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優姫の最期
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刀が切り結ぶ音が、段々と近づいてくる。
4000の兵力を擁した敵方は、300で守る味方を一人、また一人と討ち取り、本丸へ力攻してきた。
最後の抵抗で出撃した夫…この城の主も、討死の一報が先ほど届いたばかりだ。
「姫、これまでかと存じまする…。何とか時は稼ぎますゆえ…」
近習の言葉にうなずき、私は本丸の最奥に位置する一室へと進む。そう、14年の人生に、幕を下ろす部屋へ…
「ふつつかものですが、宜しくお願い致します」
14歳になったばかりの私が、この城に嫁いだのは半年前のことだった。夫になる人とは、初対面。
この時代ではそう珍しくないことだが、優しい表情に救われた。白の夜着に身を包み、初夜に臨んだ。
私は初潮が遅く、13歳の半ばほどだったか。
まだ未発達な体には自信がないが、跡継ぎを産むのは大事な仕事。実家で行為の手ほどきはうけたが、
とりあえず身を任せるばかりだった。
夫が男性器を挿入しやすいように、脚をしっかり広げることだけを意識し、あとはされるがまま。
貫かれる瞬間は痛みが走ったが、我慢できた。
しばらくして夫は私の中に熱いものを放出し、果てた。子種は思ったより温かい。幾晩も睦み合い、私は月のものがとまった。順調に孕んだことが、何より嬉しかった。子を産み、この城で幸せに暮らすはずだった…
銃声が、甘い日々の回想を打ち消す。
「ふぅ…」
私は急いで装束を改めていく。この部屋は、城主と妻が落城の際に最期を迎えるために作られている。
従って、自害のための品は常に揃っているのだ。
白装束に身を包んだ私は、次に自害の座をあつらえていく。畳を1枚敷き、三方に乗せた短刀をそっと置いた。簡単だが、時がないのでこれでいいだろう。最後に、両足首を紐で固く結び、座に正座した。苦しみで見苦しい姿にならないためだ。
この時代、女性の自害は通常頸動脈を切って行う。
しかし私は、討死した城主の分まで、そして腹に宿した子とともに逝くため、切腹をすることに決めていた。介錯まで自分で行うため、苦しい道になる。
ただ、それだけの無念を敵に知らしめたかった。
楽しかった日々を思い浮かべ、じわりと涙が出る。
「もっと生きたかった…」
涙をこぼしながらも、切腹を始めていく。
私はゆっくりと短刀を取り上げ、懐紙を巻いた。
次に装束の前に手を入れ、ゆっくりと押し広げて腹部を露出させた。ようやく最近膨らんできた胸もあらわになる。我が子に乳を吸わせるはずだったのに…と思い、そっと撫でまわした。
妊娠した腹部は、少し膨らみが目立つ頃だ。
「ごめんね…」ゆっくりと思いをこめ、撫でまわした。左手を腹にそえたまま、右手で短刀を握り、腹に向けた。膝立ちになり、呼吸を整える。
「いやっ!」
気合いをこめ、左脇腹に短刀を突き刺した。
激痛が走るが、一気に右へと引き回し、腹を切り裂いていく。切るにしたがい、溢れる血潮が装束と畳を赤く染めた。切り終えると、短刀を引き抜き、うつ伏せに突っ伏した。ただ辛い。夢中で右首に短刀を当て、ぐっと力を込めた。そこで優姫の意識は途切れた。
「いたぞ!姫だ!」
敵方が踏み込んだ時、優姫は堂々と切腹を終え、事切れていた。
14歳と思えない最期。敵方は厚く弔ったという。
4000の兵力を擁した敵方は、300で守る味方を一人、また一人と討ち取り、本丸へ力攻してきた。
最後の抵抗で出撃した夫…この城の主も、討死の一報が先ほど届いたばかりだ。
「姫、これまでかと存じまする…。何とか時は稼ぎますゆえ…」
近習の言葉にうなずき、私は本丸の最奥に位置する一室へと進む。そう、14年の人生に、幕を下ろす部屋へ…
「ふつつかものですが、宜しくお願い致します」
14歳になったばかりの私が、この城に嫁いだのは半年前のことだった。夫になる人とは、初対面。
この時代ではそう珍しくないことだが、優しい表情に救われた。白の夜着に身を包み、初夜に臨んだ。
私は初潮が遅く、13歳の半ばほどだったか。
まだ未発達な体には自信がないが、跡継ぎを産むのは大事な仕事。実家で行為の手ほどきはうけたが、
とりあえず身を任せるばかりだった。
夫が男性器を挿入しやすいように、脚をしっかり広げることだけを意識し、あとはされるがまま。
貫かれる瞬間は痛みが走ったが、我慢できた。
しばらくして夫は私の中に熱いものを放出し、果てた。子種は思ったより温かい。幾晩も睦み合い、私は月のものがとまった。順調に孕んだことが、何より嬉しかった。子を産み、この城で幸せに暮らすはずだった…
銃声が、甘い日々の回想を打ち消す。
「ふぅ…」
私は急いで装束を改めていく。この部屋は、城主と妻が落城の際に最期を迎えるために作られている。
従って、自害のための品は常に揃っているのだ。
白装束に身を包んだ私は、次に自害の座をあつらえていく。畳を1枚敷き、三方に乗せた短刀をそっと置いた。簡単だが、時がないのでこれでいいだろう。最後に、両足首を紐で固く結び、座に正座した。苦しみで見苦しい姿にならないためだ。
この時代、女性の自害は通常頸動脈を切って行う。
しかし私は、討死した城主の分まで、そして腹に宿した子とともに逝くため、切腹をすることに決めていた。介錯まで自分で行うため、苦しい道になる。
ただ、それだけの無念を敵に知らしめたかった。
楽しかった日々を思い浮かべ、じわりと涙が出る。
「もっと生きたかった…」
涙をこぼしながらも、切腹を始めていく。
私はゆっくりと短刀を取り上げ、懐紙を巻いた。
次に装束の前に手を入れ、ゆっくりと押し広げて腹部を露出させた。ようやく最近膨らんできた胸もあらわになる。我が子に乳を吸わせるはずだったのに…と思い、そっと撫でまわした。
妊娠した腹部は、少し膨らみが目立つ頃だ。
「ごめんね…」ゆっくりと思いをこめ、撫でまわした。左手を腹にそえたまま、右手で短刀を握り、腹に向けた。膝立ちになり、呼吸を整える。
「いやっ!」
気合いをこめ、左脇腹に短刀を突き刺した。
激痛が走るが、一気に右へと引き回し、腹を切り裂いていく。切るにしたがい、溢れる血潮が装束と畳を赤く染めた。切り終えると、短刀を引き抜き、うつ伏せに突っ伏した。ただ辛い。夢中で右首に短刀を当て、ぐっと力を込めた。そこで優姫の意識は途切れた。
「いたぞ!姫だ!」
敵方が踏み込んだ時、優姫は堂々と切腹を終え、事切れていた。
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