星の衝動

Tachibana

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松本が椿さんを悪く言うのが合図だ。
「松本、椿さんに電話して呼んでよ。葉山さんも会ったことないから会いたいでしょう?」
3人で飲みに来た時、堺は決まってそう言い出す。
それを先輩の俺が止めてやっていた。
困った顔の松本は今回も俺を見て
「電話したほうがいいですかね?」とつぶやく。
いつもなら「しなくていいよ。迷惑だろ。」と堺をたしなめてやるのだが、なんだか今日は俺も酔いが回っているのか、加担してみたくなった。

「堺も懲りないな。松本、1回電話して諦めさせてやれ。」
松本も、俺までそう言うなら仕方ないと思ったのか、電話をかけることにしたらしい。
堺が松本のスマートフォンの画面を見て喜んでいる。
(prrrr...prrrr...pr)
『…もしもし?』
「あ、もしもし、俺だけど。今、大丈夫?」
時刻は23時を回っていた。
こんな時間に呼んでも来てくれるはずはないだろう。

『あ、うん、どうしたの?』
「今先輩たちと飲んでて、椿に会いたいらしくて、今から来れない?」
そんなドストレートに誘うやつがあるか、と内心ヒヤヒヤしつつ聞き耳を立てる。
『え、もうお風呂入っちゃったよ。もう少し早く言ってくれれば行きたかったけど、今日は無理、ごめん』
松本は椿さんの言葉を堺に伝言する。
残念そうに首を縦に振る堺を横目に、
同期との電話を終了した。

電話からかすかに聞こえた彼女の印象は、
松本を信頼し切っているということだ。
お風呂というワードも、気の強い言い方も、
2人の仲がかなりいいという証拠だった。



先輩としては、後輩の恋の応援はしてやりたいが
堺の場合、恋というよりもファンだ。
こいつもモテないわけではないのに、
何かと残念だ。
本当に会いたいなら自分から誘いに行けばいい。

仕事柄、それができないわけではない。
俺たちは広告会社でクリエイターとして働いている。
俺たちのいる10階の部署は、
教育やバラエティ、音楽や伝統などを扱う。
椿さんがいる11階の部署は、
スポーツや食事、防災、緊急性の高いものなどを扱う。

部署は違うが、クリエイターの職種は同じ。
先輩として、後輩の作品に意見を伝えることや、
クリエイターとしてお互いの作品について語り合うことは
むしろ推進すべきことだ。
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