58 / 75
8-4 死神
しおりを挟む
「死神に会えた。死神って、もっとおどろおどろしいものだと思ってたから、驚いたな。死神がこんなにしゃべりやすいとは思わなかった」
自然と笑顔がこぼれた。
こんなふうに笑ったのも、何日ぶりだろう
いや、何か月ぶりなのかもしれない。
ここのところ、ずっと気分が沈んでいたから。
死神も来たことだ。
やっとこの苦しみから解放されるだろうな、と思ったよ。
「えっと、きみ。名前なんだっけ。……木曽川トウヤ、十一歳。……うん、なるほどね」
死神が俺のことが書かれた名簿のようなものをながめて、うんうんとうなずいている。
いきなり、どうしたんだ?
「トウヤくん。もう少しだけ、ここでサボらせて」
「えっ、死神の仕事は?」
「大丈夫。まだ定時まで、よゆうある。午前四時まではギリギリセーフ」
そう言って、死神は床に置いた鎌を拾うと、大きくふりかぶった。
そして、その刃を俺のほうへと振りおろしてくる。
ツインテールがやけにゆっくりと揺れていた。
ああ、なんだ。
やっぱり時間だったんじゃないか。
さようなら、もう思い出せない俺の家族。
さようなら、何も刻まれなかった俺の人生。
これでやっと、本当に楽になれるんだ。
*
気が付くと、真っ白い天井があった。
見慣れた天井だ。
ここは、俺がいつも寝ているベッド。
いつも過ごしている、真っ白な部屋だ。
……どうして。
俺は死神の鎌で死んだはずじゃあ、ときょろきょろあたりを見渡していると。
「おはよう、トウヤくん。もう朝だよ!」
顔を上げると、ツインテールの死神がいた。
相変わらず、ガイコツの仮面をつけているんだけど、死神のくせに陽気なしゃべり方だから、その下がどんな表情をしているのか、だんだんとわかるようになってきていた。
今はどうやら俺に、にこにこと笑いかけているようだ。
「お前、俺に何をしたんだ?」
「ちょっと、いたずらしちゃった」
「い、いたずら……?」
「きみに、冥土の土産をあげたくてね」
「何だよ、それ」
ベッドから体を起こし、ようやく気づいた。
一人用のベッドしかなかった部屋に、もうひとつ大きなベッドが置かれている。
「なんの冗談だ、これ」
自然と笑顔がこぼれた。
こんなふうに笑ったのも、何日ぶりだろう
いや、何か月ぶりなのかもしれない。
ここのところ、ずっと気分が沈んでいたから。
死神も来たことだ。
やっとこの苦しみから解放されるだろうな、と思ったよ。
「えっと、きみ。名前なんだっけ。……木曽川トウヤ、十一歳。……うん、なるほどね」
死神が俺のことが書かれた名簿のようなものをながめて、うんうんとうなずいている。
いきなり、どうしたんだ?
「トウヤくん。もう少しだけ、ここでサボらせて」
「えっ、死神の仕事は?」
「大丈夫。まだ定時まで、よゆうある。午前四時まではギリギリセーフ」
そう言って、死神は床に置いた鎌を拾うと、大きくふりかぶった。
そして、その刃を俺のほうへと振りおろしてくる。
ツインテールがやけにゆっくりと揺れていた。
ああ、なんだ。
やっぱり時間だったんじゃないか。
さようなら、もう思い出せない俺の家族。
さようなら、何も刻まれなかった俺の人生。
これでやっと、本当に楽になれるんだ。
*
気が付くと、真っ白い天井があった。
見慣れた天井だ。
ここは、俺がいつも寝ているベッド。
いつも過ごしている、真っ白な部屋だ。
……どうして。
俺は死神の鎌で死んだはずじゃあ、ときょろきょろあたりを見渡していると。
「おはよう、トウヤくん。もう朝だよ!」
顔を上げると、ツインテールの死神がいた。
相変わらず、ガイコツの仮面をつけているんだけど、死神のくせに陽気なしゃべり方だから、その下がどんな表情をしているのか、だんだんとわかるようになってきていた。
今はどうやら俺に、にこにこと笑いかけているようだ。
「お前、俺に何をしたんだ?」
「ちょっと、いたずらしちゃった」
「い、いたずら……?」
「きみに、冥土の土産をあげたくてね」
「何だよ、それ」
ベッドから体を起こし、ようやく気づいた。
一人用のベッドしかなかった部屋に、もうひとつ大きなベッドが置かれている。
「なんの冗談だ、これ」
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
インタビューwith菩薩? another
ポイント株菩薩
ホラー
惑星ブラーフの中の数ある国の一つ、サンブック国に生まれ住む男性、名をミドレン。普通の生活をしていた彼だが、出会った男が突然にインタビューしたいと言ってきた。そして、男とフェイス、トゥ、フェイスで話しをして奇妙な事を知るのであった……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)
本野汐梨 Honno Siori
ホラー
あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。
全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。
短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。
たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる