37 / 69
37
しおりを挟む女の子が、いました。
えくぼがかわいいね、なんて言われた女の子は
広いおでこがかわいいね、なんて言われた女の子は
それはそれは良いことなんだな、と思いました。
女の子のお部屋には四角い窓が一つ。
背伸びしたところにあるそれは
覗けば眩しいお昼の中に
肌の白い子 背の高い子 笑顔が可愛い子。
(女の子は目を細めています。)
夜になる前には 部屋の奥に隠れます。
だって夜には
肌が赤くて 背が低くて 上手に笑えなくて
おでこは広いしなんだかまんまるな子がいるんですもの。
ある日女の子はお母さんの手に連れられて
おうちの外に出ました。
「普通のことなのよ
楽しいことなのよ」
女の子はそう繰り返しました。
お外には見たことないほどの大きな箱がありました。
女の子のお部屋くらいあります。
おそるおそる女の子が触れると
箱はまっぷたつになりました。
もう一度触れると
半分、半分、半分……
歩く女の子の後ろには、置いて行かれた箱がマトリョーシカみたい。
やっと箱は手に乗るだけの大きさになって、女の子は顔を上げました。
周りにはさっきのとは比べられないくらい大きな
箱! 箱! 箱!!
覆いかぶさろうとしてきます。
女の子は逃げ帰りました。
おうち。
おうちが一番です。
でもいつもと違うのは手の中の小さな箱
じんわり光が漏れているみたい。
舌とか指先が勝手に動いて 足もパタパタとしてしまう感じ
体の中にあるものがぐっと上がって 鼻から出そうな感じ
薄く開いた口からは何も出てこないのに 喉で止まっていて耳の裏がシュンと染みる感じ
思わず眉が上がってしまう感じ
女の子は ほんのちょびっと
またおでかけしてもいいかな だなんて
思いました。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる