いじめっ子といじめられっ子が異世界召喚されたけどいじめっ子の俺だけ無能だった

黄金 

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9 魔王戦


 サヤラーテにミヤビを託し、逆にサヤラーテからキヨヒコを任せられて魔王討伐に出た。
 どんなにかき集めても1万届かない人数しか集められなかった。
 もう四度目だ。
 国が荒れて出ていく者も多い。

 部隊をいくつかに分けて、私はキヨヒコ、ノリヤ、ハジメと行動を共にすることにした。
 バラけて何処に行ったか分からなくなっては困る。危なくなったら直ぐにミヤビの元へ送り返すつもりでいた。
 ノリヤには魔塔長のトレビーが着いて来た。今までどんなに参戦して欲しいと言っても聞かなかったのに、着いてきた。
 ハジメには特級ランク冒険者ギィレンが着いてきた。乗りかかった船だとか言ってたが、単純にハジメを心配して着いて来たようだ。
 魔塔長トレビーと特級冒険者ギィレンが参戦したのは幸運だった。
 ノリヤとハジメがいなければ入らなかった戦力だ。
 後はサクヤだが、他の三人と同じ場所に置くのは不安があった。
 何故なら出立前に無力なミヤビに攻撃をしたからだ。
 他の三人に対してもいい感情を持っていないようなので、同じ部隊に入れて怪我をさせる訳にはいかなかった。
 トレビーとギィレンの目もあるし大丈夫だと思うが、念の為に遊撃部隊にザガリと共に入れた。
 ミヤビには言わなかったが、ザガリは牢でミヤビの相手として入れた騎士達に、重複で更に痛めつけるよう命令を出していた。
 サクヤの為だと言っていたが、私を軽視した行動と自分勝手な命令に腹が立った。
 だがそもそもは自分がやった行いのせいであるから、強く出ることも出来ず、魔王討伐のために戦力を減らす訳にもいかず、減給のみとなってしまった。
 
 自分の力が及ぶ限り今まで采配してきたが、毎日が不安で迷う事ばかり。
 それでもこの戦に勝てるのか………。

 どうにか不安を紛らわせたくて夜になってはミヤビに通話をした。
 ミヤビは必ず怪我はないか、大丈夫かと心配する。
 アフィーナギは凄い凄いと褒めてくる。
 私を心配する者も労う者もいない中、ミヤビの言葉が安らぎになっていた。

 サクヤの遊撃隊は優秀で次々と現れる魔物たちを屠っていった。
 聖魔法が一番効果が高いのだが、火魔法と水魔法も効果はある。
 サクヤの力技とも言える魔法攻撃に、魔物達は手も足も出なかった。

 進むにつれて怪我人が増えてきた。
 瘴気にやられて治らず戦力にならない者は、王宮の大広場へ転送し返すようにした。怪我で治らまい者を連れてソリアーディに向かっても重荷になるだけだ。
 怪我する者はサクヤがいる遊撃部隊に多かった。
 サクヤが周りを見ずにどんどん奥に行ってしまうからだ。
 ザガリをつけているのにサクヤの言いなりになってしまっている。そして周りの騎士や一般兵達もサクヤに追随してしまっていた。
 
 夜になり瘴気にやられてしまった兵達を王宮に送り返して、ようやくひと段落着いた時にミヤビへ通信する。
 それが日課になっていたが、清彦達が通信していることに気付き、自分達も話したいと集まるようになった。
 ミヤビの労いの言葉が全員に向けられて少し………、いや、かなり嫉妬してしまったが、笑顔でなんとか隠した。
 ミヤビと話をしていると、凄く癒やされるのだ。心が涼やかになるというか、安心するというか。
 三人の友人達も何処かそれを感じるのか、毎度毎度通信に入ってくるので、仕方ないと諦めた。

 ラヴディーデリア王国からソリアーディへ入るには山が連なっているが、草木は枯れて黒い霧に覆われてしまっていた。
 休息するにも火を焚き見張を必ず大勢立てて置かないと、魔物が襲ってくるようになった。
 昼、夜に関係なく怪我人を王宮へ送る日々に、ミヤビへの通信の間隔は広がっていってしまった。

 完全にソリアーディ領に入り、視界が悪くなった。遠くが黒い霧で見えなくなったのだ。
 一万に満たなかった兵が、半分以下になっていた。
 松明やランタンを持ちお互い逸れないようにしながら進むが、端の方や最後尾の兵は離れてしまうかもしれない。
 末端の兵は王宮へ帰して縮小すべきか、一番の戦力である召喚者達をギリギリまで守らせる為に留めるべきか、こんな事で迷う自分に嫌気が差した。

