アポロ・ファーマシー

丸玉庭園

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4-5 石清水のせせらぎジェル

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「あの、水辺に住まうスライムってもしかして、あのスライム?」
「どのスライムのことですか?」
「ぽよぽよして、ぷにぷにした……」
「そうですよ。僕の大好物なんです」
「はっ?」
 聞き捨てならない言葉に、モコは身を起こそうとする。
 しかし、「起きてはだめですよ」と、玉野に制されてしまった。
「ねえ、食べるってどういうこと」
「スライムのスイーツをよく作るんです。修業時代に作ったスライムのデザートを師匠がよく食べてくれて、そこからお菓子作りが趣味のように……」
「あの」
「はい?」
「私がアポロファーマシーに来たときに食べた、もちもちしたお菓子って」
 カラスのかぶりものをかぶっていない玉野は、満面の笑みで答えた。
「もちもちスライムまんじゅうですか。あれはもう何百回と作ったスライムのスイーツです。おいしかったでしょう?」
「あ……はい……」
 熱のせいなのかスライムショックのせいなのか、モコはそのまま眠りに落ちて行った。
 外ではまだまだ、雨が止む気配はなかった。
 
 
 目を覚ますと、家のベッドだった。
 モコはまくらに顔をうずめたまま、今までのことを思い出す。
 そして、アポロファーマシーのソファであのまま寝落ちしてしまったことを思い出し、急いで体を起こした。
 体はもう、ほとんど回復していた。頭もひと眠りしたからかスッキリしている。
 時計を見ると夜の七時半を指していた。
 モコは階段を駆け下り、一階のキッチンへと駆け込んだ。
 案の定、母親が夕ご飯の支度をしていた。
「熱があるんでしょ。書き置き、テーブルにあったじゃない。大人しく寝てなさい」
「えっ?」
 リビングのテーブルを見ると確かにメモ用紙が置いてある。
 それは、アポロファーマシーのキッチンで見たことがあった。いつも、マテリアルの組み合わせをメモするときに玉野が使っているものと、同じ。
【熱があるので、二階で寝ています。よろしくお願いします】
 右下がりの文字、おおげさなハネ。紛れもない、玉野の字だった。
「モコの字じゃないよね。誰かにお世話になったの?」
「あ……アポロファーマシーの玉野さん。遊びに行ってたんだ」
「そうなんだ。あそこ、お母さんも子どものころに言ったことがあるよ。最近は、行かなくなっちゃったけど」
「え? そうなの?」
「うん。今の店主さんはカラスのかぶりものしてるけど、前の店主さんは黒猫のかぶりものをしてたんだよ。変な薬局よね」
 鍋でくつくつ言っている、みそ汁の香りにお腹が鳴る。
 熱でエネルギーを使ったからか、いつもよりも音が大きかった。
 それに母親は「ふふ、待っててね」と笑いながら、夕飯の支度の続きを始めた。
(玉野さんの先代の店主の黒猫さん。どんな人だったんだろう。もしかして、玉野さんのお師匠さんって、黒猫さんだったりして……。いつか、聞いてみたいな。)
 外ではすでに小降りになった雨が、しとしとと音を奏でていた。
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