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丸玉庭園

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8-3 死神

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【木曽川トウヤ 死神のひとやすみ】

 ええっと、そうだ——あれは……昨夜の深夜0時のことだ。
 窓の外の満月を背負いながら現れたその子は、ガイコツの仮面をかぶっていた。
 風になびくツインテールを風になびかせながら。
 真っ黒い服を着ていたから、すぐに死神だってわかったよ。
「ども、死神でっす」
 そんな軽いノリで名乗ってきた死神の手には、大きな鎌が。
 悟ったよ。
 今夜、俺は死ぬんだろうなって。
 気づいたときには、病室の冷たいベッドの上にいた。
 自分の名前もわからない。
 何もわからないまま、俺の人生は今日で終わるらしい。
 目の前のツインテールの死神が、俺を死後の世界へ連れていってくれる。
 そう覚悟を決めた矢先、死神は月を見上げながら歌うように言った。
「しばらく、ここで月を見ててもいいかな」
「……は?」
 俺はベッドに横たわりながら、ぽかんと死神を見上げた。
「だめ?」
「いや、俺を連れて行くんじゃないのか。天国だとか、地獄だとかに」
「うん。そのつもりだったんだけど、ちょっとサボりたくなっちゃった。だって、もう今日……きみの魂で四十二人目! あたしってば、働きすぎでしょッ?」
「そ……そう、かもな」
「ねッ? 最近の死神業、人材不足でさあ。新卒なんてみ~んな、すぐ辞めてっちゃう。天国の出生数管理部の事務のほうが楽でいいよねって、そっちにばっか流れてっちゃうの。もうさあ、ちょー世知辛くな~い? 現場がいいじゃん! 楽しいじゃん! だって、こんなでっかい鎌ふれるんだよ? こんなにカッコいい仕事ないのに! マジで人手不足、サイアクすぎんかー? 十二時間労働で休憩、三十分とか鬼か? いや、死神か! もお、なんとかしてくれ、神さまー!」
 ガイコツの仮面のなかでひとしきり叫んだ死神は俺のベッドにぼふん、と座り込んだ。
「ここ、静かでいいね。落ち着く」
「物音ひとつ、聞いたことがないんだ。スズメの鳴き声すら聞こえない。何もない、つまらない部屋だよ」
「へえ。そう思ってるんだ」
 死神は大きな鎌を床にごとり、と置いた。
 本当に、仕事をする気がないらしい。
「きみ、死神なのに俺のことぜんぜん、知らないんだな。死神って、魂を狩る相手のことをきちんと調べてから来るもんなんじゃないのか」
「前はそういうこともしてたかな。でも、もう最近はものすごーく忙しくってさ。死亡者カルテなんて見るヒマないのよ」
「へえ、大変なんだ」
「きみは、ヒマだったりするの?」
「とてもヒマだよ。毎日、ヒマでヒマでよけいなことばかり考えてる」
「どんなことを考えてるの?」
「あの葉っぱが落ちるときが、俺の死ぬときなのかもしれない、とか。死ぬときって、どんなことを考えるんだろう、とか。死んだあとに見る景色は何なんだろう、とか」
「わあ、本当にヒマなんだね」
「そう。することがないって、地獄なんだ」
「だったら、早いところ天国にいきたいだろうね」
 窓の外を見る。
 夜の空には、大きな満月がぽっかりと浮かんでいた。
 一人、ベッドの上でふと深夜に目が覚めるとき。
 恐ろしいほどの闇が、俺を襲ってきた。
 そんなさみしさを、この月は幾度となく救ってくれていた。
「まあ、未練はないよ。普通だったら、体験できないこともあった」
「それって、どんなこと?」
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