 こんな時ミヤビの真っ直ぐな眼差しを見たい。
 呆れたような横目でもいい。
 あの視線に触れると身体の中のモヤが消えて、清涼な気持ちになれるのだ。
 
 ミヤビ、会いたい。
 今、何してる?
 何を見てる?
 声を聞きたい。

「アフィーナギ、疲れちゃったの?休む?僕がいるから大丈夫だよ!」

 ハッとして現実に戻された。
 今進軍中なのに意識が朦朧としていた。総指揮をする立場としてあまり寝れずにいたせいだった。

「いや、魔物が引いている今のうちに進もう。」

 もう直ぐ元ソリアーディ城に着く為、咲夜には遊撃をやめさせ、同じ部隊にいる様にしてもらった。
 そして頼んでもいないのにずっと隣にいる。
 何をしてても話しかけてくる為、正直鬱陶しいのだが、邪険にも出来ず困っていた。
 
 こう側にいては雅に通信を飛ばすことも出来ない。

 一番のイライラの原因はそれなのだった。
 咲夜の魔力は強い。四属性使えるという強みも期待していた。
 しかし、景色を黒く染めるほどの瘴気の中では有効かどうか分からなくなってきた。
 攻撃は強大で火柱を上げるほどの魔法を打つが、段々と効果が薄れていってる気がした。
 咲夜の魔法より魔王の瘴気が勝っている。
 そのうち咲夜の体力低下か魔力枯渇で押し負けるのでは無いだろうか。
 
「魔王が出てきても、僕とっておきの大っきい魔法撃つよ!そうしたら一発で終わりだから、他の奴らに時間稼がせてて欲しいんだ!」

「それは構わないがかなり大きな魔法を撃つつもりか?」

 あまり周囲にいる者にも攻撃が当たる様では、時間稼ぎをした人間が巻き添えを食うのでは?
 心配をよそにザガリや騎士達が咲夜を褒めまくっている。
 魔王が現れた時の手立ては咲夜の攻撃魔法頼みのところが強いので止めろとも言えない。

 煮え切らない行き当たりばったりの進軍に小さくため息をついた。


 それからさらに進み、周りの状況がまた一段と変貌した。
 黒い霧は黒い闇となり、兵の全貌が全く見えなくなった。
 音もなく無風で、不気味な沈黙が落ちている。
 鎧が合わさる金属音も、靴音も、息遣いも何も聞こえない。
 清彦達は目の前を固まって進んでいるが、口を動かしてはいるが、話が通じず驚き慌てている様だった。
 咲夜はザガリが庇う様に歩いている為、少し離れていた。

 少しだけ………、少しだけ聞きたい。
 聞いて安心したい。
 片方のピアスにそっと触れた。
 通話を繋げて何を話そうかと思案する。進軍の事、清彦達の事、咲夜の事、魔王に勝てるかどうかという事、言い出そうとして不安と不満しかない事に気付いた。

『アフィーナギ?』
『どうしたんだ?なんかあった?』

 この無音の中、雅の声がちゃんと聞こえてくるのが不思議だった。
 雅の落ち着いた声を聞いて、ホッとする自分自身の弱さにおかしくなった。
 年下の少年に依存してしまっている。
 正直に声を聞きたくなったと返事した。
 ミヤビも心配してくれてたのだろうか。此方の返事に安心した様だった。

『なぁ…………、不安な時や自信がない時は言ったほうがいいぞ。』

 これでも上手に周りを騙している自信はある。迷いなく決断している様に、先頭に立ち不安を抱かせない様に。
 でも、雅には不安そうにしている様に感じるのか…………。

 雅の話はいつも静かで穏やかで安心する。
 私の名前の中に穏やかな文字が入ってると雅は言う。穏やかに話す雅と一緒なのかと思うと嬉しくなってきた。
 じゃあナギと呼んでと頼むと、いいぜと簡単に叶えてくれる。
 どっちが年上だろうか。
 あまり長く通信してると周りの状況確認が疎かになるので、早めに切った。


 ナギと呼んで。
 ずっと、ずっと、もし私がいなくなっても………。
 忘れないで欲しい。
 君が『ナギ』と呼んでくれるなら、この荒れ狂う様な不安が薄まるだろうから…………。



 時間感覚も狂う様な闇の中進み続けた。
 今が昼か夜かも分からない。
 何か、おかしい。
 数歩前を行く清彦達ですら見えにくくなってきていたのに、前方だけ段々と視界が開けてきた。

