文章練習ノート

クロレキシー

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【描写】街と少年

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 太陽は尖塔を過ぎ去っていた。

 冷たい風が衣服と身体の間を通り熱を奪っていく。
 2月……私は2月に生まれたという。2月はなにも無い月だ、ただ過ぎてゆく月だと、私は思った。

 大通りは足音を立てている。沢山の声、山々を越えて来た商人達の声だ。まるで品物が言葉を交わし行き交い歩いているようにも見える。
 重そうな荷物を担ぐ老人が、足取りをゆらゆらとして私とぶつかった。東方から来たのだろう、平べったい薄い目をしている。老人はもはや習性となっているだろう卑屈な笑みをつくり謝った。

 中央通りでは、いつも行われる定期的な兵隊の行進が惰性でぞろぞろと進んでいた。 やる気の無い不躾ぶしつけな態度、重々しい装備。そして、馬上の将校があくびをしている。
 巨大な防壁だけがりりしく、西へ東へと街を見守っていた。
 山々に囲まれた街はいつもと変わらない。

 その横丁、表通りの横から繋がる脇道からは、共同墓地で行われるだろう葬儀の列が蛇のようにうねりを作っていた。
 私は墓地へのうねりをなぞるように通り抜けると、裏道へ入り、さらに地下へ続く階段へと降りて行った。
 階段の途中にはトンネルのような細い通路をあり通路の途中には看板の無いドアがいくつもある。
 私はドウルズという捌き屋のドアにはいる。盗品などを売りさばける、雑貨屋だ。
 しばらくして私は別口から裏通りへ出た。

 その界隈かいわいは貧民窟の中でもさらに底辺に位置していた。
 空気がゆっくり流れている為、腐った糞尿の匂いが、いつまでもこびり付いていた。
 灰色の壁と地面の境めに、腐臭のついた苔が、浸食するように張り付いている。
 地面にはいつまでも乾かない水溜り。私はそれを踏みたくなくて静かに飛び越える。私は着地する時の音すらも嫌悪した。音を立てないように通りを飛び跳ねた。
 誰にも付けられないように薄暗い路地を幾つも曲り、崩れかけそうな屋敷を幾つもくぐる……湿った空気がまといついた、やはり水の腐った匂いがどこまでも広がっている。

 壊れた窓から光が斜めに射しこみ、ちりがキラキラと舞っているのが見えた。
 太陽の光と熱が、私を温めた。
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