 ――はい?
「シノノメ卿は、自分が思っていた通りの義勇溢れるお方だと、お見受けいたします!」
 そのオメメのキラ度に背中を戦慄させた龍海は思わず歪めた表情でロイを見るが、彼は少し目線を外すと、
「ぽっ……」
と頬を赤らめた。そしてまた、チラッとうるうるオメメで龍海を見つめる。
 ――ちょっと待てーい!
 男性比率が高い職場である自衛隊は男色家が多いイメージで語られることも珍しくないが、実際はそうそう居る訳では無い。
 ロイが在籍する士官学校はどうか知らないが、龍海は4年の間に所属した教育隊、配属された本隊、糧食や消防など臨時勤務時、支援・出向先の部隊など300人以上と関わってきたが男子隊員はもれなく女好きばかりであった(因みに女好きの女子隊員は一名知っている)。
 故に、こんなオメメで見つめられた事など学生時代を含めても初めてであり、頭の片隅では、
――なんでこれが女の子じゃないんだよ!
なんて思いが横切ってもいるのだが。
「のう、ヨウコ?」
 一方、洋子とカレンは妙な心持になっていた。
「我の豊満なスタイルと、将来に期待の若さ溢れるお主を目の前にして、この坊主の言いぐさは……」
「……何気にあたしの事ディスってない?(将来に期待云々)」
「女としては敗北のはずなのだが……何故かそれに対する怒りが沸かん。それどころか、瞳を輝かせながら見つめる坊主と、それに含羞はにかみ戸惑うタツミを見ておると……」
「は?」
「心が躍るというか、尊さを感じるのは何故であろうな!」
 ――お腐れさまかい!
 カレンの予想外の嗜好に洋子は思わず頭が痛かった。
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