「あ、声出る!」

 典哉の声で無音から有音へと変化していると気付いた。

「なんか来る!」

 気配に強い清原が前方を指差す。
 そこには黒い塊があった。
 中央に一つの顔。
 黒い塊の遥か後方には朽ち果てた大きな城が見えた。

「ソリアーディ城…………。」

 冒険者のギィレンは知っている様だ。
 見た目の年齢から逆算すると魔王誕生時は子供だったのではと思ったが、ソリアーディの出身だったのだろうか。

「じゃあ、あれが魔王?」

 肇の質問に、心の中で皆んな同意した事だろう。
 闇の中に浮かぶ白い顔は、楽しそうに笑っていた。三日月の様な口の中も真っ黒で、息をする度に黒い霧を吐いていた。
 
「なんか見てて気持ち悪くなるな。」

 剣を構えて清彦がそう呟いた。
 あれはあらゆる闇が固まったもの。
 見つめれば闇を覗き、自分の心が引っ張られる。

「僕が今から魔力を練るから、時間稼いで!」

 咲夜は事前に言っていた通り、大きな攻撃を仕掛けるつもりらしい。
 清彦達は、なんでこいつの言う事聞かなきゃならないんだとばかりに嫌な顔をしたが、とりあえずやらせる事にした様だ。
 清彦は持っていた剣に聖水をかけ走り出した。
 聖水は他国の姫巫女が作り出す聖なる水で、肇達に大量に買い込んで貰ったものだ。数に限りがあるのでほぼ魔王戦で清彦に使ってもらう事にした。
 清彦の能力は剣技に全振りされているらしく、走る速さも剣筋も早すぎて見えない。
 あっという間に魔王へ肉薄し切り込んだ。
 魔王の顔の下から右側が切り裂かれるが、霧の塊の様にモヤモヤと繋がってしまう。
 聖水付きの剣で切った部分の闇だけ祓えた様だが、魔王の闇が濃ゆすぎて直ぐに復活してしまった。
 数打で聖水の効果が切れるので、聖水を掛けながら魔王に立ちはだかる。
 典哉の補助魔法で身体能力向上と防御展開、聖水の効果持続と多彩な魔法が掛けられているが、かなりの長期戦になりそうだった。
 荷物を持つ肇はギィレンが剣で守り、補助魔法を使う典哉はトレビーが水魔法で防御結界を張り守っているが、いつまで守り切れるかも分からない。

「くっっっそ!コイツの闇いつ減るんだよ!!!」

 清彦の怒声に、咲夜が叫んだ。

「出来たよ!今から撃つ!!!」
 
 咲夜の手には大きな火の渦が出来上がっていた。風を巻き込み稲妻を発生させ
、全てを吸い込む魔力の塊。
 それを魔王に向けて容赦なく撃ち出した。

「…げっ!?!?」
 
 それに気付いた清彦が、慌ててアフィーナギの側まで逃げた。

 ーーーーーグゥワヮアアァァァァァーーーー!!!!!

 火の渦は空気を巻き込み土を吸い上げ、大きさを増しながら魔王へと当たる!
 
 ーーーーボフンッッッーーーー

「えっ!?」

 巨大な火の玉は魔王の体の中へ入ってしまった。

「はぁ!?なんでぇ!!!?」
 
 咲夜が叫んだ。本人もこれで終わらせる為に最大火力で放った攻撃だった為、信じられない様子だ。

「効いてねーのかよ!!」

 清彦が再度攻撃する為に聖水を持って剣を構えた。
 一番効果があるのが清彦の剣だけになりそうで、素早く次の攻撃手段を考える。
 肇と典哉を此方で守り、ギィレンとトレビーに戦闘に入ってもらうか……。
 聖水の数には限りがある為、必ず攻撃を当てれる者に使ってもらわなければならない。
 そう指示しようとして、魔王がパカリと口を開けるのが見えた。

「何を……?………っっ!キヨヒコ!!!」

 魔王が丸く開けた口からガバァッという音と共に、先ほど咲夜が放った火の玉が飛び出してきた!
 予備動作もなく放たれた為、清彦へあっという間に劫火が目前まで迫った。
 
 アフィーナギは咄嗟に清彦の腕を取った。
 清彦は必ず雅の元へ帰すと決めていたから。
 清彦を自分の身体で庇い、衝撃をその身に受けた。
 咄嗟に清彦を向こうへと送る。
 息を吸った瞬間に熱が肺まで届き、肉の焼ける匂いがした。

「ぐああぁぁぁ!!!」

 右半身に熱と痛みが走り、立っていられなくて倒れ込む。
 
 他の皆んなも……………。
 
 そこでアフィーナギの意識は途絶えた。





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