アポロ・ファーマシー

丸玉庭園

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4-4 石清水のせせらぎジェル

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 玉野にそんなことを言われたことが意外だったモコは、熱のことなんか忘れて身を乗り出した。
「何で、何で?」
「僕のお菓子を食べてくれたからです」
「ええ、いつも食べてるじゃん」
「……覚えてますか。初めてあった時に、僕が出したお菓子」
 モコは記憶をたどって思い出す。
 アポロファーマシーに初めて来たときのことを。
「あの時は、確か……見たこともないピンクや黄色や水色やらのもちもちしたお菓子を貰ったような気が」
「初めてのお客さまはたいてい、僕の見た目で警戒して、お茶もお菓子も手を付けないんですよ。ありがとうっていいながらも、なんだかんだで残して帰っていってしまう。でも、モコさんはお茶もお菓子もどんどん食べてくださいました。とっても嬉しかったんです」
「そ、そうだったんだ。でも、エイキくんも食べてたよね。甘いって言ってたけど」
「あれは、そばにモコさんがいたからですよ」
「そうなのかなあ」
「ええ。……まあ、モコさんの場合はもう少し警戒した方がいいかも知れませんね。相手が僕だからよかったものの。落ちてるものも食べそうですよね、モコさんは」
「そんなわけないでしょ! さすがにそれはないから!」
 叫び終わったとたん、ふらりと体が揺れる。そのままモコは座っていたソファの上で横になってしまった。
 頭のなかにモヤがかかったように、ボーっとしていた。熱が上がってきたようだ。
 窓の外から、激しい雨の音が続いている。
「モコさん。大丈夫ですかっ?」
 カラスのかぶりものをソファの上に置くと、玉野はあせあせとモコのかたわらにひざまずいた。
「ううーん。ごめんなさい……。迷惑かけちゃって」
「今日は雨ですから、お客さまも少ないはずです。どうぞ、ゆっくりしてください」
 玉野は、腰巻エプロンのポケットから、灰色の小さな石を手の平に取り出しモコに見せた。
「これ……何?」
「薬ですよ。僕が調合した」
「石じゃないの」
「見ていてください」
 玉野はその石に「ふう」と息を吹きかけた。
 すると、石からじょじょに透明の水がしみだしてくる。小さな石はあっという間に水に浸り、玉野の手のひらを濡らした。
「た、玉野さん。水があふれちゃうっ」
「大丈夫。ほら」
 玉野が小石を指さすと、それはいつの間にか透明のゼリー状になっている。ぷるぷるとしたそれは、もはや石の面影はまったくない。サイズもふくらんで、テニスボールくらいの大きさになっていた。
「これは【石清水のせせらぎジェル】。いくつかのマテリアルと、〝水辺に住まうスライム〟を調合したものです。効果はヒンヤリ冷たいだけ。いわゆる冷却シートのようなものですよ」
 玉野はそれをモコのひたいにポヨンとあてがった。ひんやりと冷たくて、確かに気持ちいい。
 しかし、モコにはそれよりも聞きたいことがあった。
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